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「親試実験」「私の漢方リポート」
第48回日本漢方交流会全国学術大会
11月22日(日)、23日(月)(祝)の2日間、広島大学広仁会館(広島大学医学部霞キャンパス内)において、第48回日本漢方交流会全国学術総会が開催された。会頭は山崎正寿氏(漢方京口門診療所)、実行委員長を鉄村努氏(テツムラ漢方薬局)がつとめた。
テーマは吉益東洞を顕彰する「親試実験」。特別講演、会員発表とも、漢方医学に通暁した研究が多数報告された。
(551号に掲載)
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夕張ツムラの生薬工場が本格稼働
第2期工事エリアが竣工
28品目の栽培・製品化をめざす
平成26年5月に着工した夕張ツムラ(原裕司社長)の生薬調製棟の第2期工事が8月に完了、9月に医薬品GMPのバリデーション(*)を完了させ、10月から本格稼働している。
総工費18億円を投じた今回の建設工事では、GMPに準拠した生薬製品倉庫1000t分と、生薬の機械選別および目視選別、検品などを行う製造エリアほか、会議室や応接室、食堂などを配備した事務エリアを増設。すでに稼働している原料倉庫1000t分とあわせて2000tの原料生薬を保管し、調製加工できる生薬製造工場となった。
(*)バリデーション : 構造設備や手順、工程が期待される結果を与えることを検証、文書化することで、品質に適合する製品を恒常的に製造できることを確認する。GMP省令による規定。
(詳細は本紙551号に掲載)
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西洋医学の土台でこそ、東洋医学は力を発揮
「第18回市民公開漢方セミナー」
▽漢方の治療を受けるにはどうすればいい?
▽漢方薬とはどんな特徴がある?
▽健康を守るライフスタイルは?
といった「漢方の基礎知識」を学ぶ「市民公開漢方セミナー」が10月26日(月)、文京シビックホール(東京都文京区)で開催された。日本漢方生薬製剤協会(日漢協)主催、18回目を迎えた今セミナーは、過去最高の350名を超す聴衆が集まり、盛況となった。
講師は、かねてから「西洋医学の土台でこそ、東洋医学は力を発揮する」と提唱している伊藤隆氏(東京女子医科大学附属東洋医学研究所教授、日本東洋医学会常務理事)がつとめた。
今回のテーマは「漢方の得意な病気」だ。伊藤氏は漢方の得意な領域として次の2つを提示した。
①気血を補うことでよくなる病気
②血流改善でよくなる病気
①は、しびれ、がん、虚労、など。
②は、瘀血、冷え症、月経・更年期障害、脳血管障害など。
講演では、漢方治療の基本的概念である気血水について概説し、気虚、血虚を補う治療法や、血流の滞り(瘀血)の改善による治療法を、具体的な症例を交えて紹介した。
(詳細は本紙551号に掲載)
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「きぐすりの薫る漢方治療への回帰」めざす
第25回漢方治療研究会で
さる10月4日(日)、慶應義塾大学北里講堂(東京都新宿区、北里記念醫学図書館2F)において、東亜医学協会(花輪壽彦理事長、矢数圭堂会長)が主催する第25回漢方治療研究会が開催された。今回の会頭をつとめた渡辺賢治氏(慶大)は、開会挨拶の中で、「この会場は、第1回日本東洋医学会が開催された会場」と紹介。昭和12年以来の歴史を刻む同館と、漢方医学のこれまでの歩みを振り返り、「当初、漢方湯液治療研究会としてスタートしたこの会は、漢方医学の考え方に基づいた治療にこだわり、意見を交わしている」と述べ、毎年重ねている同研究会の意義に言及した。
◆真の漢方治療が展開する現場作りの方策を
