編集/発行・漢方医薬新聞社 

501号(11年9月10日発行)〜508号(11年12月15日発行)

       

漢方薬日中シンポジウム
「漢方薬・温故創新」
これからの漢方薬のあり方を考える

 日本における生薬発祥の地といわれる奈良県と、中国で第二位の生薬産地として知られる甘粛省の主催による漢方薬日中シンポジウムが、11月9日(水)(いい薬の日)、奈良市の奈良県文化会館国際ホールで開かれ、これからの漢方薬のあり方が多岐にわたって議論された。
 講演に先立ち、荒井正吾奈良県知事、盛延文甘粛省武威市人民委員長の日中双方の代表が挨拶した。
 「奈良のくすり風土記」の演題で特別講演を行った米田該典氏(日本東洋医学会元副会長)は、薬の里としての奈良県の歴史等を紹介しつつ、「薬はその土地の風土、歴史、人の歩みから生まれる。奈良のくすり風土記を見直してみませんか」と語りかけ、「奈良県には"大和の六薬"と言って、当帰や蜀薬など、国内だけでなく中国にまでその名を知られたブランド生薬があり、現在も多くの医療関係者には高く評価され、生産されている」と、現代の人々の健康に寄与している奈良の伝統に対する畏敬の念を表した。
 その後、甘粛省中医薬研究院主任薬師の姜華氏が「甘粛本場の生薬資源の利用の現状と問題」、甘粛省定西市中医薬産業発展瓣公室主任の馬志忠氏が「甘粛省定西市産業発展の現状と問題」をテーマにそれぞれ講演した。
 パネルディスカッションでは、慶應義塾大学准教授の渡辺賢治氏がコーディネーター、東京女子医科大学教授の佐藤弘氏、米田氏、日本生薬連合会技術参与の嶋田康男氏がパネラーとなり、これからの漢方薬のあり方について、さまざまな角度から討論された。
 佐藤氏は臨床の立場から、「医療の現場では8割の医師が漢方薬を使用し、漢方が見直されている」と報告。嶋田氏は製薬メーカーの立場から、配置薬や一般薬が衰退している現状などを語り、最後に①長い歴史に支えられた奈良の持つ魅力を引出し、生薬の伝統に誇りを持って欲しい②後継者の育成に注力して欲しい③中小の農家の持つ生薬栽培のノウハウを継承するため、新たな生産企業組織の設立を、とする三項目を奈良県へ提言し、幕を閉じた。
(詳細は本紙508号に掲載)


安全に役立てて、はつらつと暮すために
日本漢方生薬製剤協会主催
第14回市民公開漢方セミナー

 3月11日の東日本大震災の影響で、4月開催予定だった日本漢方生薬製剤協会(芳井順一会長)主催の第14回市民公開漢方セミナーが、11月28日(月)、東京・築地の浜離宮朝日ホールで開催された。
 開会挨拶に立った芳井会長(ツムラ社長)は、日本漢方生薬製剤協会の概要、漢方薬の歴史、日本漢方の特徴、大学医学部・医科大学における漢方教育の現状、医師の漢方薬の使用状況などを紹介した後、「漢方医療は日本の医療の1つとして復活しており、国が認めるのも目前に来ている。西洋医学と漢方医学、両者のいいところをとって患者さんの治療方針を決められる。こんなすばらしい医療はない」と日本の医療の長所を力説した。
 続いて熊谷由紀絵氏(横浜朱雀漢方医学センター長)が、「漢方が、あなたのためにできること」をテーマに講演。「今、漢方はものすごいスピードで広まっている。安全に漢方を役立てていただくことが本日の目的です」と強調し、健康に自信のある"48歳の男性の会社員"を例に、 「"今さら漢方"のその理由」「彼が調子を崩したわけ」「現代人へのおすすめ処方」「ストレスと戦う食養生」「漢方を味方につけるには」の5章のストーリーで論を進めた。
 また「現代はストレスの時代。ストレス対策には漢方の知恵を活用しよう」と述べ、適した処方として補中益気湯、六君子湯などを挙げた。ストレスと戦う食養生としては、体を温める作用のある食材の摂取を薦めた。
 最後に熊谷氏は、大いに自惚れることを奨励し、「私ってまだイケる!と、たくさん自画自賛しましょう。どうにも不快な症状があってつらいとき、もっとはつらつと暮らしたいとき、ぜひ漢方薬をお役立て下さい」と結び、万雷の拍手を浴びた。

