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天然物の開発と応用シンポジウム
薬学における生薬・漢方の未来
生薬資源、漢方医学の歴史にも
11月11日(木)、12日(金)、「薬学における生薬・漢方の未来を考える」をテーマに「第18回天然物の開発と応用シンポジウム」が北里大学薬学部コンベンションホールにて開催された。実行委員長は小林義典氏(北里大学薬学部教授)。日本薬学会(松木則夫会頭)が主催し、2日間で32名の演者が講演を行った。
当日は「薬用植物を理解し活用する」「漢方を薬学的に理解する」「漢方の臨床から学ぶ」の3つのテーマのシンポジウムが聞かれたほか、梅垣敬三氏(国立健康・栄養研)が「生薬・漢方の活用について考える」、袴塚高志氏(国立医薬品食品衛生研究所生薬部)が西洋ハーブの効果と安全性をテーマに招待講演を行った。また小曽戸洋氏(北里大学東洋医学総合研究所)が漢方と西洋医学の薬物観の特性をテーマに特別講演を行った。
ランチョンセミナーでは、漢方医学の国際標準や方剤決定の話題など、最新のトピックスが盛り込まれた。
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WHOが新たに創設する「伝統医療国際分類」(ICTM)
さる12月6日(月)、世界保健機構(WHO)が主導する伝統医療国際分類(ICTM)に関する記者会見が日本プレスセンタービル(千代田区)で行われた。西洋医学については国際疾病分類(ICD)においてすでに分類がなされているが、伝統医療についてはいまだ作成されておらず、それを背景に「ICTMプロジェクト」がスタートした。今回は同プロジェクトの共同議長をつとめる渡辺賢治氏(慶応義塾大学医学部漢方医学センター長)をはじめとするメンバーよりその詳細が説明された。
ICTMプロジェクトでは、臨床における伝統医学の用語の標準化および分類体系の作成と、さらにそれを電子情報システムに反映する取り組みを行っている。そのことで伝統医療の形態、頻度、成果などのデータ収集が可能になり、伝統医学の情報標準化にむけた初の取り組みとなる。
WHOが作成している国際疾病分類(ICD)は、10年毎の改訂により現在は第10版(ICD‐10)まで作成されている。2015年に改訂が予定されている第11版(ICD‐11)では、用語の特性を定義する意味情報(メタデータ)を付与してコード同士に繋がりをもたせる「オントロジー」の技術を用いた構造化を図る。伝統医療の診療コードについては、西洋病名と伝統医学的病名を対応させることが困難なため、ICDコードと漢方の証コードのダブルコーディングを行う。例えば「慢性アレルギー性鼻炎」では、ICD コードは「J303」だが、伝統医学では「上熱下寒(証)」のコード「6・13」となる。
今回のICD‐11については日中韓の伝統医療を中心に取り入れ、それ以外については今後検討していく予定だという。理由は、日中韓の伝統医療には共通点が多く、国際比較がしやすいため。しかし一方で、同じ薬の名前であっても適応が異なるのなど今後の検討課題も残されている。
渡辺氏は「日本においては伝統医療に関する統計作業が不十分な状況がある。今回の統合が日本における教育、臨床研究等の基礎になると考えている」と述べ、「伝統医療の用語と分類をWHO -FICに統合することで、伝統医療に関するデータ収集、モニタリング、評価のためのシステムが可能となる」としている。
(詳細は本紙490号に掲載)
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「従前との比較」争点
裁判所「極めて重大な憲法訴訟」の認識示す
「一般用医薬品のインターネット販売規制」控訴審
12月2日(火)に東京高等裁判所で聞かれた一般用医薬品のインターネット販売規制に関する控訴審(都筑弘裁判長)の第2回目の口頭弁論では裁判長が、「裁判所から訊きたいことがたくさんある」として、控訴人の訴訟の仕方に対する考え方や、規制立法を行使した考え方など、事務的事項の確認から本件の本題に関する内容に対し、双方に踏み込んだ質問を投げかけた。控訴人席には代理人弁護士(阿部泰隆、関葉子両氏)とケンコーコム社長の後藤玄利氏が着席した。都筑裁判長は審議の中で、「本件が極めて重大な憲法訴訟である」と明言し、これまでの裁判記録をもとに双方の意見を求めながら今後の議論のあり方を詰めていった。
規制を行った利益について国側(被控訴人)は、「一般用医薬品は危険性を孕んでおり、薬害、副作用に関する議論が検討会でなされた。それを防ぐための対応としてインターネット販売が規制された。インターネットによる販売については、危険なことを行って利益を得ていると判断された」と陳述した。また、「インターネット販売と対面販売の優劣を比較しているのか」との裁判長の質問に対しては、「生命・健康への被害と営業権の行使を比較した」と述べた。
