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日本漢方生薬製剤協会
「訪中団」を組織
中国政府機関、団体など7か所を訪問
日本漢方生薬製剤協会(東京都中央区、加藤照和会長、以下「日漢協」)は、10月19日(日)〜22日(水)の4日間、加藤会長をはじめとする18名の訪中団を結成し、中国の政府機関や団体など7か所を訪問した。10月30日(木)に日漢協内会議室で報告会が開催された。
今回の訪中の目的は、①日本における漢方製剤の生産金額等に関する正しい情報の発信、②日本の医薬品の輸入に関する規制の説明、③PIC/S(医薬品査定協定・医薬品査察協同スキームThe Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical lnspection Cooperation Scheme)への加盟(今年7月)により生薬に関する新たな取り組みが求められていることに対する協力の要請などである。
今回の訪中について同協会の渡邊喜久彦常務理事は、「訪問先の各機関と情報を共有し、質疑応答が活発に行われ、有意義な訪中だった。とくに、国家中医薬管理局長の王国強氏(国家衛生・計画生育委員会副主任)と面談できたことは、大きな成果だった」と述べた。王国強氏は訪中団に対し、「中医学と漢方医学が人類の健康に貢献することは確実。原料生薬の品質と安全性、自然保護の必要性を説き、日中の交流により共同研究や人材育成などに、ともに取り組むべき」と述べ、「日中韓の伝統医学の架け橋となる活躍を期待している」と、日漢協を激励したという。
日漢協生薬委員会の浅間宏志委員長によると、中国では「日本は中国から生薬を輸入し製品化し、海外で販売して巨大な利益をあげている」という誤認識をメディア情報で散見するところから、厚生労働省「平成24年薬事工業生産動態統計年報」(平成22年分)の「漢方製剤、生薬等」の国内出荷額と国外輸出額をもって中国側に説明し、同年分の国内出荷額は1532億1394.4万円、国外輸出額は334.7万円で、世界市場を独占するような金額ではないことへの理解を求めたところ、中国各機関は一様に驚き、情報交換の必要性を認識したという。生薬製剤と化学薬品が混在する「強心剤、止瀉薬・整腸剤」についても、国内出荷額は427億8518.1万円、輸出額は24億3374.3万円にとどまっていることを示した。データの信憑性は厚労省ということで評価されたという。
また、同協会薬制委員会の栗田宏一委員長は、日本の薬事制度の概略を説明して中国側の理解を求めたと報告。具体的には、(1)医薬品製造販売承認申請、(2)医薬品製造・品質管理基準(GMP)適合調査、(3)医薬品の輸入(外国製造業者認定)、(4)一般用漢方製剤承認基準(294処方)の概略など。栗田氏は「日本への製品輸出に興味を持っているように感じられた。多くの機関で多くの人と面談できたことは有意義だった」と語った。
PIC/Sに関しては同協会技術委員会の富塚弘之委員長が、平成26年7月1日付けで日本(厚労省)がPIC/Sに加盟をしたことから、日本の製薬メーカー各社が対応していることを中国側に説明し、PIC/Sの目的、日本が加盟する必要性、PIC/S GMPガイドラインの構成内容を中国側に概説したと報告した。とくにガイドラインの中でも植物薬の安全性と品質を保証するためのGMPを記載したAnnex7については詳説し、理解を求めた。双方、協力関係を構築していくことを約束したという。
今回の訪中先は次の通り : 国家中医薬管理局、国家食品薬品監督管理総局国際交流中心、中華人民共和国工業和情報化部消費品工業品司、中華人民共和国商務部亜洲司、国家質量監督検験検疫総局中国輸出入検験検疫協会、中国医薬保健品進出口商会、中国医薬健康産業股扮有限公司
(本紙538号に掲載)
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未来創造ら向けて40年の歩みを祝福
第17回国際東洋医学学術大会
40周年記念大会台北で開催
11月1日(土)、台大医院国際会議センター(台湾台北市)において、国際東洋医学会(ISOM)が主催する第17回国際東洋医学会学術大会(ICOM)が開幕した。
今回は同会40周年の記念大会でもあり、初日の来場歓迎会では「The past make us and we make the future」と掲げ、40年の足跡をフォトムービーで紹介。大会長の河永成(中華民国中医師公会全国連合会理事長)、黄恰超(中華民国衛生福利部国家中医薬研究所所長)両大会主席、陳介甫、林昭庚両名誉主席らが参加者の来場を歓迎し、壇上でスピーチしたほか、「終生貢献賞」(ISOM Lifetime Contribution Award)の表彰が行われ、故人を含む7名が受賞した。
ウェルカムレセプションでは40周年を祝福する式典が執り行われ、会場の台大医院国際会議センターは祝福ムードに包まれた。
国際東洋医学会(ISOM)は同会にあわせて『40年史』を編纂し、当日会場で披露した。同誌には歴代会長と同会の沿革、第1回から16回までの学術大会の様子が写真とともに掲載されている。日本からの歴代会長は、坂口弘(第3〜5代)、山田光胤(第6〜9代)、室賀昭三(第14〜15代)、中田敬吾(第16、18代)の4氏。中田氏は、同誌巻頭に「発刊の辞」を寄せ、30周年記念誌が発刊された以降の10年間を振り返りながら、「国際交流は年々盛んになり、若手の研究者の台頭が発展を促している。古代中国に誕生し、長い年月を通じて東アジアに伝播した伝統医学は、それぞれの国で、人々の健康に奉仕している」と語り、互いの優れた情報交流の重要性を説いて、ISOMの発展を祈念した。
(本紙538号に掲載)
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日本生薬学会第61回年会(福岡2014)
「良い生薬」の解明を
第8回日中韓生薬学合同シンポジンウム併催
9月13日(土)、14日(日)の2日間、福岡大学(福岡市)において日本生薬学会第61回年会(福岡2014)が開催。636人が参集し盛会となった。実行委員長は金城順英氏(福岡大学薬学部生薬学研究室教授)。会長講演、特別講演2題、各賞受賞者講演、3つのシンポジウムが行われた。一般演題発表200題(口演38題、ポスター162題)は生合成、遺伝子解析、成分検索および構造決定、生物活性・スクリーニング、品質評価など多岐にわたった。初日(13日)には第8回日中韓生薬学合同シンポジウム(小松かつ子実行委員長)が併催された。
会頭講演では、木内文之氏(慶應義塾大学薬学部教授)が、生薬の品質評価と資源の確保に関連した演題として、牛膝と車前子の薄層クロマトグラフィー(TLC)用の試薬開発と、蘇葉の精油成分の解析と規格化など、日局規格に関与した研究を紹介した。とくに蘇葉は、精油成分のペリルアルデヒド含量を規定することで粗悪品と鑑別し、医薬品としての品質維持が可能になることをつきとめ、局方に収載したことを紹介。漢方薬の良質なエビデンスの創出にも言及し、薬理試験用標準生薬の規定、プラットホームとなる環境づくり、「良い生薬」の解明の必要性を訴えた。
名古屋議定書の生物多様性条約について木内氏は、「当面は多様性を保存することが重要。個々の成分の役割を解明することで、目的別に品質の異なる生薬を使い分けることが可能になる」との考えを示した。
同じく名古屋議定書について、鈴木睦昭氏(国立遺伝研究所知的財産室室長)が「天然物研究に対する名古屋議定書の影響」と題した特別講演を行ったほか、生薬資源としての甘草に焦点をあてたシンポジウムが行われ
た。
同時に開催された「第8回日中韓生薬学合同シンポジウム」には、約129名が参加。特別講演はスイス・バーゼル大学の教授、Dr. Matthias Hamburgerが、同氏の研究室で構築した天然物の画分から導出するリード化合物探索のためのさまざまなデータを備えたプラットホームが治療分野の共同プロジェクトに寄与していることを紹介。基調講演では木内文之氏が黄連解毒湯の抗炎症作用と檳榔子(びんろうじ)の虫体破裂作用(寄生虫)の解析研究を紹介した。招待講演では、日本生薬学会から2氏、中国生薬学会から3氏、韓国生薬学会から3氏が登壇した。