(詳細は本紙508号に掲載)


日本薬学会が被災者支援
昨年中止の資金を学生に
札幌大会参加者が対象

 11月15日(火)に行われた日本薬学会の会頭記者会見では、①東日本大震災被災地支援事業、②医療用医薬品の有効成分のうち一般用医薬品への利用も可能と考えられる候補成分検討調査事業、③「第8回AFMC国際医薬化学シンポジウム(AIMECS11)の開催概要などについて報告がなされた。
 そのうち、被災地支援について西島正弘会頭(昭和薬科大学)は、「今年3月に予定していた静岡での年会が中止となり、参加費の中から800万円ほどの贈与金が集まった。被災者支援として、来年3月に札幌で年会を開催するにあたり、被災学生に対し一人3万円の援助を予定している」と発表した。
 同会では来年の1月までの募集期間で呼びかけ、対象となる学生に援助する予定だ。

 ■東日本大震災被災地支援事業の募集要項は次の通り。
【対象】被災した学生で、日本薬学会132年会(札幌)で一般学術発表を行う学生会員
【支援内容】1名につき金額3万円程度を支給(年会参加に係わる経費として使用すること)
【応募要件】①第132年会(札幌)で一般学術発表に申し込み、採択されていること。
      ②指導教員(教授、準教授あるいは講師)の署名があること。※薬学部に限定するものではない。
【募集期間】11月16日(水)〜24年1月25日(水)
【問合先】日本薬学会総務課 電話03-3406-3321 FAX 03-3498-1835

(詳細は本紙507号に掲載)


「漢方を勉強せよ」『漢方フロンティア』上梓刊行
インタビュー田畑隆一郎氏

 『奏法フロンティア』(上巻1・2章、下巻3〜5章の2冊セット)が上梓され、著者の田畑隆一郎氏(たばた関本薬局、「無門塾」主宰)にお話をうかがった。
 「本書は、漢方を『識る→考える→創る→効かせる』という流れになっている。漢方がわかれば効果もわかる。特に学生さんや若い人に読んでもらいたい。日本の伝統漢方は素晴らしい。後世に伝え、日本の伝統漢方を守っていきたい。時代の移り変わりとともに変化する症候と薬方との関係については、今後も研究を継続し、充実させていける可能性がある」と、刊行の意図を語っている。

『漢法フロンティア』の内容
【第1章】漢方運用の基本原則を論じた総論編。
【第2章】主要200処方を収録。構成生薬の意味が一目でわかる「薬徴構造図」は、田畑氏の真骨頂だ。これまで平面図だったものを立体構造化させ、積木を積んだように図示することで生薬分量イメージを具現化した。
【第3章】102の重要生薬それぞれに二味の薬徴を示した。
【第4章】めまい、汗、発熱など18の主要な症候の運用例を紹介。
【第5章】初発から転変して終焉に至る証の流れ(太陽病→少陽病→陽明病→太陰病→少陰病)と薬方の変化を図解した。
(詳細は本紙507号に掲載)