一方、控訴代理人(ケンコーコム側)は、今回の規制は「消極目的規制」に当たるもので、「規制の立法には証明可能な相応の理由が必要だが、見当たらない。インターネット販売のほうが副作用の発生頻度が高いとする指摘は抽象的で、証明することができないもの」と主張した。控訴人は「仮に本件が積極目的規制に相当するとしても、規制される側に対する一定の配慮義務があるはず」と陳述。「規制における利害調整の段階で、検討会のメンバーに加えてほしいということを再三主張したが聞き入れられなかった」との経緯も付言した。
都筑裁判長は、「本件は、一般用医薬品のインターネット販売が行われていた従前の問題点と、
現時点の問題点とを比較すべき。従前のインターネット販売では、情報提供がうまくなされていなかったのか。それによって副作用がどの程度高い頻度で発生していたのか。仮に危険性があるとするなら、防止する方法としてどのような対策があるのか。インターネット販売の禁止に合理性はあるのか、ないのか。これについて控訴人、被控訴人双方が意見を述べてほしい。また裁判所の論理が破綻しているのであれば指摘してほしい」と言明した。
審議終了後の記者会見で、代理人の関葉子氏は、「1審では対面販売とネット販売の優劣を比較する議論に引きずられていたところがあったので、その軌道修正がなされたのではないかと解釈している」と述べた。
次回、第3回目の口頭弁論は2月17日(水)13時半から行われる。
(詳細は本紙490号に掲載)
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五苓散の臨床、詳らかに
国際東洋医学会 五苓散シンポジウム
水分停滞、水の偏在に伴う疾患の臨床、あまねく登場
10月31日(日)、品川イーストワンタワー(東京都港区)において聞かれた五苓散シンポジウム(国際東洋医学会日本支部/ISOM Japan主催)は、「エビデンスデータに基づいた五苓散の臨床応用を探る」をテーマに82名の参加者を集めた。開会式で中田敬吾国際東洋医学会会長は、「五苓散は使用頻度の高い方剤。新しい知見が得られることを期待する」と挨拶。プロクラムは第1部から第5部まで、特別講演、特別レクチャーなどを含めて18題と、盛りだくさんの講演会となった。
会場には医師、薬剤師ほか五苓散を製造する製剤メーカー各社が参集。演題には、慢性硬膜下血腫や脳梗塞急性期、脳腫瘍に随伴する脳浮腫、高山病や飛行機の発着に伴う頭痛、耳痛など気圧変動による症状急性症状、感染症罹患時の嘔吐や下痢など、五苓散の「証」となる水分停滞や水の偏在に伴う症状や疾患があまねく登場した。
基礎研究分野では、五苓散の薬理効果について科学的に検証した熊本大学大学院の磯濱洋一郎氏
が、アクアポリン(AQP)に対する五苓散の影響を解析した実験の結果を報告した。
国際東洋医学会日本支部が一つの方剤についてシンポジウムを企画したのは今回が初めて。第一弾を五苓散にした理由についてプログラム委員会の安井廣迪氏は、1)ポピュラーな方剤であること、2)たくさんの症例があること、3)安価であること、4)どの漢方の製薬メーカーも製造し、薬局で売られている一般用医薬品も存在すること、5)誰でも一度は治療に用いた経験があると思われること、などを挙げた。「五苓散は中国で創生されたが、近年の日本では多彩な臨床応用が開発され、日常診療において欠かせない漢方方剤」との観点から、五苓散の包括的な理解を深めることを目的としたという。
今回発表された内容は、「五苓散シンポジウム記録集」(A4版80ペ
ージ)として発刊され、国際東洋医学会の会員に配布されるほか、会員はウェブ版の閲覧が可能になる。
(詳細は本紙489号に掲載)
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頭痛の漢方治療戦略とは
第19回日本脳神経外科漢方医学会学術集会
11月13日(土)に東京・新宿の住友スカイルーム(新宿住友ビル47階)で開催された第19回日本脳神経外科漢方医学会学術集会(飯塚秀明会長/金沢医大)は、約200名の会場に立ち見が出るほどの満場となった。特別講演では寺澤捷年氏(千葉中央メディカルセンター)が、「頭痛の漢方治療戦略〜パラダイムシフトの勧め」と題して講演したほか、28題の一般演題では、「三叉神経痛による不定愁訴に対する真武湯」「疏肝理気活血利水法が著効した繊維筋痛症」「脳浮腫に対する五苓散」「桂枝茯苓丸が有効だった帽状腱膜下血腫」「発作時にトリブタンと呉茱萸湯の併用」「緊張性頭痛に対する芍薬甘草湯」など、使用経験、治療効果、有用性を検討した症例が報告された。