(詳細は本紙537号に掲載)
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未病を制御する「漢方ICT医療」とは
北里WHO・COIシンポジウム
来たる12月6日(土)、パシフィコ横浜アネックスホール(横浜市)において、北里WHO・COIシンポジウムが開催される。主催は北里大学、森下仁丹(株)、富士通(株)、大峰堂薬品工業(株)、(株)ウチダ和漢薬。
主催者らは昨年、文部科学省主導「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」の中で唯一、漢方医学関連の提案として採択され、トライアル拠点14件のひとつとなった。
「漢方診断の可視化、標準化」と「生薬品質評価」のためのシステム開発をめざし、今年4月19日(土)に第1回シンポジウムを開催。第2回シンポジウムとなる今回は、「安全高品質な漢方ICT医療による未病制御社会を目指して」。「漢方ICT医療」の具体的な形が明らかになりそうだ。
北里大学東洋医学総合研究所(花輪壽彦所長)は富山大学医学部とともにWHO伝統医学研究センターに指定され、2012年にWHO西太平洋地域事務局が公表した"The Regional Strategy for Traditional Medicine in the West Pacific (2011‐2020)"の日本語版を作成しており、北里大学は「今活動を通じ、"Regional Strategy"に謳われている伝統医学の標準化、伝統医療資源の安定化に貢献したい」としている。
【日時】12月6日(土)、12時45分〜17時40分(12時15分受付開始)
【会場】パシフィコ横浜「アネックスホール」(F201+F202)
【参加費】無料(懇親会費1000円) 定員300名
【参加申込】要事前申込み。氏名、所属、参加人数、懇親会参加の有無を明記して下記宛にメールする
omrc-ebm@insti.kitasato-u.ac.jp
【問い合わせ】北里大学東洋医学総合研究所EBMセンター TEL 03-5791-6346
(本紙537号に掲載)
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「次代に残す漢方の口訣」
『漢方の臨床』創刊60周年
第24回漢方治療研究会
東亜医学協会(花輪壽彦理事長)が主催する第24回漢方治療研究会(小曽戸洋会頭)が9月28日(日)、ホテルクランドパレス(千代田区飯田橋)で開かれ、261名が参集した。テーマは「次代に残す漢方の口訣」。当日は19題の一般演題ほか、特別講演、指定講演、ランチョンセミナーが行われた。
今回は同協会が刊行する月刊誌『漢方の臨床』の創刊60周年記念式典も開催され、盛会となった。同誌の投稿論文の年間優秀発表を顕彰する第18回東亜医学協会賞の表彰式では、花輪理事長が「今年の協会賞は甲乙つけ難く、2名を表彰する」と紹介。選考委員長の三谷和男氏は、症例報告と歴史研究の投稿各1名を協会賞、症例報告の1名を学術奨励賞に選考したことを報告した。
受賞者は次の通り。
【東亜医学協会賞】
館野正美(日本大学文理学部)
山本康博(山本クリニック)
【東亜医学協会学術奨励賞】
時枝正史ほか(時枝内科クリニック)
(詳細は本紙537号に掲載)
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脳神経外科と漢方
〜漢方で治せる脳の病気〜
第129回漢方医学フォーラム
さる9月30日(火)に日本記者クラブ(千代田区)で聞かれたメディア向け講演会「第129回漢方医学フォーラム」では、脳神経外科専門医の工藤千秋氏(くどうちあき脳神経外科クリニック院長)が、慢性硬膜下血腫に対する五苓散の治験と、脳機能の客観的評価法をあわせて紹介した。
脳疾患の3病態「脳梗塞」「脳出血」「脳腫瘍」に共通するのは、脳内に余計な水分がたまることだ。「脳出血」の病態に分類される慢性硬膜下血腫は中高齢者に多く、頭部打撲後1〜2か月で頭蓋内の硬膜下と脳の間に血液がたまり、脳を圧迫することで発症する。血腫量が多く、脳を圧迫している場合は、ドレナージ術(管を入れて排出)や開頭術などの手術を施し、少ないケースはそのまま経過を観察する。工藤氏によると、経過観察する際、漢方薬の服用が有用なことが、脳外科医の間で広く知られるようになったという。
第1選択薬は五苓散だ。症状が軽い時や、血腫量が多くても高齢だったり手術のリスクが高いケースに用いられている。五苓散の浮腫改善作用については、構成生薬の「蒼朮」に含まれるマンガンが「アクアポリン4」の水透過をブロックするメカニズムが明らかになっている。「アクアポリン4」は脳細胞に多く存在する水チャネルの膜タンパクで、脳に異常がおこると増え、脳浮腫が生じることが知られている。
工藤氏は、桂枝茯苓丸や通導散もよく用いるとのこと。術後リハビリ中、あるいは退院して自宅療養に移る際には、ベッドでの臥床期間が長いことから宿便がたまり、お腹が張って食事がとれず力が出ないケースがある。宿便の解除は、術後ケアの重要な要素として、脳外科医の間で理解され始めているという。
症例報告では、五苓散を服用して慢性硬膜下血腫が改善した90代と70代の女性の症例を紹介した。
症例(1) : 90代女性は、急に何度も同じことを訊ねるようになり、夜間の家族への電話の回数が増えた。トイレの回数が増えたのに失禁も目立ち、転倒するようになり来院。頭部CT画像で血腫の脳への圧迫が顕著だったが肝機能、腎機能が悪く、麻酔不能のため、経過を観察しながら五苓散を服用したところ2か月で改善。「高齢者は手術をすると回復に時間がかかる。手術をせずに治ってよかったと最も思えた症例」と工藤氏。この女性は現在でも、ひとりで歩いて来院するという。
症例(2) : 70代女性は頭痛がひどくなり来院。物忘れ、MMSE(認知機能検査)18、要介護3、デイケアでの尿失禁、表情が苦悶し活動低下。転倒の有無を訊ねたところ、雪の日の買い物中に転んだとのことで、慢性硬膜下血腫が疑われた。CT画像でも左頭部の血腫の脳への圧迫が顕著だったため手術を勧めたが、糖尿病があり、本人も手術を拒んだことから五苓散を服薬して経過を観察したところ、1か月で準正常城に回復。差分解析でも顕著な改善を認めた。
このほか工藤氏は、五感への働きかけが脳機能に奏効する例として、嗅覚刺激(アロマテラピーなど)の効果を紹介。認知症の周辺症状(BPSD)で興奮性が高まっているときに甘いものを食べると落ち着くなど、味覚刺激の効果にも触れた。
(詳細は本紙537号に掲載)
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「次世代を担う若手研究者の会」発足
第31回和漢医薬学会学術大会
新学会誌『Traditional & Kampo Medicine』
国際的に評価される英文学術誌めざす
第31回和漢医薬学会学術大会が8月30日(土)、31日(日)の2日間、幕張メッセ国際会議場において開催され、800人あまりを集めた。
開会挨拶に立った秋葉哲生大会長(あきば伝統医学クリニック院長/千葉大学大学院和漢診療学講座客員教授)は、千葉県と和漢医薬との関係を紹介するとともに「今日の和漢薬研究の変化の状況に鑑み、江戸の本草学に立ち返り、現況を見直すことを試みたい」と語り、基礎医学と臨床医学の相互理解を呼びかけた。
総会では、新理事長に小松かつ子氏が承認された。また、日本東洋医学会(石川友章会長)と共同の英文誌「Traditional & Kampo Medicine」が7月14日(月)よりオンライン投稿査読システムの運用を開始したことが報告された。8月18日までに臨床研究3報、基礎研究1報(原著3、症例報告1)計4報が投稿されたという。受理された論文はWiley Online Libraryサイト内Early Viewにオンラインで公表される。冊子体は年2回発行される。