今回のテーマは「きぐすりの薫る漢方治療への回帰」だ。渡辺氏は、「われわれは当初、現代医療の中に漢方医学を根づかせ、裾野を広げることを目指してきた。現在は、医師の9割が漢方薬を使用するようになり、目標は達成したといえるかもしれない。いまはむしろ、安直な用い方の是正や、生薬原料の品質や安定量の確保、国際化への対応など、新たな課題が目の前にある」と述べ、真の漢方治療が展開する医療現場への「回帰」をうながす方策を検討する必要性に触れた。
(詳細は550号に掲載)
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「安全・高品質な漢方ICTを用いた未病制御システム」が進捗
北里COIシンポジウム
北里大学東洋医学総合研究所(東京都港区)は10月31日(土)、日本科学未来館(東京都江東区)にて北里COIシンポジウムを開催。「漢方診療標準化プロジェクト」の進捗状況を発表した。今年度から北海道大学のサテライト機関(文部科学省「革新的イノベーション創出プログラム」)として正式に採択され、「安全・高品質な漢方ICTを用いた未病制御システムの研究開発」も新たなスタートを切った。
◆「多様性と標準化」をどう考えるか
3回目となる今回は、藤井清孝氏(北里研究所理事長)が挨拶に立ち、「10年後の社会像を見据えたビジョン主導のプログラムに期待する」と述べ、開発研究を激励した。
基調講演では、同研究所の小曽戸洋氏が「漢方医学の多様性」と題して講演。「すべては一(無)から生まれ、果てしなく多様化(有)する」という「存在の哲学」を余すことなく生かし、複雑系の生薬を用いて疾患治療を進化(=多様化)させてきた漢方医学を標準化することへの熟考を促した。
『日本伝統医学テキスト』の作成に携わった東海大学の新井信氏は、作成の意義に言及。展示会場にて同テキストを公開した。
(詳細は本紙550号に掲載)
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ノーベル生理学・医学賞受賞記念特別講演を挙行
来年3月、日本薬学会第136年会で
◆大村智氏、パシフィコ横浜で講演
日本薬学会(太田茂会頭)は、10月5日(月)に大村智氏(北里大学特別栄誉教授)のノーベル生理学・医学賞受賞が決定したことを受け、来年3月に開催される第136年会(パシフィコ横浜)の会期中に、同会の名誉会員でもある大村氏の受賞記念特別講演を挙行することを決めた。今回の年会の組織委員長は北里大学薬学部の伊藤智夫氏がつとめていた。
日時は平成28年3月29日(火)11時〜12時。同会場内メインホール(会議棟1階)にて開催される。
なお、今年度のノーベル生理学・医学賞の授賞式は、12月10日(金)、ストックホルムのコンサートホールにて行われる。
◆予約参加は今月26日から受付開始
同年会では現在、共催セミナー(ランチョン)、一般学術発表、展示、広告等の受付を行っている。
共催セミナーは当初より1か月延長し、11月30日(月)まで。予約参加は11月26日(木)から受け付けを開始する。学部4年生以下と高校生は無料だ。
年会組織委員長の伊藤氏は、「未来を見据えた講演・シンポジウムを企画している」として参加を呼びかけている。
(詳細は本紙550号に掲載)
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政策目標「平成30年度までに国内生産量を2倍に」
薬用作物の産地化に向けたブロック会議
農林水産省、厚生労働省、日本漢方生薬製剤協会(日漢協)共催「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」が、関東ブロックを皮切りに、今年も全国8ブロックで開催された。9月8日(火)にさいたま新都心合同庁舎の会議室で開催された関東ブロック会議では、生産者と実需者のマッチンクを推進するようになった経緯を説明。「来年度はさらにコマを進め、相談窓口の設置や、栽培技術指導体制を整備する」として、平成28年度概算要求に、産地化支援や技術開発支援、加工流通の高度化支援などを盛り込んだことを紹介した。