「大建中湯」クローン病に新たな可能性
全米20施設で臨床試験
試験期間は来年11月まで

 ツムラの田中典裕営業本部長は、11月11日(金)の決算報告会の席上で、大建中湯に新たな臨床展開があることを発表した。クローン病の治療において、昨年から米シカゴ大学教授のスティーブン・B・ハナワー氏のもとで検討を重ねた結果、米国内でのCRO(医薬品開発業務受託機関)とプロトコル(臨床治験)が決定し、さる9月16、17日にカリフォルニア州サンディエゴで会合を開き、正式にスタートした。
 プロトコルの対象は、軽症から中等症のクローン病患者。大建中湯(TU- 100)の無作為化二重盲検、プラセボ比較試験を全米20施設で実施する。投与期間は8週間。来年11月までを試験期間とし、'13年2月までが開発期間となっている。エビデンスが確立された時点で、共同開発者なども加わっていく。
 ハナワー氏は炎症性腸疾患の第一人者で、全米のプロトコルを指揮する立場にある。サンディエゴの会合では「私がなぜ大建中湯という東洋、日本の薬の試験にトライするのか、疑問に思うかもしれない。現在クローン病は、寛解時を維持し、再発を抑えるような薬がない。今回、さまざまな文献にも目を通し、有効性を確信した。是非協力をお願いしたい」と呼びかけたという。
(詳細は本紙506号に掲載)


尾台榕堂の記念碑
東京駅前に建立
新潟県十日町市が尽力

 『類聚方広義』や『方伎雑誌』の著書として知られ、古方派を今に伝える尾台榕堂(寛政11年1799 〜明治3年1870)の記念碑が東京都中央区八重洲に建立され、10月29日出に除幕式が行われた。場所は、東京駅八重洲口から八重洲通りを150メートル。旧東海道の銀座通りから1本東京駅寄りの柳通りにある。
 記念碑の除幕式当日は、尾台榕堂の故郷・新潟県十日町市の実行委員会(須藤誠弥也会長・吉村重敏事務局長)のメンバー、東京十日町会、記念碑設置に全面協力した中央区、日本東洋医学会の石川友章会長と寺澤捷年前会長、日本医史学会の酒井シヅ理事長らが出席し、テープカットが行われた。
 像の製作は藤巻秀正氏(74)。「尾台榕堂の医術に対する情熱と人間愛を未来ある子供たちの前で薬研を引いている姿で表現した」という。藤巻氏は十日町市出身で、多数受賞歴のある彫刻家だ。
 碑の刻文の撰文は小曽戸洋氏(北里大)。〈……名は元逸、字は士超、通称は良作、号は榕堂また敲雲。十六歳で江戸に出、尾台浅岳に医学を、亀田綾瀬に儒学を学ぶ。三十六歳で師浅岳の家を継いで尾台姓を称し、六十五歳のとき将軍家茂に単独拝謁。この地(北槇町)に居住し医療活動を行い、当代屈指の名医として世に謳われた……現代医療の一端を担う日本漢方医学の基盤を築いた〉(一部省略)とある。
 碑が建つ歩道は付近の小学校の通学路にあたり、十日町市は、漫画『尾台榕堂物語』を寄付する予定とのことだ。
(詳細は本紙506号に掲載)


『醫界之鐡椎』から1世紀
第21回漢方治療研究会・千葉大で開催
医・薬・農の連携新時代

 東亜医学協会(寺澤捷年理事長)が主催する第21回漢方治療研究会(秋葉哲生会頭、池上文雄実行委員長)が9月25日、千葉大学けやき会館に250名を集めて聞かれた。今回のテーマは「醫界之鐡椎から1世紀———農・薬・医の連携新時代」。23題の一般講演ほか、会頭講演、特別講演、シンポジウムが行われた。
 シンポジウムでは、千葉大学環境健康フィールド科学センターの古在豊樹氏と鹿島建設エンジニアリング本部・澤田裕樹氏が甘草、当帰の生薬の栽培(植物工場)について報告。城西国際大学薬学部の堀江俊治氏は、現役漢方医との共同研究により、「単味生薬エキスと主成分のみの薬理解析」の基本原則が崩れ、漢方方剤を実験系に配列されたことを紹介。千葉大大学院医学研究院和漢診療学の並木隆雄氏は、「薬用資源枯渇時代における臨床医の対応」と題して、生薬資源を有効活用するための手立てを示した。
 「薬を使う者は無眼」と題した秋葉哲生氏(あきば伝統医学クリニック)の会頭講演は、尾台榕堂の『方伎雑誌』の巻1にある〈薬を採る者は両眼、薬を売る者は半眼、薬を使う者は無眼〉を引用し、医師は薬のことは全く知らないで運用している場合が少なくないことに警告を発した。漢方薬を日常的に処方する医師が86%にも上る中、薬について眼を閉じたままでいる医師たちに、漢方医家としての矜持を強く求める講演となった。
 特別講演を行った寺澤捷年氏(東亜医学協会理事長)は、和田啓十郎が著した『醫界之鐡椎』(明治43年初版・大正4年改訂版)と、漢方医学が衰退した明治末から大正、昭和の時代背景、そこで孤軍奮闘し、汗にまみれ、侮しさの涙を隠し、一筋の光を漢方に見出だしていた漢方家たちに触れ、「漢方を使う我々は、こういった歴史の流れの中にいることを自覚して、よりよい未来を視野に入れたい」と語った。
 一般演題では、永井良樹氏(東京大学内科)、福田佳弘氏(福田整形外科医院)、針生雄吉氏(仙台市・杜都中央病院)、山本智史氏(あきば伝統医学クリニック)、石毛達也氏(北里大学東洋医学総合研究所)らが、それぞれ症例に著効のあった生薬例を報告した。
(詳細は本紙505号に掲載)