同会では新たな試みとして「次世代を担う若手研究者の会」を発足。ネツトワークを構築し、学会レベルで支援していく。「早ければ、次回の学術大会に向けて活動を開始できるのでは」と期待を寄せている。
優秀発表賞は、「口演」でハルディアンティ ベッセ(富山大)、氷室友吾(京都薬科大)、廣部隆太(星薬科大)、江川奈生(東京理科大)の4氏が、「ポスター」で嶋田沙織(筑波大付属病院)、中川廣輝(福岡大)、久志田郁(富山大)、尾関快天(近畿大)の4氏が受賞した。
市民公開講座も開催され、「漢方を生活に取り入れる」と題して並木隆雄氏(千葉大医学部付属病院和漢診療科)が、「千葉の薬草」と題して池上文雄氏(千葉大環境健康フィールド科学センター)が、それぞれ講演した。
来年の第32回学術大会は富山にて開催。大会長は白木公康氏(富山大学医学部ウイルス学教室教授)がつとめる。
(詳細は本紙536号に掲載)
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漢方に教えられたこと、気づかされたこと。
第17回市民公開漢方セミナー
来たる11月20日(木)、日本漢方生薬製剤協会(東京都中央区、加藤照和会長)は、「第17回市民公開漢方セミナー」を大阪国際会議場(大阪市)で開催する。
同セミナーは、漢方・生薬製剤の普及、啓発活動の一環として、一般市民を対象に毎年開催されており、今回は萩原圭祐氏(大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄付講座准教授)を講師に迎え、「漢方に教えられたこと、
気づかされたこと」のタイトルで講演する。萩原氏は、リウマチやアレルギーなどの免疫系疾患を専門とする医師。漢方については、「特有の診察や対話が、体の状態や体質を教えてくれ、日頃忘れていたことや偏りがちなことに気づかせてくれる」と語っている。
開講時間は18時半〜20時(開場17時半)。参加費は無料だが聴講券が必要。申し込みは、ハガキまたはFAXに郵便番号、住所、氏名、年齢、性別、職業、電話番号を記入し、日本漢方生薬製剤協会(103-0001中央区日本橋小伝馬町16-19渡林日本橋ビル3F) (FAX 03-3662-5809)へ。先着400名に聴講券送付。
同協会ホームページwww.nikkankyo.org/topix/event.htmlからも申し込むことができる。
(本紙536号に掲載)
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「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」
今年度も全国8ブロックで
厚生労働省、農林水産省、日本漢方生薬製剤協会(日漢協)共催「平成26年度薬用作物の産地化に向けたブロック会議」の日程が決定した。
日漢協によると、昨年、薬用作物(原料生薬)の産地化を志向する地域の都道府県および市町村の担当者、生産者に対し、生産および需給情報などの説明と意見交換を行う会議を全国8ブロックで開催したところ、良好な成果があらわれた事例はあるものの、産地サイドおよび実需者サイド双方が引き続き情報交換・共有の場を設けることを希望していることから、本年度の開催が決まったという。昨年は開催後に45件の折衝が行われた。
今年度は金沢(10月24日(金))を皮切りに、最終日の札幌(11月26日(水))まで、全国8か所で開催される。
(本紙536号に掲載)
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テーマは「漢方の産業化」
漢方産業化推進研究会
さる8月20日(水)、漢方産業化推進研究会(渡辺賢治代表理事)が「漢方の産業化」をテーマに研究会を開催した。
同研究会は、漢方産業化に積極的な神奈川、富山、奈良各県と、多様な企業群による情報交換の場として平成25年5月に設立され、茨城、群馬、埼玉、兵庫、熊本、宮崎各県と、北海道日高町、青森県新郷村、新潟県胎内市、山梨県甲州市、兵庫県淡路市、熊本県合志市、奈良県立大学、奥羽大学などが会員となっている。これまでに4回の研究会を開催してきた。
同研究会は、昨年9月、「漢方産業化推進に係るプロジェクト」を内閣官房地域活性化統合事務局あてに提案。「医薬品、食品、栽培、流通への民間参入・拡大を推進し、10兆円規模の漢方の新たな産業分野を創生する」「漢方分野の“バリューチェーン化”を実現し、産業の新陳代謝の促進を図る」とした。同プロジェクトが実現する成果として、①新たな産業創成による雇用促進、②予防医療の推進、③医療費削減による国民の健康長寿の延伸などを挙げている。
今回の研究会には、会員自治体から各1名、法人会員16社から各1名、個人会員3名のほか、アドバイザーとして(株)ジュリス・キャタリスト、オブザーバーとして農水省生産局農産部地域作物課、医薬基盤研究所、(株)ツムラ、(株)NALUXから各1名が参加した。
渡辺代表理事は、現内閣が「行動なくして成長なし」とする成長戦略の文言を引用し、「ぜひとも日本の武器となる漢方を」と述べた。具体的な事例報告と今後の予定については報道各社退席後に発表が行われた。
(詳細は本紙536号に掲載)
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薬用植物フォーラム2014
医薬基礎研・名寄市共催で
北海道研究部50周年記念
独立行政法人医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター(川原信夫センター長)が主催する「薬用植物フォーラム2014」が7月11日(金)、北海道名寄市との共催で、駅前交流プラザ「よろーな」(名寄市)において開催された。今年は医薬基礎研北海道研究部開設50周年にあたり北海道での開催となった。
開会式では医薬基盤研究所理事長の米田悦啓氏が挨拶に立ち、名寄市の協力と支援に謝辞を述べ、参加者の来場を歓迎した。
名寄市長の加藤剛士氏は、名寄市と生薬のこれまでの歩みを「栄光と挫折の歴史」と紹介。「近年、薬用作物の国内生産の機運が高まっており、こうした状況下での当地開催は喜ばしい。今後も地域全体でバックアップしていきたい」と語った。
翌12日(土)の午前中に併催された「薬用植物観察会」(医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター北海道研究部圃場)には、名寄市立大学のマイクロバスが名寄駅と圃場とを往復する無料送迎バスを定時運行し、加藤市長も開式から参加したほか、同日午後には生薬、漢方薬をテーマに健康や美容に関する市民講座を開くなど、同市をあげてのイベントとなった。
(詳細は本紙534号に掲載)
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新会長に加藤照和氏
日本漢方生薬製剤協会
日本漢方生薬製剤協会は7月18日(金)の第186回理事会において、加藤照和氏(株式会社ツムラ社長)を新会長に選任した。前任の芳井順一会長がツムラの役員を退任し、同協会の理事も加藤氏と交代したことで、会長が不在だった。会則により理事会にて会長の改選を行った。加藤新会長の任期は来年の5月まで。芳井氏は、同協会顧問に就任した。
加藤氏は同日、大阪市内のホテルで聞かれた新会長就任の記者会見で、「昨年、創設30周年という節目の年を迎え、新たなステージに向かう大切な時期であり、身の引き締まる思い。国民の心とからだの健康に貢献できるよう一意専心、任務に励む」と述べるとともに、同会の活動を支えてきた関係者に謝意を表した。
また、同協会の活動方針として「情報発信」の重要性を強調。「適正使用や副作用に関する情報を市民や医療関係者に発信し、漢方製剤、生薬製剤および生薬の特性に対する理解を深め、安全かつ有効な使用を推進しながら全体の需要を高めたい」と述べた。