農水省では、薬用作物の産地形成を加速化させるための支援策として、栽培実証圃場の設置や、事前相談・マッチンク窓口の設置、栽培技術指導体制の確立などに取り組む事業者を公募するほか、薬用作物向け病害虫防除体系の確立などをめざす。政策目標として「平成30年度までに、国内生産量を2倍に拡大する」としている。
厚労省では、漢方薬メーカー側の需要情報の取りまとめと生産者への情報提供、薬用作物の新たな育種、栽培、生産技術に関する研究を、引き続き推進する。
日漢協は、マッチンク事業を開始した平成25年度以降の2年間で、27団体・個人との折衝を成立させたことを報告した。
今後の日程は、全国8ブロックの説明会を10月22日(木)まで開催し、11月中旬をめどに、各都道府県担当部局が要望票を回収。11月30日(月)までに日漢協に受け渡す。日漢協会員各社は同票の内容を検討し、来年1月18日(月)頃までに、折衝先を選定する。
今年度の会議では、農水省が平成28年度概算要求に盛り込んだ「薬用作物に活用できる支援制度」を紹介。同省の支援制度の主な内容は次の通り。
◆産地化支援……栽培技術の実証と技術力強化に必要な農機改良、農薬の適用拡大に必要な試験等の実施および多様な防除技術を活用した病害虫防除体制の確立、IPM(総合的病害虫管理)の全国的な普及定着による環境に配慮した病害虫管理体制の構築、水田活用の直接支払交付金、森林・林業再生基盤づくり交付金および森林・山村多面的機能発揮対策交付金など
◆技術開発支援……薬用作物の国内生産拡大に向けた技術の開発
◆加工および流通の高度化……薬用作物の加工・乾燥調製等に必要な共同利用施設の整備等に対する支援、薬用作物を活用した6次産業化の取り組み支援
◆耕作放棄地対策……耕作放棄地再生利用緊急対策交付金
(詳細は549号に掲載)
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「天アカ研究者の交流と絆」深める2日間
天然薬物研究方法論アカデミー第18回大子シンポジウム開催
「天アカ」の呼称で親しまれ、夜を徹して議論する研究会として知られている「天然薬物研究方法論アカデミー」が主催する第18回シンポジウムが8月7日(金)、8日(土)の両日、茨城県大子町の東京理科大学大子研修センターで聞かれた。大会長は堀江俊治氏(城西国際大学薬学部薬理学研究室教授)、実行委員長は磯濱洋一郎氏(東京理科大学薬学部応用薬理学研究室教授)がつとめ、夜明け寸前まで熱い論議が交わされた。
大会長の堀江氏は、「天然薬物研究の壁と流儀」と題して講演。「天然薬物の薬効の評価には、多成分系で多薬理作用であるがゆえの困難があり、研究者の頭を悩ませる共通の壁がある」と指摘し、医学部との共同研究の必要性を強調。「基礎研究では、漢方薬のユニークな作用メカニズムを解明しつつある。その成果をもとに、漢方薬が現代医療の枠組みの中で位置付けられれば、医療の質を格段に向上させることができる」と述べ、今後に期待した。
その後、学生ら若手研究者が発表。バーベキューでの交流会や温泉に入浴後、セッションは再開され、フリーディスカッションは深夜におよんだ。
2日目のセッションでは、「天然薬物研究の流儀」をテーマに若手研究者が発表。ランチョンセミナーでは、杉山清氏(星薬大)が、「天アカ研究の方向性を考える」と題して講演。「天アカとは、漢方薬の特徴を西洋医学の言葉で論理的に説明する方法論を考え、健康維持に役立てる」と定義した。
閉会式では、次期会長をつとめる田中久貴氏(札幌市・北樹会病院内科)が挨拶。次回開催への協力を呼びかけた。
(詳細は本紙549号に掲載)
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生薬栽培の適正規範を確立するために
「日本のGACPを考える」
日本生薬学会第62回年会シンポジウムで
日本生薬学会第62回年会が9月11日(金)、12日(土)の2日間、長良川国際会議場(岐阜市)において開催され、会長講演、特別講演、受賞講演、シンポジウムなどが行われた。実行委員長は大山雅義氏(岐阜薬大)。期間中、約630名が参集した。