寺澤氏は特別講演の中で「西洋医学のパラダイムだけでは膠着状態に陥ってしまう事例も少なくない」とし
て、漢方の治療戦略を概説。漢方は「経験値を重視しており、それは2千年前からあまり変わっていない」としながら、処方薬を歴史的に見ると、一種類の生薬を用いていた時代から、組み合わせるようになった変遷があることを述べた。
(詳細は本紙489号に掲載)
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"漢方関連学術講演会"各所で
生薬・漢方の基礎・臨床研究をテーマに
応用の幅を広げる試み
今秋も、漢方関連の講演会、シンポジウムが各所で執り行われ、臨床応用の幅を広げようとする試みが多数みられた。
10月31日(土)には、国際東洋医学会(中田敬吾会長)が主催する「五苓散シンポジウム」が東京・品川で聞かれ、約100名が参集。また11月11日(木)、12日(金)の2日間にわたり日本薬学会(松木則夫会頭)が主催した「第18回天然物の開発と応用シンポジウム」(北里大学)は、天然物化学の基礎研究を中心に、32名の演者が講演を行った。
年次大会では、日本漢方交流会(吉本悟理事長)が主催する第43回日本漢方交流会全国学術総会が、東京有明医療大学で同月20日(土)、21日(日)の2日間にわたって開かれ、また同日の21日には日本漢方協会(飯島弘会長)が主催する「漢方学術大会」が慶応義塾大学薬学部で開かれ、それぞれ活況を呈した。日本東洋医学会の全国8支部および都道府県部会の講演会も各所で開催された。(弊紙各号で詳報します)
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「生薬調製棟」竣工
北海道進出着々 夕張ツムラ
●保管能力1千トンの生薬倉庫、乾燥機を配備
さる11月1日(月)、㈱夕張ツムラ(西村昌弘社長)の生薬調製棟が竣工し、同日竣工式が執り行われた。同社は昨年7月に設立し、現在従業員数9人。今年4月に着工した生薬調製棟は、敷地面積・約3万平米、建築面積・約7千9百平米の建物内に生薬の乾燥機(回転式ドラム乾燥機2基、箱型乾燥機11基)と、1千tの
保管能力を備えた生薬倉庫(室温15度以下、湿度60%以下)を配備した。
式典には、芳井順一ツムラ社長、西村社長はじめ、北海道知事代理として竹内良雄北海道公営企業管理者、藤倉肇夕張市長、建設を請け負った大成建設の担当者らが出席。芳井社長は「6年半前に開始した設備投資計画の第1期が実現した。最終的に生薬3千tを保有できる生薬倉庫を確保して、夕張市の雇用も創出する」と述べると、竹内氏は「ツムラの自社農場はうれしい限り。拠点としての位置づけに感動する」と挨拶。藤倉夕張市長も「感激、感動、喜びを感じている。夕張市民に安堵感、安心感と、将来への夢と希望を与えた」と、歓迎の意を表した。
●自社農場で生薬の試験栽培を開始
また、夕張ツムラでは、昨年10月より、夕張市内の自社農場における生薬の試験栽培を開始した。現在は約7ヘクタールの自社農場を保有しており、今年の秋にはこのうちの1ヘクタール強の農場から川芎/3.5〜4t(乾燥重量)を収穫したほか、川芎(秋植え)、蘇葉、インチンコウの栽培に着手した。
今後は防風、薄荷、甘草、芍薬など、徐々に栽培品目を増やしていく予定になっている。
栽培地については、夕張(自社栽培)ほか、網走、空知、石狩、十勝エリアに進出を予定し、作付け面積は契約農場を含め、10年以内に現時点の140ヘクタールから1千ヘクタールにし、生産量2千tを目指す。また同棟は苫小牧港への地の利がよく、運送には茨城工場に近い大洗港までの海路を利用する。
(詳細は本紙488号に掲載)
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健康を守る"運動・漢方・笑い"をタイトルに
日本漢方生薬製剤協会/第13回市民公開漢方セミナー
日本漢方生薬製剤協会主催の第13回市民公開漢方セミナーが、10月14日(木)、都内中央区の浜離宮朝日ホールで開催された。漢方の基礎知識がわかりやすく学べると好評の同セミナーのスタートは平成10年。13回目を迎えた今回は、元日本東洋医学会会長の松田邦夫氏(松田医院)が、健康を守る運動・漢方・笑いをタイトルに講演した。
80歳になるという松田氏は、冒頭、医療における現在の漢方の概要と漢力の基礎などを概説した後、健康を守る三要素としての運動、漢方、笑いについて大御所ならではの淡々とした語り口で解説した。