臨床の療術を学び、医家の人となりに触れる
第44回日本漢方交流会全国学術総会

 「痛みと漢方」をテーマに10月9日(日)、10日(月・祝)の2日間、徳島文理大学で開かれた第44回日本漢方交流会全国学術総会は、約200名を集めて盛会となった。
 開会挨拶では、大会長の木村孟淳氏(日本薬科大学)が、麻黄の有効成分エフェドリンを発見した長井長義が徳島に生まれたことに触れ、木村氏の父・康一氏(生薬学)が古本屋で購入した『本草綱目』の中から、長義が父の琳章に宛てた手紙が10通ほど出現したというエピソードを紹介した。
 特別講演3演題では、油井富雄氏(ジャーナリスト)が、「浅田宗伯の人生——書簡に見る現代医家への提言」と題し、宗伯ゆかりの地を写真やエピソードを紹介しながら「人間・宗伯」を追った取材の成果を披露。中村謙介氏(千葉・海浜整形外科)は「整形外科医の漢方診療」と題して、「外傷性炎症に越婢加朮湯」「上肢帯の疼痛に疎経活血湯」など、6方剤の症例を提示。仲原靖男氏(沖縄・仲原クリニック)は、「不定愁訴は複合的要因が神経、免疫、内分泌に作用し、恒常性維持に変調をきたす」として、漢方治療の可能性を提示した。
(詳細は本紙505号に掲載)


「痛みと漢方」テーマに徳島で
第44回に本漢方交流会徳島大会
薬局漢方の学術大会、盛会に

 「痛みと漢方」をテーマに徳島文理大学(徳島市)で開催された第44回日本漢方交流会全国学術大会徳島大会(庄子昇実行委員長)は、195人が参集、盛会となった。会員発表7題ほか、特別講演は「浅田宗伯の人生」をテーマにジャーナリストの油井富雄氏、「整形外科医の漢方診療」と題して千葉海浜整形外科の中村謙介氏、不定愁訴をテーマに沖縄仲原漢方クリニックの仲原靖夫氏がそれぞれ講演。「漢方薬を使うコツ」をテーマとした市民公開講座も開かれ、徳島大学病院薬剤部の川添和義氏が講師をつとめた。