テーマを「日本のGACPを考える」としたシンポジウムでは、国内各地で薬草栽培に関心が向けられている現況に鑑み、安全で安心な生薬供給に欠かせないGACPの運用について5人の演者がそれぞれの立場から意見を述べた。座長は酒井英二氏(岐阜薬大・薬草園)がつとめた。
座長の酒井氏は、「中国では中薬材の認証の設定がかなり進んでいるのに、日本ではGACP自体の認知度が低く、GACPに基づいて生産されたものとそうでないものを区別する方法も明確でない」と述べ、日本の出遅れを指摘するとともに、昨今スタートしたばかりの岐阜市の薬用作物栽培を紹介。同市農林部は、耕作放棄水田での薬草栽培を推進するために、まずアンケート調査を実施。関心のある生産者に向けて講演会を開催し、栽培を実行できる生産者を絞り込み、「岐阜市薬用作物栽培協議会」を発足させた。東京生薬協会との連携協定を締結し、カワラヨモギの幼苗を長良川河川敷で採取したほか、同協会との協定に基づき、医薬基盤研薬用植物資源研究センターから種苗を譲り受けて、今年4月から市内2か所で栽培に着手したという。
佐々木陽平氏(金沢大分子生薬、薬用植物園)は、自給率向上への期待が広がっている生薬の国内栽培に対する自校の取り組みを紹介した。同校の薬用植物園には、シャクヤク、トウキ、ジオウなどが数百株植えられ、観察から収穫、加工までの一連の作業ができるようになっている。そこで佐々木氏は、教育と社会貢献の双方に良質な効果を創出すべく、「交流事業」を開始した。種苗の提供ほか、学生が実習で習得した定植や収穫の技術を地域に伝えるというもので、同事業を通して、生産者の労力を支援し、局方基準のクリアなど、収入を得る体制が整うまでの初期の段階を補完する。他学部に広げる計画もあるという。「長期的な取り組みではあるが、石川県に適した栽培・加工技術を確立する過程で、技術開発やエビデンスが蓄積できれば」と抱負を語った。
浅間宏志氏(日漢協)は、「漢方製剤、生薬製剤の最終的な品質は、原料生薬の品質に左右される」と述べ、安全で高品質な生薬を栽培するためのガイドラインの重要性を強調。昨年10月に『日漢協版GACP——薬用作物の栽培・採取と加工に関する手引き』を発行したことを紹介した。内容は、「目的」「定義」「栽培」「採取」「加工」「従事者の健康と安全」「必要な知識」「自己点検」などで構成されている。同氏は、「GACPは、生薬および漢方生薬製剤の品質を保証するための重要な指標となる」と位置づけた。
川原信央氏(医薬基盤健康栄養研・薬用植物資源研究センター)は、同センターが継続刊行している『薬用植物——栽培と品質評価』(Part 1〜12)に、栽培情報の経年変化や、登録農薬の記載がないなどの課題があることを指摘。「日本版GACPとなるにはさらなる充実が必要」と述べ、取り組みを進めているという。同氏は、「山積した課題の解決には、各自治体間や、関連業界間の相互連携が必須。その橋渡しに積極的に取り組む」と今後への抱負を通べた。
足立教好氏(農水省生産局)氏は、薬用作物特有の事情を解説した。現在、国内ではセンキュウ、トウキなど約90
種の薬用作物が栽培され、国産化の要望は高いが、一般的な農作物のような取引市場がなく、販売先は漢方薬メーカーに限られている。医薬品という特性から「日本薬局方」の規格を満たすというしばりもあり、安定的な生産に至っていない。同氏は「栽培技術の確立や優良種苗の安定供給、体制の整備が今後の課題」とした。
(詳細は本紙549号に掲載)
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第43回日本小児東洋医学会学術集会開催
第43回日本小児東洋医学会学術集会が9月19日(土)に主婦会館プラザエフ(東京都新宿区四ツ谷)、同20日(日)はステーションコンファレンス東京サピアホール(東京駅北口)にて開催された。テーマは「小児の心身発達と漢方——小児の心身発達を促し体質改善をはかる漢方・気血水のアプローチ」。会頭は川嶋浩一郎氏(つちうら東口クリニック)がつとめた。