まず、運動については、重量挙げなどの無酸素運動よりも有酸素運動、ウオーキンク、ジョギング、水泳、水中歩行などは、インスリン抵抗性を改善する効果があり、「体力に応じて楽しみながら継続することが大切」と強調。また笑いの効果として、NK細胞の活性化を上昇させ、免疫力を高める働きがあるとし、漢方薬では補中益気湯にその効果があると紹介。「好きなことをして愉快に過ごしていれば、笑う門に福来る」と結んだ。中高年の姿が目立った会場からは、「分かりやすく、説得力のある講演だった」と好評だった。
(詳細は本紙488号に掲載)
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第67回関東甲信越支部学術総会
感染症に炙甘草を用いるコツ
「細菌とともに生きる」を示唆
10月17日(日)、大宮ソニックシティ小ホール国際会議場(さいたま市)において開かれた日本東洋医学会第67回関東甲信越支部学術総会は、285名が参集し、盛会のうちに終了した。一般演題28題、特別講演1題、教育講演2題、市民公開講座が行われた。市民公開講座の会場には、「話が一方通行にならぬよう」との配慮から漢力・鍼灸の相談コーナーが設置され、和太鼓、尺八、津軽三味線の競演が行われるなど、賑やかな会となった。
特別講演を行った大友一夫氏は、炙甘草湯について「元来感染症に用いられていた。なぜ抗菌作用がないのに炙甘草湯で細菌感染症が終息するのか。科学的には明らかになっていない。腸管から吸収され、血液成分となってから抗菌力を発揮するのかもしれないし、炙甘草湯自体がリンパ球や白血球を一気に増殖させているかもしれない。いずれにしても炙甘草湯は、抗菌力のある抗生物質と異なり、腸内細菌を痛めつけない優しい方剤。その効き方には、『人と細菌との間で手を打っている』というような印象がある」と述べた。すべてを凡く収めるための「手打ち」をするのが炙甘草湯だという。
また、抗生物質の使い過ぎによる耐性菌の出現について大友氏は、「何か人間に対する警鐘のように思えてならない。われわれは細菌にかかわりすぎている可能性がある。動物の成長を促進するために抗生物質を使ったり、むやみに抗菌剤を使用したり、人間がいじめるから攻撃性を強めているのではないか。細菌微生物はあるべきところに置いておくのがいい」と語った。
教育講演では、福土審氏(東北大学大学院)が「脳腸相関と漢方」について、金子達氏(金子耳鼻咽喉科クリニック)が「めまいの根治療法」について、それぞれ演者をつとめた。
福土氏は、世界ではじめて小腸・大腸機能と脳機能を同時測定し、過敏性腸症候群の病態を"脳腸相関"として概念化した人。講演では、機能性ディスペプシア(辛いと感じる食後のもたれ感など、内視鏡で器質的な疾患が認められない症状)に対する六君子湯と、過敏性腸症候群に対する大建中湯の有用性を解説。さらに、「治療の根拠の更なる蓄積が望まれる」と、脳腸相関に依拠した薬効エビデンスの構築の必要性を示唆した。
とくに過敏性腸症候群について、「心身症の代表的病態。不登校や社会不適応の最初の要因」として、治療研究の重要性を指摘している。
今年8月に「低音障害型感音難聴に対する柴苓湯とイソソルビドの有効性の比較」と題した論文を『漢方と最新治療』(世界時報社)に投稿するなど精力的に活動している金子氏は、今回の講演で、「基本的な診断と使用方法を覚えれば、割と楽に漢方治療ができる」として、方剤選択のポイントを列挙し解説。さらに、「めまいを伴う疾患としてよく知られているメニエール病の原因として内耳浮腫が言われ始めてからそれほど経っておらず、西洋薬には有効な根治的治療薬があまり存在しない」として、水の偏在を考えて治療する漢方治療の役割や、西洋薬との併用療法などを提示した。
そのほか、『あなたの健康管理をからだに優しい"東洋医学"で』と題した市民公開講座は、磯部秀之氏と山口智氏(いずれも埼玉医大東洋医学センター)が講師をつとめた。また一般講演では、埼玉医大、千葉大、東京女子医大、東邦大、日大、東海大、有明医療大、北里大などの漢方外来ほか、この地区の漢方医らが臨床報告を行った。
(詳細は本紙487号に掲載)
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「甘草」水耕栽培に成功
鹿島、医薬基盤研、千葉大が共同で
10月28日(日)、鹿島建設(株)(中村満義社長)と、(独)医薬基盤研究所(山西弘一理事長)、千葉大学(齋藤康学長)は共同で、甘草(カンゾウ)の水耕栽培に日本で初めて成功したことを発表した。
今回の発表では「残留農薬の危険のない均質な甘草を、植物工場で短期間かつ安定的に生産できる栽培システムを開発した。このシステムにより、均質な甘草を短期間に国内生産することができる」としている。