多成分系生薬研究の最前線
第14回天然薬物研究方法論アカデミー

  第14回天然薬物研究方法論アカデミー(8月20日〜21日)は、『臨床から発信する漢方研究のストラテジー』をテーマに開催され、神奈川県葉山町の湘南国際村センターに200人が集まり熱い議論が繰り広げられた。
 開会挨拶に立った大会長の赤瀬朋秀氏(横浜市東部病院)は、「この会は基礎系、臨床系が一体となって天然薬物の研究方法を論じる貴重な場。臨床からの発信を研究者に戻し、その成果を臨床に還元することを基本にしている。研究の方法論だけでなく、国民に寄与する医療医薬学の発展につなげたい」と述べた。
 同アカデミー創立メンバーの昭和薬科大学・田代眞一氏は、同会設立の経緯と、これまでの研究を披露。同会の理念に基づく薬理研究の重要性を強調した。
 また、赤瀬氏は大会長講演の中で、漢方処方薬によってどれだけ医療費が削減されたかを患者の予後と絡めて評価した。横浜朱雀漢方医学センターとの共同研究で不妊治療における漢方薬の使用症例を検討したところ、早い段階での漢方処方薬の使用で費用を大幅に削減したという。
 筑波大の本間真人氏は、漢方薬と西洋薬との意図的併用や偶発的併用などの実態を調査。偶発的併用には有害事象もあり、パターンを絞りこんで情報を開示していく必要性を説いた。
 帝京大医学部の新見正則氏は、証に随う「トラディショナル・カンポウ」と、保険医療の中でエキス剤を西洋医学的な理解で用いる「モダン・カンポウ」双方の特徴を提示。現代科学のEBMだけを金字塔の如く扱うと漢方の魅力をミスリードする恐れも指摘した。
 このほか、ツムラ信頼性保証本部長の竹田秀一氏が作用機序解明を目指した大建中湯薬物動態試験について報告。東京女子医大東洋医学研究所の医師、木村容子氏が五苓散はじめ利水剤を使用した臨床例を提示。熊本大学大学院薬物活性学分野の磯濱洋一郎氏が細胞膜の水透過性を調節するアクアポリンの最新研究を紹介。横浜薬科大学の石毛敦氏が、更年期障害に使われる当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸の漢方の証の概念とそれぞれの動物実験から導かれた作用の違いを比較し、証との関係に言及した。
(詳細は本紙504号に掲載)


薬用植物フォーラム2011開催

 10月11日(火)、医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター(川原信夫センター長)主催の薬用植物フォーラム2011がつくば国際会議場で開催され、今年改正された日本薬局方、昨年開催された生物多様性条約締約国会議、薬用植物栽培など、最近の話題について6名の演者が発表した。
 合田幸広氏(国立医薬品食品衛生研究所生薬部長)は、今年3月24日に告示され4月1日より適用となった第16改正日本薬局方の改正点について、「最も大きな変化は『製剤総則』に生薬関連製剤として、『エキス剤』『丸剤』『酒精剤』『浸剤』『煎剤』『茶剤』(新規)『芳香水剤』『チンキ剤』『流エキス剤』(1mg中に生薬1g中の可溶成分を含むように製したもの)がまとめられたこと」などと報告した。
 炭田精造氏(バイオインダストリー協会)は、昨年10月に採択された「生物多様性条約COP10」について、「遺伝資源へのアクセスと利益配分」が争点の1つとなったことを紹介。同条約第15条によると、遺伝資源に対する各国の主権的権利が認められ、アクセスには提供国と利用者間での事前同意が必要となり、遺伝資源の利用から生じる利益は相互に合意する条件で配分されることになっていると解説した。
 後藤英司氏(千葉大学大学院園芸学研究科)は、緑黄色野菜が含有するポリフェノール、有機硫黄化合物、テルペノイドなどのファイトケミカルについて「植物工場で光や温度などの環境ストレスを付与することで機能性成分高含有の作物の生産が期待できる」と報告。植物工場は、自然気象の影響を受けずに周年的に野菜・花き等を計画生産できるシステムで、「太陽光型」「完全人工光型」「併用型」が現時点で商業化されている。このうち「完全人工光型」は、水の使用量が極めて少なく、無農薬栽培を容易に実現でき、同一品質の作物が年中生産可能と説明した。
 竹森洋氏(医薬基盤研究所)は、神経保護・障害シグナルに異常を有する2種のモデルマウスの作成を確立したことを発表した。ひとつはタンパクリン酸化酵素(SIK2)の遺伝子欠乏マウス(SIK2-KOマウス)、もうひとつは自然発生の小脳変性モデルマウス(TS3マウス)。双方は脳梗塞後の障害の軽減や神経保護(認知症)に有用な化合物のスクリーニンクなど、創薬や治療に有用性を発揮するという。
 掘澄人氏(長野県農政部園芸畜産課)は、長野県における薬用植物の生産状況を報告。薬用人参、シャクヤク、甘茶、キハダ、センブリ、トウキ等の栽培戸数は252戸、栽培面積53.9h、収穫量84t、生産額1億1千万円となっている。収穫までの未収入期聞が長いことや、同県に適した栽培技術の未確立などの課題もあるが「引き続き生産体制を整備し、薬草栽培の定着と拡大を図る」と今後の抱負を述べた。
 杉村康司氏(医薬基盤研究所)は、ソロモン諸島における薬用植物の分布と種多様性との関係を報告した。ソロモン諸島の中でも手つかずの熱帯雨林があり国際的な保護地区でもあるテテパレ島での調査では、植物の出現種数は海岸域、内陸域、河川域の順に多く、薬用植物の出現種数も同様の順で、特に海岸域においては種の多様性が高いそうだ。杉村氏らは、多種類が生薬となっているセッコク(石斛)属を採取し分析したところ、解熱剤、強心剤、抗腫瘍薬として民間薬に利用している種があり、「今後の活用が期待される」とのこと。「今後は、これまで収集してきた同島産の貴重な植物資源について、具体的な有効活用法を検討すべく、遺伝子解析や成分分析を行う」と抱負を述べた。
(詳細は本紙504号に掲載)