生薬の国内栽培については、「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」の成果として現在45件が折衝を行っていることや「薬用作物等地域特産作物産地確立支援事業」が実施されるなど、関係省庁が前向きに取り組んでいることを紹介。国産品の供給比率の引き上げを目指すとともに、原料生薬の80%以上を依存している中国とは、今後とも良好な関係を継続し、安全かつ安定した調達に取り組む姿勢を示した。
WHO(世界保健機構)やISO(国際標準化機構)などの国際機関が、現代医療の中に伝統医学を生かす方向で会議が進捗していることや京都でISO/TC 249の会議が聞かれたことにも触れ、「日本の国益と主張が損なわれないことを踏まえ、関係諸団体、諸氏と協力しながら取り組んでいく」と述べた。
(詳細は本紙534号に掲載)
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第31回和漢医薬学会学術大会
「江戸の本草学と今日の和漢医薬研究」
継承と発展———「作法」を身につけるために
第31回和漢医薬学会学術大会が8月30日(土)、31日(日)の両日、「江戸の本草学と今日の和漢医薬研究」のテーマのもと、幕張メッセ国際会議場で開催される。大会長をつとめる秋葉哲生氏(千葉大学大学院和漢診療学講座客員教授・あきば伝統医学クリニック)は、「漢方の所作は、古典を読めること、知識を持っていること」と語り、限られた生薬資源を有効に生かすための時代の転換期が来ていることを強調した。今大会の見どころについてお話しいただいた。(聞き手 : 編集部)
——まず、今回のテーマが「江戸の本草学」になったことについて……
「昭和51年に医療用漢方製剤が大幅に薬価収載され、大挙して保険診療ができるようになって以来38年が経過したいま、漢方医療は大きな転換期を迎えています。製剤の原料生薬は天然物ですから、必要量を無尽蔵に生産することはできません。しかし、極めて限られた資源をいかに有効に使うかは、この38年間、軽視されてきました。そうした状況下で漢方診療の質を高めるためには、伝統医学がこれまで依ってきたところを知る必要があると考えて、「江戸の本草学」に焦点をあてました。科学以前のシステムである「本草学」にもう一度目を向け、消化したうえで研究を進めていく必要があります。また、大会の基本方針として、予防と治療、生薬資源、次世代の育成の観点から、次の3つをあげました。 1. 和漢薬による疾病の予防・治療の有効性による科学的な基礎・臨床研究 2. 和漢薬資源と品質管理に関する歴史的・科学的研究 3. 和漢薬に関する次世代の基礎・臨床研究者の育成。次世代の研究者の育成については、薬学生が登壇するセッションを企画しました。」
——秋葉先生が今回の大会長講演で示される、漢方処方薬の構成生薬の組み合わせを「ユニット」で考えるお話は、方剤の性格をよくつかめるように感じられるので、とても楽しみにしています。
「葛根湯にもユニットがあります。ひとつは「麻黄+桂枝」のゴールデン発汗コンビで、辛温解表薬の代表です。「芍薬+甘草」も入っています。芍薬甘草湯で知られるように、筋肉の弛緩作用があります。葛根そのものも辛涼解表薬で、温めないけれど、熱を取りながら筋肉の緊張を緩めたり、お腹の筋肉を緩めて下痢を改善したり、胃こりを緩めたりする作用があります。ユニットの集合として処方薬をながめて見ると新しい発見ができて、「効くはず」ということがわかるようになります。たとえば、今回お話する茯苓飲は、胃の働きを改善して水分の停滞を解消しますが、「咳に効く」とはどこにも書いてありません。私は咳に奏効することを20年ほど前に気づいて、自分で発見したと思っていたら、尾台榕堂(1799〜1871)が子どもの百日咳に奏効することを記述していました。ひとつの方剤を多くの症状に応用することは、伝統医学の多くの先輩たちがやってきたことです。輸入品の高価な生薬はふんだんには使えませんから、国内に身近な薬用植物がないか探したり、応用の仕方を工夫してきたのです。それが本草学を中心とした日本の生薬学、漢方医学、東洋医学です。」
——そういう意味では、「ユニット」の考え方は、方剤の構成生薬に目を向ける第1歩になるのではないでしょうか。
「処方の構成生薬の大枠を、いくつかに分けて考えることで、方剤の性格が見えるようになることは、これまでも、田畑隆一郎先生や、中川良隆先生ほか、たくさんの先生方が二味、三味、四味、五味の組み合わせの薬徴について解説されているので、考え方は理解しやすく、また「ユニット」というつかみ方が、時宜に適っている印象があります。薬能を考えるために、「ユニット」として生薬をとらえると、理解しやすいのです。」
——今回のプログラムをご紹介いただけますか。
「初日の午前に、臨床時その連携研究ほか、他分野との連携の研究に関するシンポジウムを開催し、午後は本草学をテーマとした特別講演を行います。伝統医学の国際標準を討議しているISO/TC249の動向にも発表していただきます。2日目の午前中は、学生諸氏のイントロダクションとなる発表が行われます。毎年、こうした試みが継続されていくと、必ずや実を結ぶのではないでしょうか。午後のシンポジウムでは、疼痛のメカニズムや治療分野の最新知見が発表されます。」
——最後に、漢方医学・医療の今後に託す思いをお聞かせください。
「とにかく、伝統的な漢方を身につけてほしいと思っています。『素問』『霊枢』などの古典から入り、伝統的な本草学を身につけて、「作法」を身につけた上で、新しい研究に取り組んでいただきたい。古典を知らなければ、漢方は極めて底の浅いものになってしまいます。漢方医家の関心事は、「昔はどうだったか」ということに尽きるのです。新しく解明された要素が入れ込まれても、「昔はどうだったか」を常に顧みる、何か疑問が生じたら、古典を検証する。これが伝統医学です。きちんとした形で復活させたいと思っています。漢方医学の古典は、教養科目ですから、知らなくていいはずがありません。われわれは『素問』『霊枢』からはじまり、同時代の『神農本草経』に書かれていることに教えられて、仕事を行っています。その記述に敬意を払いつつ、検証を重ねていく——ーそうした漢方医学をもう一度根づかせたい。」
——貴重なお話をありがとうございました。
(詳細は本紙535号に掲載)
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人間的な医学・医療は「術」にある
心身相関の演題多数
第65回日本東洋医学会学術総会
第65回日本東洋医学会学術総会が6月27日(金)から3日間東京国際フォーラム(有楽町)で、「アートの復権」をテーマに開催され、約3500名を集めて盛会となった。
文字化できる「学」に対し、文字化しにくい「術」の重要性を再認識すべく、「人間的な医学・医療」に焦点をあてた今大会は、心身の相関に着目した演題が多数並んだ。
ワークショップでは、近年、漢方診療が成果をあげている領域——がん治療、難渋疾患、心身一如、湯液と鍼灸の併用、地域医療に取り組む医師、研究者が登壇した。がん治療のセッションでは、癌症、腎虚、瘀血、冷えなど、がんの病態を東洋医学的に解析。難渋症例のセッションでは、脳挫傷術後の中枢性疼痛および嗅覚消失例、シェークレン症候群、頭痛、術後認知症、月経前症候群などの改善例を紹介。心身一如が効を奏した症例としては、ドライマウス、肥満症、妊娠、嘔吐、胃部不快感、不眠、無月経、過敏性腸症候群などを紹介。湯液と鍼灸の併用例では、腰部脊柱管狭窄症や坐骨神経痛、顔面神経麻痺、線稚筋痛症などの有効例が紹介された。地域医療のセッションでは、稚拙な医術による処方選択では立ちいかない状況が報告され、病態を正確に把握し、処方薬の効果を十分に発揮できるよう研鎖を積むことの重要性が説かれた。
シンポジウムでは、5人の演者が「心肝肺脾腎」それぞれを担当する形で講演。気血の過不足や滞りによる五臓の失調から皮膚症状の悪化を診断し、東洋医学的根拠に基づいた方剤を投薬することで治癒に導く症例が多数紹介された。
学術賞は稲木一元氏(青山稲木クリニック)が受賞した。
(詳細は本紙533号に掲載)
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日本薬学会がスタート