2日間にわたった学術集会の初日には、黒木春郎氏(外房こどもクリニック)が小児疾患に頻用する処方の運用の仕方を講義。「不安を払拭し、明日から処方できるような漢方薬を紹介する」と述べ、麻黄湯、五苓散、小建中湯の3処方と関連処方を解説した。「小児の証の特徴は、ほぼ“実”で“陽”(熱があっても活気があり、水分を取れる状態)」と黒木氏。臨床での重要な点は「禁忌を踏まないこと」として、「“陰”“虚”(顔色が青白く、気持ち悪がり、水分摂取が乏しい状態)を見極めておけば、禁忌を踏むことはない」と語った。漢方薬の飲ませ方については、「黒蜜とココアがよく合う」ほか、炭酸飲料やアイスクリーム、野菜ジュース、スポーツドリンク(電解質補給飲料)なども提示し「その子に合った方法をとったらよい」とのこと。ただし「本来はそのまま内服するもの。その努力が原則」とクギをさした。
(詳細は549号に掲載)
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和漢薬の作用機序と臨床効果を伝えるために
第32回和漢医薬学会学術大会
「和漢薬の作用機序・臨床効果」をテーマに富山国際会議場で開催された第32回和漢医薬学会学術大会は約570人が参集し、盛会となった。今号では、同大会で開催されたシンポジウム「神経精神疾患の緩和・治療に向けた漢方治療学的アプローチ」の内容を詳報しよう。座長は岩崎克典氏(福岡大)と松本欣三氏(富山大)。松本氏は演者もつとめた。座長の岩崎氏は、「漢方薬が広く適正かつ有効に利用されることが重要と考え、基礎と臨床の橋渡しとなる科学的エビデンスを構築している演者にお願いした」と紹介。基礎解析の結果と臨床効果との照合に取り組んだ4演者が成果を発表した。
「精神神経疾患治療における抑肝散の有用性」の演題で登場した宮岡剛氏(島根大学精神医学講座)は「臨床で抑肝散を用いることが増えている」「中でも人格障害に対する有効性が高い」と報告。精神神経疾患では、薬を服用せずに溜め込み、何かのきっかけで大量服薬して救急搬送されるケースが多々あるとのことで、抑肝散の服用後に改善がみられることが多いという。「漢方エキス剤は大量服薬しにくいという効果もある」とも話し、薬物依存や衝動による事故が生じにくい性質の医薬品であることも紹介した。「小児の精神科領域では、向精神薬の投薬状況に課題があることが指摘されており、抑肝散の有用性が評価されている」とも語った。
江頭伸昭氏(九州大学病院薬剤部)は、脳梗塞後に記銘力低下、夜間徘徊、幻覚、妄想、興奮、粗暴行為などがみられた80代男性が、抑肝散投与後1か月で易怒性、興奮が消失した症例も示し、同方の有用性と科学的根拠の構築の重要性を強調した。
松本欣三氏(富山大学和漢薬研究所)は、学童の3〜5%に認められるといわれているAD/HD(注意欠陥多動性障害。不注意、多動、衝動性を主症状とする)の薬物治療のエビデンスを検証するためのモデルマウスを開発した。離乳早期から隔離飼育したマウスの異常行動と薬物応答性に、AD/HDと類似する点があることに着目。発症に関わる神経機構を薬理学的に検証したところ、同マウスの注意様行動と社会性の低下は、AD/HD治療薬のMPH(ドパミン取込阻害薬メチルフェニデート)で改善。恐怖記憶による行動障害はコリンエステラーゼ阻害薬THAで改善され、少なくとも中枢ドパミン神経系およびコリン神経系の機能障害が関与している可能性が示唆された。これらの医薬品には、幻覚や薬物依存などの有害作用があり、学童への投薬には注意を要するため、同氏らは、精神症状に用いられる漢方薬を中心に効果を検討したところ、酸棗仁湯、抑肝散および甘麦大棗湯に、不注意様行動を含む一部の行動異常の改善作用を認めた。桂枝湯は無効だった。「こうした研究は、漢方薬の応用に科学的根拠を与えるもの」と述べた。