日本生薬学会第58回年会
高いスキルの必要性感じる大会に
産学官総出の演題
認定薬剤師の関心高く

 9月24日(土)、25日(日)に聞かれた日本生薬学会第58回年会は、同会と日本薬剤師研修センターが共催する「漢方薬・生薬認定薬剤師」の認定講座となっているほか、日本医療薬学会が認定するがん専門薬剤師講習会の教育セミナーになっており、講演終了後には、認定シールを受け取るための長い列ができた。ポスター会場も大勢の参加者が参集し、熱心な質疑応答が繰り返された。
 受賞講演では、生薬学会賞、学術貢献賞、同奨励賞、功労賞などの受賞者が自身の研究を披露。中でも生薬学会賞を受賞した浅川義範氏(徳島文理大学)は、会場に多数詰めかけた留学生に配慮し、流暢な英語で講演を行った。
 がん専門薬剤師講習会の教育セミナーとなった教育講演では、三瀦忠道氏(福島県立医大)と、中村清吾氏(昭和大学医学部)が講演。三瀦氏は、附子や生姜、乾姜の用い方を紹介しながら、寒熱の診断や病態、症候の特徴などを解説した。中村氏は、乳がん治療の最前線を解説。いまや摘出組織より21の遺伝子の発現レベルを測定し、再発リスクを推測することが可能で、不要な化学療法を減らすことに成功しているという。副作用に対する漢方薬の用法の一端も紹介した。
(詳細は本紙503号に掲載)


津波に負けず、桔梗の花咲く
「更に吉」で吉兆のシンボル

 本紙495号、496号で既報の通り、津波の被害を受けた宮城県で5月初旬に1本のみ発芽が観察された桔梗の自生地で、この夏80本以上も茂り見事に開花したことを仙台市の田口哲之氏(泰生堂薬局)が報告した。
  日本漢方協会雑学分科会の活動の一環として、「宮城県の桔梗探し」などを継続してきた田口氏は、6月16日の観察で一挙に88本の発芽を確認できた。さらに8月10日、同協会の緒方勝行氏(植物観察分科会)と同行した際には見事に咲き出し、オミナエシ、萩、ススキなど他の秋の七草の自生も確認できたという。
 多くの武将が桔梗紋を好んで使用したのは、文字の中に「更に吉」があるためといわれる。田口氏は「吉兆の花“桔梗”のように、被災地が早く復興し花開く日が一日も早く来ることを願っている」と結んだ。
(詳細は本紙503号に掲載)