「博士課程進学者支援事業」
長井記念薬学研究奨励支援事業
日本薬学会(柴崎正勝会頭)は、薬学系博士課程進学者支援を目的として「長井記念薬学研究奨励支援事業」を開始した。事業の必要性について同会は、「学位を取得した多様な薬剤師や薬学研究者の輩出は、薬学の発展のために一層重要。研究に専念できる環境整備は、当会の大きな使命の一つ」としている。
柴崎氏(微生物化学研究所)は今年3月の年次学術大会(第134年会、熊本)の記者会見で、平成27年度から年間2千万円(平成29年度には6千万円+α)を支援できる見込みと発表。支援対象は、①薬学部6年制学科を卒業後、4年制博士課程に進学を希望する者および在籍者、②薬学部4年制学科を卒業し大学院修士課程(博士前期課程)を修了後、薬学系大学院博士後期課程あるいは4年制博士課程に進学を希望する者および在籍者。いずれも同会への入会が必要となる。
研究奨励金は、1人あたり月額5万円。博士論文を提出すれば貸与金の返済は免除され、学位を取得できなかったり博士論文を提出しなかった場合は、返済義務が生じる。
募集締切は9月30日(火)(必着)。所定の申請書(同会ホームページ)に必要事項を記入し、申請者の所属機関を通じて提出。11月1日(土)、2日(日)に選考委員会が審査し、同20日(木)の理事会で正式に決定する。
(詳細は本紙533号に掲載)
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今求められる、睡眠の“質”を高める治療
睡眠障害におけるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の改善——漢方薬の役割とは
第127回漢方医学フォーラム
今年1月30日(木)に日本記者クラブ(千代田区)で開催されたメディア向け講演会「第127回漢方医学フォーラム」は、小曽根基裕氏(東京慈恵会医科大学精神医学講座)が「睡眠障害におけるQOLの改善」をテーマに講演。小曽根氏は「CAP」(ノンレム睡眠中の周期的な脳波活動の変動)と呼ばれる睡眠脳波判読マーカーを用いて不眠の病態と睡眠薬の効果を解析する中で、「抑肝散」の作用に注目し、臨床研究の結果を紹介した。
不眠を訴える人の有病率は高齢になるほど高く、男性より女性に顕著な傾向がある。内科的な疾患が不眠につながることもあるという。睡眠時間は加齢とともに減り、レム睡眠(浅い睡眠、脳が活動)とノンレム睡眠(深い睡眠)の間隔が短く、途中で目が覚めることも多くなる。
睡眠障害による弊害として、日中の眠気による作業能力の低下やQOLの低下、身体疾患への悪影響、不安障害やうつ病などの精神疾患、アルコール依存、薬物依存などのリスクの増大などがある。
現在使用されている睡眠薬は、中途覚醒を減らし、寝つきがよくなる一方、GABA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬)はレム睡眠を抑制するなど睡眠構造をゆがめている可能性があるほか、薬物依存、ふらつき、転倒などの副作用も指摘される。高齢者は薬物の代謝能力が弱く、認知機能が抑制されることもあるという。
不眠に有効な漢方薬は抑肝散、加味帰脾湯、酸棗仁湯などがある。抑肝散は怒りやイライラなどの精神症状に用いる方剤で、近年ではグルタミン酸系の代謝やセロトニン系に働きかける薬理作用が明らかになっている。
小曽根氏らは、抑肝散の効果を睡眠中の「CAP率」で検証した。断続的に観測されるCAPのバースト波(CAPサイクル)は、健常な睡眠でもノンレム睡眠中の30%程度は確認できるという。睡眠障害になると60〜80%程度の
CAP率となる。CAP率の高低は「よく寝れた」「眠れない」といった主観との相関性が高く、睡眠障害の適正評価ができるようになった。臨床試験では抑肝散には寝つきの早さや睡眠の深さに有意差はなかったが、CAP率は有意に下がり正常範囲となった。主観的眠気や疲労感、緊張感も改善傾向を示したという。
抑肝散のメリットとして睡眠の安定化、日中の不安改善、レム・ノンレム睡眠の抑制作用がない、離脱症状、筋弛緩作用がない、せん妄を助長しない、効果を自覚しずらいため依存が生じないなど。適する不眠症のケースとして神経症性不眠、高齢者やふらつき、転倒のリスクが高い症例、むずむず脚症候群や睡眠時無呼吸症候群に伴う不眠、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の離脱目的などをあげた。
(詳細は本紙533号に掲載)
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超高齢社会の新たなステージに突入
「健康寿命を延ばす」
日本漢方生薬製剤協会 第32回定期総会
日本漢方生薬製剤協会(芳井順一会長)は、5月16日(月)、第32回定期総会を開催。平成25年度事業報告および決算報告、平成26年度事業計画、予算案、新役員などが可決された。今年度は5か年計画でスタートした「中長期事業計画2012」の中間年にあたり、「課題達成に向け、活動の検証と各組織の一層の協力体制が重要となる」としている。
生薬原料の安定確保については、厚生労働省と農林水産省のもとで現在推進されている国内の生産者と実需者(同協会会員各社)とのマッチンクを今後も推進していく。同協会では、「日本のおよそ4人に1人が65歳以上という超高齢社会に突入し、介護を必要としない自立した生活ができる“健康寿命”を延ばすという、医療の新たなステージのニーズに応えるべく、事業計画の達成に向け推進する」と意欲を示している。
(詳細は本紙531号に掲載)
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夕張ツムラ、工場を拡大
第2期工事に着手
北海道の原料生薬の生産、加工、保管事業を行っている夕張ツムラ(原裕司社長)が、工場を拡大するための第2期工事に着手した。5月29日(木)には地鎮祭が行われ、ツムラ社長の加藤照和氏らも出席し、鍬入れを行った。
今回着工する工場の建築面積は8309平方メートル、延べ床面積は9389平方メートル。設計・施工は大成建設で、建設費用は約18億円。夕張ツムラは2009年7月に設立し、第1期工事は2010年に終了。現在の従業員数は、ツムラからの出向6人をあわせて29人となっている。
加藤社長は「先の震災で茨城工場が被災し、夕張の工事の着工が遅れたが、ようやくこぎつけた。北海道は日本最大の薬用植物の栽培生産地。今後も栽培面積の拡大を見込んでいる」と語り、原社長は「選別と検品の工程が加わり、医薬品としての生薬が完成する形が整うことになる。2016年を目途に60名の雇用をめざしている」と意欲を示した。
(詳細は本紙531号に掲載)
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「江戸の本草学と今日の和漢医学研究」
第31回和漢医薬学会学術大会(千葉)
来たる8月30日(土)〜31日(日)の2日間、幕張メッセ(千葉県)において第31回和漢医薬学会学術大会が開催される。会長は秋葉哲生氏(千葉大院、あきば伝統医学クリニック)、実行委員長は池上文雄氏(千葉大)がつとめる。
今大会は、同会設立の基本に立ち返り、次の3本の柱が立てられた。
1.和漢薬による疾病の予防・治療の有効性に関する科学的な基礎・臨床研究(とくに関連する領域の研究者との情報交換と協力)
2.和漢薬資源と品質管理に関する歴史的・科学的研究
3.和漢薬に関する次世代の基礎・臨床研究者の育成
特別講演では「わが国の江戸の本草学の歴史」と題して小曽戸洋(北里大)、「薬草栽培研究の最前線」と題して渡辺均(千葉大)、「最近一年間のISO問題の進展」と題して元雄良治(金沢医大)の3氏が講演する。シンポジウムは、「和漢薬による疾病の予防・治療の有効性と安全性に関する科学的な基礎・臨床研究シンポジウム」と「疼痛シンポジウム」の2題を予定。ほかに、学生による研究発表のセッション、学術賞など各賞の受賞講演、一般演題、ランチョンセミナー、薬剤師のための漢方講座、市民公開講座などが予定されている。