苗については、医薬基盤研究所が保有する甘草苗の中から、人工栽培環境下で有効成分の蓄積量が高いウラルカンゾウの優良系統(約1年の人工栽培環境下での栽培でクリチルリチン酸含有量が日本薬局方の規格値2.5%を超える3%を示す系統)を選抜し、一本の苗から約4ヵ月で数十本のクローン苗を作る増殖法を用いる。また、通常の水耕栽培では細根が大量に発生して根が肥大しないことから、複数の環境条件を管理し、適度なストレスを人工的に与えることで根を肥大させる。採光は太陽光・人工光併用型となっている。
この甘草が漢方処方の構成生薬として使用できるかについては、現段階では未知数だ。日本薬局方の甘草の規格は、クリチルリチン酸の含有量だけでなく、外観や内部の形状やにおいなどの性状や灰分についての規定もあり、それらの基準をクリアする必要がある。また生産性やコスト、そして何より「効き目」や安全性の課題もある。 (詳細は本紙487号に掲載)
この研究開発の詳しい内容については、医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター筑波研究部の吉松佳代氏が「第18回天然薬物の開発と応用プログラム」(北里大学、11月11日(木))において発表する予定。また、鹿島建設は、11月24日(水)〜11月26日(金)に幕張メッセ(千葉市)で開催される「アクロ・イノベーション2010」において、水耕栽培により育てた甘草の実物を展示し、今回発表した技術を紹介する。
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インフルエンザ治療に「麻黄湯」
タミフル、リレンザと異なる作用機序
第110回漢方医学フォーラム
去る10月28日(木)第110回漢方医学フォーラムが日比谷プレスセンターで開催された。今回は「インフルエンザに対する漢方薬の有効性 〜賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ〜 」をテーマに千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学教授の巽浩一郎氏が講演を行った。
インフルエンザウイルス(H3N2、H1N1)は鼻の粘膜や気管支の細胞表面の「シアル酸」(受容体)に、ウイルスの表面の「HA(ヘマクルチニン)」が結合することで感染する。細脳内に侵入したウイルスは核内で遺伝子の複製、転写を行って出芽し、「シアル酸」と「HA」が切り離されて、体内にウイルスが放出され、それが遊離して他の細胞へと感染・伝播し増殖する。
巽氏は、「抗インフルエンザウイルス薬はウイルスに直接作用するのに対し、麻黄湯は宿主気道上皮細胞の炎症を抑え、気道上皮細胞の防御機構を調整する」と解説。「タミフルと麻黄湯の治療成績を比較したところ、発症からウイルス消失までの時間が同等で、A型B型とも麻黄湯の有効性が明らかとなった。麻黄湯は実証の薬。体力のある小児・成人など実証体質には麻黄湯や葛根湯が有効。高齢者には予防薬として補中益気温を服用するといい。補中益気湯はウイルス力値を低下させる」という。
また「タミフルなどに見られる薬剤耐性の耐性化のスピードは新薬の開発より速い。薬剤の使用法は常に考えなければならない。麻黄湯にはタミフルやリレンザと同様の効果があるが、作用機序が異なる。他の抗ウイルス薬との併用など、効果的な治療対策を取ることが賢明」と述べた。(詳細は本紙487号に掲載)
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「近代漢方の原点に還る」
第20回漢方治療研究会開催
漢方復興と慶大漢方「独立自尊」を振り返る
故矢数道明氏が昭和13年に設立した東亜医学協会(矢数圭堂会長・寺澤捷年理事長)主催の第20回漢方治療研究会が、9月26日(日)、慶応義塾大学医学部大会議室を会場に行われ、230人が出席した。大会長は慶応義塾大学医学部附属病院の漢方外来の立ち上げに尽力した村田高明氏、実行委員長は渡辺賢治氏、テーマは『近代漢方の原点に還る』。
村田高明氏は大会長講演の中で、日本東洋医学会の創設時に活躍した龍野一雄氏、医史学史料の収集を行った藤浪剛一氏、第6代日本東洋医学会会長を務めた相見三郎氏、元日本医師会会長の武見太郎氏、漢方の薬理研究の基礎を築いた細谷英吉氏、血液学教室の長谷川弥人氏など、「独立自尊」の塾風を受け継いで今日の漢方復興の基礎を築いた慶応義塾大学の漢方人脈を振り返った。
シンポジウムでは『近代漢方の現在、過去、未来』をテーマに寺澤捷年氏が座長を、秋葉哲生氏(あきば伝統医学クリニック)、花輪壽彦氏(北里大学東洋医学総合研究所)、渡辺賢治氏が演者をつとめた。