永井隆之氏(北里大学北里生命科学研究所和漢薬物学研究室)は、香蘇散(香附子、陳皮、蘇葉、灸甘草、生姜)を経口投与した環境ストレス誘発うつ様モデルマウス(強制水泳と3種類の慢性緩和ストレスを負荷)の視床下部膜画分のプロテオーム解析(ターゲットタンパク質の探索)と、マウスおよびヒト血清のプロテオーム解析(指標バイオマーカーの探索)の結果を紹介した。今回の実験では、①環境ストレス誘発うつ様モデルマウス(以下「ストレス負荷マウス」)に香蘇散料煎剤を与えた群、②ストレス未負荷群、③ストレス負荷マウスに水のみ与えた群、の3群に強制水泳させて、泳動開始までの時間を計測した。結果は、①と②の泳動間始までの時間はほぼ同じ、③は、泳動までに①と②の倍以上の時間を要した。そこで、ストレス負荷マウスの視床下部から抽出したたんぱく質を解析したところ、ストレス負荷で発現量が変化し、香蘇散料煎剤の摂取後に発現量が回復したスポットを7個確認。6種類のたんぱく質を同定したという。
(詳細は548号に掲載)
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「漢方の得意な病気」をテーマに市民講座
日本漢方生薬製剤協会主催
「第18回市民公開漢方セミナー」
来たる10月26日(月)、日本漢方生薬製剤協会(加藤照和会長)主催「第18回市民公開漢方セミナー」が文京区シビックホール(東京都文京区)において開催される。講師は伊藤隆氏(東京女子医大教授)がつとめる。
テーマは「漢方の得意な病気」。当日は「漢方治療を受けるには?」「特徴は?」「得意とする病気は?」などの疑問に答える。健康を守るライフスタイルにも言及する。
講師の伊藤氏は、昭和56年に千葉大を卒業後、富山医薬大(現富山大)附属病院和漢診療部に入局。平成13年から鹿島労災病院メンタルヘルス・和漢診療センターにて、東洋医学(漢方と鍼灸)と西洋医学を融合した診療を実践し、平成26年4月に現職。「総合診療の先駆け」を自負しているという。
開催概要は次の通り。
参加費無料。入場には事前申込による聴講券が必要となっている。
【日時】10月26日(月)18時半〜20時(開場17時半)
【会場】文京シビックホール(小ホール)
【参加申込】①住所(〒番号)、氏名、年齢、性別、職業、電話番号を記入してハガキまたはHP申込フォームから申請
【申込先】「日本漢方生薬製剤協会」〒103-0001東京都中央区日本橋小伝馬町16‐19渡林日本橋ビル3階 FAX03-3662-5809電話03-3662-5757
(詳細は本紙548号に掲載)
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「漢方の未病社会」
『食と健康の達人』とのコラボで
北里COIシンポジウム
北里COIシンポジウム(北里大学東洋医学総合研究所EBMセンター主催)が10月31日(土)、日本科学未来館(東京都江東区)で開催される。同校は、平成25年度に文部科学省と科学技術振興機構(JST)が主導する「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)のトライアル拠点に採択。今年度から拠点名『食と健康の達人』に正式採択され、取り組みが継続している。
同拠点の中核機関は北海道大学で、筑波大と北里大はサテライトとして参画。37企業・機関(食、健康、医療、製薬、情報分野など)が加わる産学連携事業だ。
活動概要を「健康に関する食機能の解明や科学的根拠に裏付けられた食品や運動プログラムの開発などを通じて、個人の食・運動・健康・医療に関する情報を一元化し、個人が保有・活用できる情報・社会システムを構築する」とし、女性、子供と高齢者にやさしい社会の実現をめざす。健康度がわかる“健康ものさし”と“セルフヘルスケア”を提供するという。