(詳細は本紙531号に掲載)
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アートの復権
第65回日本東洋医学会学術総会
「人間的な医学・医療を求めて」
第65回日本東洋医学会学術総会が6月27日(金)から3日間、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において開催される。テーマは「アートの復権——人間的な医療を求めて」。会頭をつとめる佐藤弘氏(新潟医療福祉大学教授/東京女子医科大学名誉教授)は、「『治るということ』『治すということ』」と題した会頭講演の中で、「薬効をより引き出し、病者自身が有する“治る力”を引き出すアプローチこそ、人間的な医学・医療を追求する立場では」と問いかける。今号では佐藤氏に今大会の見どころについてお話をうかがった。昨年4月より新潟でも教鞭をとるようになり、自然と土との対話の中で経験を重ねているという。(聞き手・編集部)
——佐藤先生に、今大会の見どころについてうかがいます。今回は、「アートの復権」という大見出しで臨まれましたね。
佐藤 「根拠に基づいた医療」を適用できる患者さんは、それほど多くはないという印象が以前からあり、エビデンス・ベースド・メディスン(EBM)というものに、疑問を持っていました。西洋医学的な診断がつかない、あるいは診断がついて根拠のある薬を投薬しても治療効果がなかったり、副作用で治療が継続できないことは、現実にはよくあります。漢方薬についても、一般的な第1選択薬が効かなかったり、必ずしも漢方のエビデンスにあてはまらない患者さんも多いのです。サイエンスは、その部分を十分に把握できないので、医師が自らの「感性」を暦くことで対応していく必要もあり、むしろ、その部分を重要視している人は多いのです。それを再認識しようというのが、今回のテーマです。本来漢方は、脈診や腹診といった「切診」技術だけでなく、心身一如——心とからだの関係性を重視し、人の気持ちを理解することの重要さが診断・治療に盛り込まれています。とくに治療においては、西洋医学的な治療ができなくても、東洋医学的治療法で効果を発揮できるケースがたくさんあります。
——今大会の特別演題プログラムは、スピリチュアルな内容に特化されていますね。
佐藤 われわれ治療者が、病気を治すことの意味を考えてみようという企画です。教育講演の演者の島薗進先生(上智大学神学部)は、科学をどう捉えていくかについて盛んに発言されている方です。私が北里研究所で1年間勉強した時、矢数道明先生は「漢方薬でよくなった患者さんを経験したのは、100人のうち2人か3人でしょうかね」といっておられました。病状の改善には、薬だけでなくさまざまな要因が絡んでいる、といっておられるのでしょう。大塚敬節先生も、「私の治す患者は全体の4分の1」といっておられたと、松田先生からうかがったことがあります。そこに共通するのは、患者さんが自分の治療を客観的に判断しようとする姿勢でしょう。私にも「先生に元気をもらいに来る」という患者さんがいます。治療者と患者が時空を共有する意味の大きさを感じています。医師が薬で治せる病気は、感染症の一部なのかもしれません。糖尿病や高血圧症に対する治療は、病態コントロールがほとんどです。感染症も、多くは自然に治ります。
——最近の報道では、「新薬の開発につながる」という記事が目立つように感じています。病気の発症メカニズムを解明することは重要だと思いますが、根本的な原因がわからないまま、症状を抑え込もうとする薬は、使い方が難しいケースがあるのではないでしょうか。
佐藤 症状があるから抑えればいいというものではないということは、徐々にわかってきました。もし、痛みを発症せざるを得ない状況を理解できたり解明できれば、そちらを変える方が本来のアプローチの仕方です。原爆や、直近では原発など、コントロール不能な状態を作り出す技術は、今後、どんどん出てくるかもしれません。われわれ医療の領域では、生命操作をどこまで容認するのか、という課題があります。議論が不十分なまま、おそらく技術はどんどん出現してきます。島薗先生は、内閣府総合科学技術会議「生命倫理専門調査会」のメンバーで、生命操作研究に対する批判的な立場のひとりです。たとえばES細胞は受精卵ですから、命をどう捉えるかが問われます。いまや生命操作研究は国家戦略になっていて、技術が進めば必ずそれを欲しがる人や、多大な利益を得る人が出てきます。はたしてそれでいいのか、技術的に可能なことをすべてやっていいのか、という議論になっていくのです。
——「経済・経済」で社会がまわっているので、それ以外の価値を見出しにくくなっているように感じます。そうした視点からも、「アートの復権」というテーマには大きな意味がありますね。
佐藤 私が新潟に赴任して、農業家や建築家との交流の中で感じるのは、自然が持っている秘めたエネルギーをよく認識して、仕事に生かしているということです。その農業家は、農薬も除草剤も使用しませんが、「肥料も必要ない。下手に肥料を使うから雑草が生える」といいます。「雑草も役に立つ」「無駄なものはない」という発想です。邪魔者という意識で見ていない。善悪による選別を考えないのです。害虫も「益虫がいるから害虫になる」といいます。彼は、「日照りが続いた年には、周囲の米が脱穀の際に割れてしまって収穫が落ちたのに、自分のところの米は、脱穀の際、割れなかった」といっていました。「土をきちんとつくって肥料を与えないでおくと、雑草はあまり生えないし、生えても勢いを持てない。米の収穫時期に、雑草が死んで自分の水分を出して、稲に移したのだろう」と考察していましたね。
——日本東洋医学会として、取り組んでおられる課題もいろいろあると思いますが、セッションの中で取り上げたものは何ですか?
佐藤 生薬資源の問題を取り上げ、引き続きシンポジウムを行います。特別セッションでは、新専門医制度について千田彰一先生がお話しします。JLOMの活動報告も行います。私が危惧するのは、漢方のエビデンスの構築が進んで、治療が画一化していくと、良さが失われていくのではないかと思うのです。医療の多様性、治療の多様性を維持する必要があります。近代医学が求めるのは、「誰でも同じ」という普遍性です。確かに治療の均質性を保証する上では重要かもしれませんが、それ以上の広がりはありません。漢方の良さは、ある先生はこの領域をカバーし、ある先生は別の領域をカバーするということがあります。それを残すことには、大きな意味があると考えています。個々人の能力は限られていますから、さまざまな領域をカバーする多様性のある医療が維持されることで、標準化の内容もまた少しずつ軸を動かしながら、広がりのある医療を行えるのではないか。その可能性を追求することを大事に考えています。
——重要なお話を聞かせてくださり、ありがとうございました。大会の成功をお祈りいたします。
(詳細は本紙532号増刊号に掲載)
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「漢方診療標準化プロジェクト」始動
漢方医療システムによる未病診断めざす
日本漢方の海外進出も視野、オールジャパン体制で
第1回シンポジウムを開催
4月19日(土)、北里大学薬学部コンベンションホールにおいて「漢方診療標準化プロジェクト」の第1回シンポジウムが開催され、100人あまりが参加した。このプロジェクトは、文部科学省主導「革新的イノベーション創出プログラム(COISTREAM)」の一環として実施され、森下仁丹、北里大学、富士通、大峰堂薬品工業が参画。自治医大、千葉大、東海大、富山大、福島県立医大の漢方診療部門、富士通総研などが連携している。
挨拶に立った杉本敬之プロジェクトリーダー(森下仁丹(株)研究開発本部本部長)は、「ICT(情報通信技術)を組み込んだ漢方医療システムを構築し、未病診断を行う」と発表。開発をめざすシステムは、四診(望聞問切)のロジック(論理)を形式化、可視化してICT化を実現し、「診断センサー」に組み込むというもの。今回は脈診、舌診、腹診の3つのセンサーを開発する。