秋葉氏は近代までの漢方の歩みや、漢方製剤の健康保険適用の歴史について解説。健康保険は漢方的な表記ではなく西洋医学的な分類で効能効果が表記されるという"漢方のジレンマ"が存在するが、「その表記についても徐々に見直しが行われている」と述べた。
花輪氏は、明治政府の医師免許制度の統一化により衰退した漢方医学が、志の高い医師、薬剤師、鍼灸師などの努力により復権したことや、これからの課題として生薬・漢方製剤の品質評価と安全性を含めた安定供給、用語などの統一化、産学共同研究体制の強化と整備などをあげた。
渡辺氏は「西洋医学と漢方医学がスパイラルを描いて発展するモデル」の再考、国際的プレゼンス、生薬のほとんどを中国に依存している現在の体制からの脱却を訴えた。
1年間の『漢方の臨床』に掲載された論稿の中から選ばれる第14回東亜医学会協会賞には寺師睦宗氏(玄和堂診療所)、井上淳子氏(井上内科クリニック)、東亜医学会奨励賞には高木嘉子氏(ヨシコクリニック)が選ばれた。 (詳細は本紙486号に掲載)
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「必修研修会」増え、活発に
漢方・生薬認定薬剤師制度
日本薬剤師研修センターと日本生薬学会が共催している「漢方・生薬認定薬剤師制度」が認定する薬剤師は、昨年10月現在で1800名を超え、今年度で2000名に達することが見込まれているが、昨年度から今年度にかけて、更新のための必修研修会が増え、該当する研修会では、更新を目指す薬剤師の参加者が増えている。
これは、日本生薬学会が新たに共催団体として加わった研修会が増えたことと、関連研究会主催年次大会の学術集会の多くが必修研修会となったことによる。
漢力・生薬認定薬剤師の更新は3年毎に行わなければならない。単位の内訳は「必修研修」15単位以上と「その他の研修」15単位以上。もしくは「漢方薬・生薬研修会」再受講20単位と「必修研修」「集合研修」併せて10単位以上。
各都道府県薬剤師会においても、「実践に役立つ研修会」を目指し、漢方・生薬に関する研修会が執り行われるようになっている。こうした取り組みの中で、漢方・生薬に関心を持つ薬剤師が全国的に増えて行くことを望みたい。 (詳細は本紙486号に掲載)
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第43回日本薬剤師会学術大会開催
特別講演で寺澤捷年・日本東洋医学会会長
10月10日(日)、11日(祝)の2日間にわたり聞かれた第43回日本薬剤師会学術大会(大塚宰運営委員長)は、「求められ、応えられる薬剤師へ」をテーマにホクト文化ホールなど数カ所において開催された。同会の児玉孝会長は、「平成24年には6年制の卒業生がいよいよ社会に出てくる。本年度は、現在5年生に在籍する彼らが初めて「長期実務実習」に取り組む実習元年。チーム医療、在宅医療、改正薬事法など、社会からの要請にしっかり答えることのできる薬剤師にならなければ将来はない」と明言。今大会では、「薬学生から視る医療の世界」と題した薬学生による公開シンポジウムも行われた。
今大会では、松木則夫日本薬学会会頭と寺澤捷年日本東洋医学会会長が特別講演の演者となり、ほかに地元の医師の池田宇一氏(信州大医学部付属病院循環器内科教授)、鎌田実氏(諏訪中央病院名誉院長)、大学病院薬剤部長の川上純一氏(浜松医大)などが講演を行った。
「今、漢方を考えるーーー複雑系と要素還元論の狭間で」と題して講演した寺澤氏は、「現在急速な進歩を遂げつつある西洋医学がますます専門分化に進んでいる現状に対し、"統合医療プロジェクトチーム"の活動は、"全人的、統合的な視点が必要である"との視点に基づいた行動」と紹介し、「このことは、国際的に見てもわが国の誇るべき優位性。医療人はこの点を認識すべき」と主張するとともに、その客観的な評価法を持たなかったことについて「漢方の側の反省すべき点」とした。
また、「健康食品、民間薬の有効利用と安全確保」と題した分科会で、水嶋丈雄氏(水嶋クリニック)が「東洋医学の食と知恵・信州の民間療法」と題して、ヤマブシタケやマタタビの有用性や基礎・臨床研究などを紹介したほか、一般口演やポスター発表などのセッションが組まれた。
(詳細は本紙486号に掲載)
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日本生薬学会 第57回年会
国際色豊かに開催
第5回日中韓生薬学合同シンポジウム併催
9月24日(金)から3日間にわたり、徳島文理大学(徳島市)において開催された日本生薬学会第57回年会は、722名を集め、盛会のうちに閉幕した。今回は日中韓3ヵ国合同の国際シンポジウムが併催され、大会長をつとめた同大学の浅川義範氏は「初めての試み」と前向きな姿勢で取り組んだ。