乳がん早期発見で90%治癒
第114回漢方医学フォーラム

 9月26日(月)、第114回漢方医学フォーラムが日比谷プレスセンター(東京・千代田)で開催された。渡辺久美子氏(福島県立医科大学付属病院乳腺内分泌甲状腺外科性差医療センター)が専門分野である乳がん、性差医療について講演した。
  乳がん罹患者数は年々増加し、'04年の推計では5万人(地域がん登録)を超える。死亡者数も増加傾向にあり、'09年では11914人(厚生労働省)が乳がんで亡くなっている。国が乳がん検診の受診を促す取り組みを行っているにもかかわらず、わが国の受診率は米国の60〜70%に比べ20%代と低い。検診への羞恥心やマンモグラフィ検査で痛みを生じることなどが受診率の低さに影響していると考えられているとのこと。乳がん検診を受診する側の抵抗や負担を軽減するのが今後の課題だという。
 乳がんの術後は、抗がん剤や女性ホルモンを抑える薬で再発予防を講じるが、無月経、更年期に似た症状が出現するほか、副作用によるしびれ、むくみ、発汗、ほてり、関節痛などが生じることが多い。「そんな時には漢方が有効」と渡辺氏。「不安、焦り、疲れなど心身のエネルギーの低下を“気虚”、白血球やヘモクロビンの低下を“血虚”と捉え、気血両虚には、十全大補湯を投与して自然治癒力を高める。精神症状を伴う更年期症状には加味逍遥散」と、方剤の用い方を紹介した。
 乳がんの予防方法はないが、早期発見・治療により約90%の人が治るという。「早期発見で約80%は乳房が温存できる。“自分は大丈夫”と思わず、検診を受けて欲しい」と訴えた。
 福島県立医大付属病院は福島市内に所在しているが、今年3月の東日本大震災による被害は、比較的少なかったという。「地震による不安や恐怖に柴胡加竜骨牡蛎湯を処方したり、津波で流れてきた流木による打撲には桂枝茯苓丸を処方した。寒い避難所では足をつる人が多く芍薬甘草湯が非常に効いた」と災害時の状況を語った。
(詳細は本紙503号に掲載)


日本生薬学会第58回年会
「知的めぐみ」生薬研究の意義に焦点
経済産業省“支援体制”の概況も

 9月24日(土)、25日(日)の2日間、昭和大学(品川区・旗の台キャンパス)で開かれる日本生薬学会第58回年会(鳥居塚和生実行委員長)は、会長講演、特別講演、教育講演、学会賞等受賞講演、4つのシンポジウムほか、一般口演83類、ポスター発表202題がエントリーされた。
 会長講演では、「天然シード化合物探索研究の知的みぐみ」と題して、竹谷孝一氏(東京薬科大学薬学部教授)がアカネ科植物の根部から見出した抗腫瘍性ヘキサペプチド類について発表。「近年の生薬・天然物化学の研究成果は、がんなどの難治疾患に対応しうる創薬と生体機構の解明に直結し、さまざまな科学の領域に波及している」として、天然シード化合物の探索の成果を「知的めぐみ」と位置づける。
 特別講演では、「国際標準化の重要性と最近の取り組み」と題して、経済産業省産業技術環境局の内田富雄氏が中国の提案で一昨年に設立したISO(国際標準化機構)の漢方・鍼灸関連の専門委員会「TC249」への参加と、情報収集などの周辺整備に対する支援体制の現況と概要を報告する。
 教育講演では、三潴忠道氏(福島県立医大・会津医療センター準備室)が「総合病院における漢方治療の実際」、中村清吾氏(昭和大学医学部乳腺外科)が「乳がんの診断と治療2011」と題し、がん治療を中心とした内容でそれぞれ講演する。今回の教育講演は、日本医療薬学会認定「がん専門薬剤師講習会・教育セミナー」の対象セミナーとして承認され、受講者には1単位(2時間)の受講証明が発行される。
 そのほか、学会賞、学術貢献賞、学術奨励賞、功労賞の各受賞者が、それぞれ講演する。
(詳細は本紙502号に掲載)