シンポジウムでは、川鍋伊晃氏(北里大学東洋医学総合研究所医員)が診断センサーについて、石毛達也氏(同研究所医員)が暗黙知を形式知化するロジックについて、宓暁宇(ミイシャオイュ)氏(富士通)がICT化についてそれぞれ説明した。
川鍋氏は、「舌や腹膜、脈の所見を判定するセンサーを開発し、誰でも診断できるようにする」と述べた。石毛氏は、「診断所見の形式化には、正確かつ多量のデータが必要」と述べ、意見交換の必要性を強調した。宓氏は「IT技術により、多くの人が使えるようなシステムになるのでは」と述べた。
今後は、2018年までにセンサー開発とロジックの形式化を完了し、メンバー間の話し合いを重ねた後、データの集積を開始する。次回のシンポジウムは、今年11月か12月に開催される。
(詳細は本紙530号に掲載)
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「アートの復権」テーマに
第65回日本東洋医学会学術総会
来る6月27日(金)から29日(日)の3日間、東京国際フォーラム(東京・有楽町)において、第65回日本東洋医学会学術総会が開催される。
今回のテーマは「アートの復権」だ。会頭をつとめる佐藤弘氏(東京女子医大名誉教授)は、「現在の東洋医学界の動きをみると、Evidenced Based Medicine(EBM)が最大の課題であるかのようだ。確かに科学化は必要だが、それでよいのか? 漢方医学も近代医学と同じ轍を踏むことになりはしないか?」と問いかける。
診療においては「必ずしも文字化できるものばかりではない」と佐藤氏。経験と工夫を重ねることでつかむことのできる「自分なりの感触」があるという。
今大会は、「非文字」の存在を感じ取り、サイエンス(学)と対比されるアート(術)の重要性を再認識すべく、臨床医学の基本に立ち返るプログラムを企画したとのこと。難渋した症例に着目したシンポジウムも取り上げられた。ベーシックセミナーでは、各科の標準的な漢方治療の2日間集中講義が行われる。
「ベテランの先生方は、文字化しにくい、あるいはしていないアートをたくさんお持ちだと思う。学会で、是非とも引き継いでいただきたい」と参加を呼びかけている。
(本紙530号に掲載)
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麻黄湯・インフルエンザシンポジウム
「急性感染症の真髄を探る」
3月23日(日)に日本経済大学(東京渋谷)において、サイエンス漢方処方研究会(井齋偉矢理事長)主催「麻黄湯・インフルエンザシンポジウム」が開催され、約100人が参集し、議論を展開した。
当日は鍋島茂樹氏(福岡大学病院)が、インフルエンザ患者28人に対する麻黄湯、オセルタミビル(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)のランダム化比較試験を紹介。麻黄湯が「オートファジー機能」を回復・強化してウイルスを排除している可能性を示唆した。
山原條二氏(天然薬用資源開発機構)は、麻黄配合方剤の体温上昇作用を解析した基礎実験を紹介。交感神経β受容体アゴニストの直腸温上昇作用との関係を示した。
加島雅之氏(熊本赤十字病院)は『傷寒論』中の「傷寒」の病態解釈には、現在ほとんど顧みられていない「可不可篇」に重要な鍵があることや、難治例に対するサルベージ療法として確立した可能性があることを論じた。
岩田健太郎氏(神戸大病院感染症内科)は、「証」もインフルエンザも現象であり、言葉は現象を十分に表現できないことや、ウイルス自体を表現することは不能なことを、構造主義的視点から論じた。
黒木春郎氏(外房こどもクリニック)は、小児科領域のインフルエンザ治療を紹介した。
(本紙529号に掲載)
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大学医学部の漢方教育、年々充実
カンポウ メディカル シンポジウム2014
「大学卒前教育から卒後教育までの一貫性ある漢方医学教育を目指して」をテーマに2001年から毎年開催されている「カンポウメディカルシンポジウム」(主催 : ツムラ、日経メディカル開発)が2月1日(土)、京王プラザホテル「コンコードボールルーム」において開催され、900名を超える医師らが参集し盛会となった。
14回目を迎える今回、ツムラの加藤照和社長は「大学医学部の漢方教育も年々充実した」と謝辞を述べた。
基調講演では長谷川仁志氏(秋田大学・院医学教育講座教授)が、どの専門科に進んでも大切となる「総合的診療能力」に鑑み、秋田大学の「OSCE30ステーション」の取り組みを紹介。シンポジウム(卒前教育4題、卒後教育3題)では、大学での臨床実習や臨床指定研修病院での取り組み、チーム医療に向けた看護学領域での取り組みほか、漢方講義を受けた側の指導者の立場からの講演などが行われた。
教育講演では、文部科学省の袖山禎之氏(高等教育局教育課課長)が医学教育の現状と将来について、厚生労働省の田村真一氏(医政局医事課医師臨床研修推進室室長)が、2015年からの医師臨床研修制度の見直しについてそれぞれ講演した。
(本紙529号に掲載)
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いまこそ漢方薬の副作用を考える
〜その対処法と現状を中心に〜
第124回漢方医学フォーラム
昨年の8月9日(水)に日本記者クラブ(千代田区)で聞かれたメディア向け講演会「第124回漢方医学フォーラム」は、赤瀬朋秀氏(日本経済大学教授)が講演。同氏は卒後11年にわたり薬剤師として大学病院に勤務したのち、病院経営を学ぶために大学院を修了しMBAも取得した。修了後、神奈川県内の病院の再建計画を実施。その後も同県内の病院の設立に5年間たずさわった。赤瀬氏は「薬を上手に使えば、病院の財務に貢献できる」と述べ、医薬品情報の重要性や漢方薬の副作用、薬物相互作用などの有害事象についても論じた。
「日本語の『副作用』は、 side effect (主作用に付随する作用)とadverse drug reaction (有害かつ予期せぬ反応)を一緒くたにしているのでわかりにくい」と赤瀬氏。有害事象を未然に防ぐには、両者を切り分け、問題を明確化する必要がある。副作用による有害事象が多発する原因の一つに、薬の使用量の多さがあるという。高齢化が進む中、年齢が上がるほど薬の種類が増える傾向があり、転倒頻度との相関もあるため、寝たきりが誘発されている可能性もある。
漢方製剤の副作用については、「薬理作用が完全に解明されていないため、未知の作用が出現する可能性がある一方、副作用の初期症状や対症療法などの情報は整備されつつある」と説明。「なぜこれだけ多くの微量成分が、生体内で霧散せずにシステムとして作用するのかは不明。生体内での相互作用の解明が、漢方薬の作用解明の鍵となる」と述べ、近年の取り組みの例を紹介した。
副作用を未然に防ぐには、集団評価が重要になる。2010〜2011年を対象にした赤瀬氏の調査では、副作用のほとんどは間質性肺炎か肝機能障害で、原因は西洋薬との併用や高齢者の増加、使用量の増加などが推測されている。
甘草(主成分グリチルリチン)の過剰、長期服用により発症した偽アルドステロン症については、診療録や処方箋をもとに 1870名(男女比3対7、平均年齢55.3プラスマイナス17.5歳、平均摂取量1.94プラスマイナス0.97日、平均投与期間168.3日)を調査したところ、偽アルドステロン症5例、発現頻度0.3%で、他の甘草抽出薬も同程度だった。企業が実施した他の調査でも同様の頻度だった。