参加者は3カ国以外にアメリカやマレーシア、インドネシア、タイなどの研究者が集い、国際色豊かな大会となった。徳島県などが共催した薬草展や市民のための催しも行われ、薬草や薬膳料理が振る舞われた。
第5回日中韓生薬学合同シンポジウム
初日に開催された第5回日中韓生薬学合同シンポジウムの基調講演では、浅川大会長が座長をつとめ、米オハイオ州立大学のダグラス・キングホーン氏が、「高等植物からの新規抗がん剤の継続的探索」と題して講演。Amomum aculeatumやGarcinia Laterifloraといった主に東南アジアの天然植物から単離同定した抗がん物質を紹介した。
また、日中韓3カ国の代表のプレナリーレクチャー(特別講演)では、中国薬学会中薬及び天然薬物委員会の楊峻山委員長が、トウダイクサ科クロトンのゲノム研究について、韓国生薬学会のHyeong-Kyu Lee会長が、薬用植物由来免疫調整剤の探索について、浅川大会長が、コケ植物の植物薬品化学における最近の進展について化学的多様性と生物活性の視点から、それぞれ講演した。
このほか招待講演は、日中韓から7名の演者が、各人の持ち時間20分で講演。ポスター発表は、全部で79題。数カ国の共同演者や研究機関が参加している発表が多数あり、学術研究の中で国際交流が行われていた。
日本生薬学会第57回年会
日本生薬学会第57回年会では、今年会長をつとめる古川雅之氏(京都薬科大)が、サポニンの構造研究の過程で、オリゴ糖鎖を構成するDグルクロン酸の配糖体結合の選択的開裂法を4種見出し、ジベカシン、リポスタマイシンなどのアミノ配糖体抗生物質を合成したことなど、これまでの研究を紹介した。
このほか、特別講演、シンポジウム、学会賞受賞講演、学術貢献賞受賞講演が行われた。
同年会の一般講演は、口頭発表、ポスター発表とも多くの研究者が集うことで知られている。今回も2日間で口頭発表64題、ポスター発表163題が発表された。
今回の口頭発表のうち、日丸冨紗子氏(京都薬科大)は、ボタンとシャクヤクの花部の生物活性成分の研究成果を紹介。また、蒲生啓司氏(高知大)は、高知県産ホソバオケラの根茎の精油成分の定量を行い、その構成比が流通品の蒼朮と異なることと、品種は蒼朮であることを報告した。
ポスター発表では、徳島大学の佐々木久子氏らが「味噌直し」の成分研究を発表。新規プレニルフラボノール3種とインドールアルカロイド1種を同定した結果、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対する強い抗菌活性を確認したという。 (詳細は本紙485号に掲載)
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密な討論が話題
2010年度臨床漢方薬理研究会(105回例会)
臨床漢方薬理研究会(日置智津子代表・東海大学医学部講師)の105回例会が、9月18日(土)と19日(日)、京都薬科大学で聞かれた。2日間にわたる講演会と宿泊による密な討論が話題となり、若手研究者も注目する研究会だ。
当日は臨床家、薬学研究家、薬剤師など100人が参加。代表の日置氏は「最近の疾病の質や医療経済、人間を生かしている自然環境を鑑みると、漢方医薬の特質を考慮した新しい研究システムや、東洋的人間論、東洋医学的生理学を、健康管理や疾病予防に活用できるよう科学的実証を求め、時代にあった健康法の構築と漢方薬・生薬のより有効な使用法の推進が重要。そのために今一度、人間とはいかなるものかを観察してみたい」と挨拶。
教育講演では、武庫川女子大の河合優年氏が「発育過程からみる人間像と観察手法」、特別講演では音羽記念病院の川上明氏が「緩和医療にみる——人間の本当の痛み」と題してそれぞれ講演するなど、人間そのものをとらえる内容が盛り込まれた。
臨床と漢方薬、生薬の薬理については、日置氏が漢方薬による体温動態・質的評価の研究について、吉川雅之氏(京都薬科大)が漢方薬・生薬の有効性について、松田久司氏(京都薬科大)が生薬研究の最新情報について、中田徹男氏(京都薬科大)が西洋医学的治療の臨床現場について発表した。
また、中国の中医雑誌社社長の劉国正氏が中国国内の医療事情を、国立中国医薬品標本室館長の李宜融氏が台湾の生薬事情や医療事情を、東海大の新井信氏が日本と中国の鍼灸治療の違いをそれぞれ紹介するなど、アジアの伝統医学を展望した。 (詳細は本紙485号に掲載)
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第27回和漢医薬学会大会
「エコと生薬資源」に焦点
「エコ(エコロジー)とエコ(エコノミー)」双方に