1000号めざしてさらなる飛躍を
月刊『和漢薬』700号発刊記念祝賀会

 ウチダ和漢薬(内田尚和社長)が昭和26年に創刊した『和漢薬』誌が、9月で700号となったことを記念して、都内のホテルにおいて祝賀会が開催された。
 挨拶に立った内田氏は、「多くの先生方のご寄稿とご支援、ご愛顧のおかげ」と謝辞を述べ、同誌については、「昭和25年に『漢方を復興したい』との志を持った剣持久氏、佐藤省吾氏らをはじめとする有志によって発足した“和漢薬同好会”がガリ版刷りの謄写版印刷を8号まで発刊。翌年にはB5版たて書きの活版印刷で月刊誌をスタートさせた。以来、生薬の吟味、民間薬の啓蒙、臨床、海外フィールドでの生薬資源調達機構など、半世紀以上にわたり発刊を継続することができた。今後は栽培事業、薬事制度などに紙面を拡大し、海外研究者にも寄稿を依頼していきたい」と述べた。
 内田氏の挨拶に続き、来賓の藤井基之参議院議員の祝辞を持参した斎藤代理秘書が挨拶に立ち、「60年以上の長きにわたり、生薬、漢方の情報の積み上げに敬意を表する。セルフメディケーションを支える漢方製剤のますますの発展に期待する」と述べ、1000号へ向けてのエールを送った。
 東亜医学協会理事長の寺澤捷年氏は、600号の際に編集方針の相談を受けたことに触れ、同誌が個性を持った雑誌となり、御影雅幸氏のフィールドワークの調査記が活字として残っている意義を「人文系と科学系がいい塩梅に混ざり合っている」と700号に寄稿した合田幸弘氏(国立医薬品食品衛生研究所)の一文を借りて語った。
 日本漢方生薬製剤協会会長の風間八左衛門氏は、700号の積み重ねに思いを馳せ、「歴代の担当者、それを支える社員など、700の数字にはとてつもない人々の知恵と徳が詰まっていることと思う」と、続けることの大切さや刷新することの難しさを語った。
 ロート製薬の吉野俊昭社長は、昨年同社とワチダ和漢薬が中国の製剤メーカー・天津力生有限公司との合弁で中国・天津市に漢方薬の製造・販売会社を設立したことに触れ、「オイルショックやリーマンショック、9・11、先日の震災(3・11)など、さまざまな時代の流れがある中で継続してきたことの凄さを感じる」と述べた。
 日本漢方協会の三上正利氏が乾杯の音頭をとり、会は和やかに進行した。最後に、内田社長が、701号から新たにスタートする編集スタッフを紹介。出席者に対し、今後の協力を呼びかけて閉会した。
(詳細は本紙502号に掲載)


和漢医薬学の最前線
基礎、臨床、生薬資源、人材育成に焦点
最新の創薬研究の発表も

 8月27日(土)・28日(日)の2日間、富山県民会館(富山市)にて開催された第28回和漢医薬学会大会は、約700名の参加者をあつめて盛会となった。
 基礎研究、生薬・天然薬物研究、臨床研究、教育・人材育成をテーマとした4題のシンポジウムのうち、生薬・天然薬物研究をテーマとしたセッションでは、天然資源の減少という課題の中で、使用生薬の83%を中国に依存し、合計88%が海外からの輸入で「第2のレアアース」とまで言われるようになった国内状況を鑑み、漢方医学の永続性、不変性を担保するための安定供給に焦点をあてた。オーガナイザーは小松かつ子氏(富山大学和漢医薬学総合研究所)と丸山卓郎氏(国立医薬品食品衛生研究所)。
 このうち、創薬研究の成果を発表した北島満里子氏(千葉大)は、国内で自生するアカネ科の植物に抗腫瘍薬イリノテカンとトポテカンを創薬した単離天然成分カンプトテシンを見出し、カンプトテシン類を特異的に生産する植物と、生産せずにβ-カルポリン型のアルカロイドを生産する植物があることを明らかにした。
 北島氏の発表ではこのほか、肥満改善作用が期待できるイポガ型アルカロイド(キョウチクトウ科植物)の活性成分の研究や、イヌサフランに含有される成分で痛風薬として開発されたコルヒチンの抗腫瘍活性の研究などが披露された。
(詳細は本紙501号に掲載)



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