1996年3月に起こった小柴胡湯の副作用による間質性肺炎の新聞報道(「漢方薬副作用で 死者10人」)の衝撃は大きく、当時の厚生省は、緊急安全性情報を発信。翌年には佐藤篤彦氏(京都予防医学センター)らが初の全国調査を実施した。佐藤氏らは、突発性間質性肺炎(IIP)を基礎疾患に持つ患者に小柴胡湯を投与するとサイトカインネットワークが乱れ、アレルギー反応を乗り越えて肺の線維化を起こすサイトカインの発現調節が生じることをつきとめ、『日本東洋医学雑誌』 Vol.49, 1998に掲載された。 2000年には和漢医薬学会がC型慢性肝炎患者に対する同湯投与ガイドラインを発表した。その後、咳嗽、呼吸困難、発熱などの特徴的な初期症状が高頻度に出現することや、胸部レントゲンで確実に診断がつくこと、発症から服薬中止までの期間が14日以上の患者に死亡例が集中していたことなどが判明し、発症後の措置が迅速であれば完治することが明らかになった。発症頻度は0.1%未満で50〜70歳の年齢層に多く、投与1〜5か月後に発症しやすいこともわかった。
「対処法がわかっていれば、患者さんに自信をもって『服用か続けても大丈夫』といえた」と赤瀬氏。当時を振り返り、無念の胸中を吐露しながら、副作用情報の重要性と、正しい情報を共有する必要性を強調した。
(詳細は本紙529号に掲載)
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「生薬鑑別」、真の実力を要求
日本漢方生薬ソムリエ協会 第1回認定資格試験&認定証書授与式
日本漢方生薬ソムリエ協会(御影雅幸理事長)が主催する「漢方生薬ソムリエ」認定資格制度は、業界全体の活性化を図るべく、高度で広範な知識を持つ人材を養成し、和漢薬による高度な治療の継続を可能にすることを目指している。昨年の第30回和漢医薬学会学術大会(金沢大)の会期中、同会場内において、第1回認定資格試験と合格者への認定証書授与式が行われた。
同協会副理事長の安井廣迪氏は冒頭、「本草学、古典生薬学を教授できる研究者が薬学部、薬科大学の中にほとんどいなくなった」と述べ、生薬を鑑別できる人材の枯渇に対する危機感から御影氏に相談し、昨年2月9日にソムリエ制度立ち上げの方向性が決定したことを紹介。4月29日に準備委員会を設立し、5月15 日に規則を制定、9月1日に理事会開催の運びとなった。
御影氏は、「臨床医(安井氏)の側から、われわれ薬剤師に『もっとしっかりしろ。生薬の品質はいったいどうなっているんだ』という命題を突きつけられた。使命感から理事長を引き受けざるを得なかった」と語った が、運営には意欲的で、「ワインのソムリエは、人々の前でテイスティングし、産地や年代、ブドウの品質などを解説、鑑定、評価する。生薬は色やにおい、味だけでなく、たとえば茯苓は叩いて音で鑑別するなど、五感をフルに使うことが求められ、ワイン以上に難しいはず」と述べ、生薬に通暁する人材の育成に前向きな姿勢を示した。
認定試験は、今回を皮切りに毎年1回実施し、初級、中級、上級を認定する。同協会ではテキストと問題集の作成、各種勉強会の開催、国内外の関連施設の見学などを実施する予定で、事務局は当面、金沢大学内に設置される。運営費用は賛助会員の支援でまかなわれる。
会場では、第一回合格者で賛助企業から推奨された4名の方々(栃本天海堂・宮嶋雅也、小太郎漢方製薬・吉田雅昭、クラシエ製薬・土田貴志、ウチダ和漢薬・浅間宏志の各氏)が、下記のように「いい生薬とは」について5分間のスピーチを行った。
▽栃本天海堂・宮嶋雅也氏 : made in Japanを謳える高品質の生薬を、世界に供給できる生薬工場の設立を提案。江戸時代を通じて国内需要を賄ってきた日本の生薬栽培は、中国の低価格に圧され衰退した。復活のカギは農業。売り先の確保、世界の需要国に向け、出荷できる体制を整えるべき。特にヨーロッパは安全基準が厳格。「いい生薬」とは、臨床経験から導かれた薬能の期待に応えられる生薬。それを供給しなければならない。
▽小太郎漢方製薬・吉田雅昭氏 : 生薬資源の安定確保を目的とした国内栽培は、機械化による効率化や乾燥、修治などの技術の継承など、課題が山積しているが、避けて通れない。今日の生薬使用量の多さは有史以来。予測し得ない状況に対応する局面もあり、既存の知識とともに、確かな判断力が求められる。「いい生薬」はそれがなされた時に生み出される。
▽クラシエ製薬・土田貴志氏 : 生薬の評価は、経験による鑑別のほかに、科学的評価法が進化した。数値は必ずしも生薬の効果の本質をあらわすものではなく、使用実績も評価することで評価法をさらに進化させる。その繰り返しが「いい生薬」を生み出す。生薬価格の高騰や異常気象、経済発展に伴う産地環境の変化、農業の就労人口の減少や高齢化、野生品の減少など課題が山積している中、生薬業界は規模が小さく、対応し切れない課題も多い。産学官の協力関係や使用者の協力と理解など、オールジャパン体制が必要。
▽ウチダ和漢薬・浅間宏志氏 : 30〜40年前は40分の1程度だった生薬生産金額は、現在1100億円まで規模が増大。中国からの輸入生薬は重要であり、両国間の良好な関係を継続的に構築していく必要がある。国際標準の問題もあり、これまでのように商社的に集めるのではなく、中国国内においても伝統的手法に先端技術を取り入れ、栽培法や評価の手法を新たに生み出していく必要がある。中国に依存するリスクの大きさは周知の通り。日本国内の栽培には、産学官をあげて取り組まなくてはならない。「いい生薬」とは、経験的鑑別条件を十分に満たし、医薬品としてのGNP管理のもとで規格基準に適合し、利用者の品質要求に応え、トレーサビリティを確実に備えている生薬。
次回試験日(初級)は今年の第31回和漢医薬学会学術大会(幕張メッセ国際会議場)会期前日の8月29日(金)14時〜16時。試験会場は未定(関東地方)。中級試験は平成28 年に実施される予定。
(詳細は本紙529号に掲載)
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「漢方診療標準化プロジェクト」
第1回シンポジウム開催 北里大で
来る4月19日(土)、北里大学薬学部コンベンションホール(東京都港区白金)において「漢方診療標準化プロジェクト」の第1回シンポジウムが開催される。文部科学省主導COI STREAM(革新的イノベーション創出プログラム)の一環として実施されるもので、北里大、自治医大、千葉大、東海大、富山大、福島県立医大の漢方診療部門と富士通(株)、(株)富士通総研が共同で実践。主催者は「日本の伝統医療である漢方診療の可視化/標準化を、漢方界全体で議論しながら進めていきたい」として、広く参加を呼びかけている。
【日時】4月19日(土)15時〜17時半(受付14時半〜)
【参加費】無料(要事前申込)定員300名
【申込み】下記メールアドレスに①氏名②所属③参加人数を記入して送信(個人情報は第三者に提供、開示されません)
【問合せ】北里大学東洋医学総合研究所EBMセンター tel 03-5791-6346
E-mail:omrc-ebm@insti.kitasato-u.ac.jp
【内容】①挨拶(花輪壽彦・北里大学東洋医学総合研究所所長)②概要説明(小田口浩・北里大学東洋医学総合研究所副所長)③センサー開発(川鍋伊晃・北里大学東洋医学総合研究所医員)④ロジック解明(石毛達也・北里大学東洋医学総合研究所医員)⑤ICTの貢献(宓暁宇・富士通(株)⑥意見交換
URL: http://www.kitasato-u.ac.jp/toui-ken/center/news/download/symposium20140419.pdf
※文部科学省が主導する「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」は、「10年後の社会像を見据えたビジョン主導型の研究開発プログラム」として既存の概念を打破し、これまでにない革新的なイノベーションを創出するプラットフォームの整備を目的としている。産学官の研究チームから190件の提案があり、昨年10月30日に12件を採択。将来の拠点候補(トライアル拠点)14件も採択した。
このうち『安全高品質な漢方ICTを用いた未病制御システムの研究開発』(参画機関:森下仁丹(株)、北里大学、富士通(株)、大峰堂薬品工業(株)がトライアル拠点として採択された。今シンポジウムは同プロジェクトの一環として開かれる。
弊紙530号にて詳報
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