8月28日(土)から2日間にわたり、京都薬科大学において開催された第27回和漢医薬学会大会は、1000名近い参加者を集め、盛会に終わった。今回は、生物多様性条約締約国会議(COP10)を目前に控え、「エコと生薬資源」と題したシンポジウムが企画されるなど、時事的な企画が盛り込まれた。臨床では「生活習慣病」にテーマが絞られた。
シンポジウム「エコと生薬資源」では、座長の松田秀秋氏(近畿大)が、「生薬資源をエコロジー(自然環境保護)とエコノミー(経済性)の双方から論じる」としてスタート。正山征洋氏(長崎国際大)が「中国の生薬価格は高騰しており、今なら国産生薬も、経済的にも見合ってくるのでは」と、栽培研究を生かすべき時代の到来を示唆し、日本の培地に適合する甘草の育種選抜を目的とした調査の結果を紹介した。
御影雅幸氏(金沢大)は、中国の生薬資源の自生地と栽培地の調査結果を報告。今年6月末に実施した内モンゴルの調査では麻黄のシニカ種の群落に遭遇した。過放牧の影響から、大きな群落は、現在では珍しいものになっているという。
農地開墾や乱獲も、群落消失の原因になっており、とくに麻黄の中でも、細い根茎を張らないインテルメディア種は、大きな株を引き抜くとその後は再生しないため、過剰採集に対する注意が必要だとした。葉を深く食べる性質のあるカシミアヤギの放牧が増えていることも、資源の減少につながっていると報告した。
一方、地下深く根を伸ばす甘草は、たとえ開墾しても、畑を休ませると復活するため、あちらこちらでみられたという。
山本豊氏(栃本天海堂)は、自社におけるここ数年の甘草の輸入状況を紹介。'00年に4千t強あった総輸入量が'09年には1千5百t弱まで減少したが、価格が倍近くに高騰しており、総重量が減っても、輸入総額が目減りしない現状があることを報告した。
同社は、'98年〜'04年に内蒙古東部(東北地域)において、畑栽培の試験を実施。さらに現在、陜西省子州県の山中において野生に近い状態での栽培試験を継続している。このうち、'05年に収穫した5年生根がグリチルリチン含量が高いが含量には個体差があり、さらに試験を継続。「甘草の実用栽培は、薬用資源の安定確保だけでなく、わずかでも地球環境保全に寄与すると考えている」と結んだ。
近畿大学の村岡修氏は、同大学と中国新疆中薬民族薬研究所、ウイグル自治区ホータン地区政府などとの協力で進めてきた植物資源保護と砂漠緑化の両立を目指した取り組みなどを紹介。タクラマカン砂漠の長寿郷として知られるホータン地区で食される植物「カンカニクジュヨウ」(カンカ)が寄生するタマリクスが防砂に適していることから、取り組みが始まった。カンカからは、血管収縮抑制活性や、肝保護作用などが見いだされている。
また村岡氏は、インド医学のアーユルヴェーダで糖尿病の初期治療に用いられる「サラシア」の活性成分を定量分析する共同研究を、タイ・ラジャマンガラ工科大学と行っていることも紹介した。(詳細は本紙484号に掲載)
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「俳句部門」新たに加えて
第4回いのち輝かそう大賞朗読授賞式
「いのち輝かそう大賞朗読授賞式」が、9月12日(日)、東京・銀座の時事通信ホールで開催された。感動と涙を誘う授賞式として知られるこの式典は、(株)Jハーブ(亀井真樹社長)主催により平成18年にスタート。「がんや難病に罹った人やその家族、友人が発する真実の言葉、記録を残すことは、新たにがん・難病を告げられた人々に希望や救いをもたらすはずだから」との想いから創始されている。
今年からはエッセイ部門に加え、新たに俳句部門が加わり、両部門に合わせて251作品の応募があった。
俳句部門は応募112作品から9作品がノミネートされ、優秀賞には三重県の上田公美彦さんの「病葉も支えあってかちりもせず」、最優秀賞には長野県の岡庭穂波さんの「再生の乳房春の湯はじけゆく」が選ばれた。
エッセイ5部門授賞作品の発表は、朗読スタイルがとられている。この日は、スポーツジャーナリストの増田明美氏、元NHKアナウンサーの宮本隆治氏など5氏が、それぞれの持ち味を発揮して朗読、会場は感涙に咽ぶほどの感動に包まれた。
「いのち輝かそう大賞」には、がんを卒業した部門に応募した千葉県の上田真弓氏の「世界でいちばん思い出深い山道」が選ばれた。
式典の冒頭には、鈴木寛文部科学副大臣が挨拶。「医療を建て直すためには一文字一文字の言葉の力が欠かせない」と力説した。
このほか式典では、若手ピアニストの稲本響氏が自作曲「枯れたレクイエム」の演奏ほか即興演奏もあり、会場を盛り上げた。5回目となる来年は、「短歌部門」と「音楽部門」が新たに創設される予定だ。(詳細は本紙484号に掲載)
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