北里大学は、「未病社会を目指す東洋医学の立場から、科学的根拠に基づく漢方診療の標準化と普及や、漢方薬の品質保証体制の確立と生産支援に取り組む」としており、「安全高品質な漢方ICT医療を用いた未病制御システムの研究開発」をテーマに、科学化した漢方医学を活用し、健康増進・健康寿命の促進と、医療費削減をめざす。今回のシンポジウムでは、これまでの取り組みの進捗状況が報告されるほか、関連講演が行われる。
(詳細は本紙548号に掲載)
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平成30年度までに国内生産量を2倍に——農水省政策目標
薬用作物の産地化に向けたブロック会議
農林水産省、厚生労働省、日本漢方生薬製剤協会(日漢協)共催「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」が、関東を皮切りに、今年も全国8ブロックで開催される。
9月8日(火)にさいたま新都心合同庁舎の会議室で開催された関東ブロック会議では、農林水産省の栗原氏(生産局農産部地域作物課)が挨拶に立ち、生産者と実需者のマッチングを推進するようになった経緯を説明するとともに、「来年度はさらにコマを進め、マッチング窓口の設置や、栽培技術指導の体制を整備に着手する」と述べ、平成28年度概算要求の「薬用作物等地域特産作物産地確立支援事業」(4億7100万円)に盛り込んだことを紹介した。
具体的には、薬用作物の産地形成を加速化すべく、栽培実証圃場の設置、事前相談窓口の設置、栽培技術指導体制の確立などに取り組む事業者を公募する。政策目標は「国内生産量を2倍(平成22年度900トン→同30年度1800トン)に拡大する」としている。
日漢協の吉村宏昭氏は、加藤照和同協会会長の挨拶を代読する中で、マッチング事業を開始した平成25年度以降の2年間で、27団体・個人との折衝を成立させたことを報告した。
全国ブロック会議は、10月後半まで各地で開催される。
さいたま新都心合同庁舎の会議室で開催された関東ブロック会議
(詳細は549号に掲載)
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麻黄の国内栽培が本格始動モードに
第66回日本東洋医学会学術総会 教育講演で御影氏
第66回日本東洋医学会学術総会の教育講演では、御影雅幸氏(東京農業大学農学部バイオセラピー学科)が、「麻黄の国内栽培をめざして」をテーマに、現在の取り組みを紹介した。同氏は、前任地の金沢大学での研究も含め、麻黄の学際的な研究を30年以上継続している。「麻黄は、葛根湯や小青龍湯、麻黄湯などに配合される重要生薬でありながら、日本には自生しておらず、これまで中国からの輸入に依存してきた。近年、中国で野生資源が減少し、中国政府は1999年から輸入禁止措置をとっている。今後も安定供給は懸念される」と御影氏。講演では、同氏が「研究の集大成」として取り組んでいる麻黄の国内生産の研究と、栽培の進捗状況を紹介した。
御影氏が行ってきた現地調査によると、麻黄が良好に育つ環境は、まったくの砂漠ではなく、ある程度、植物が育つ乾燥地帯が好ましいとのこと。麻黄の自生地は、農地としても利用しやすく、比較的容易に野菜などの耕作地として開拓される事例にたびたび遭遇したという。栽培種として適しているのは、根茎を横にひいて増殖するエフェドラ・シニカ(E.sinica)だという。
日本薬局方に規定される麻黄の中で、アルカロイド含量が最も多い種は、エフェドラ・エクイセチナ(E.equisetina)だ。ところがエクイセチナは、岩場や瓦礫で生育する性質があり、栽培には不向きだという。シニカはアルカロイド含量が最も低いが、栽培には適しているため、中国では主としてシニカが栽培されている。
麻黄は、乾燥した土地で生育する株ほど、アルカロイド含量が高い。若い株は含量が低く、発芽後、5〜6年経過しないと含量が安定しないとのこと。栽培では、水やりや、春に差しかかるころに雑草取りを行う。収穫は秋に行う。
麻黄の種苗の生産方法については、種子、株分け、挿し木があり、いずれも長所、短所がある。発根率を検討したところ、草質茎の挿し木の環境調整を行うことで、容易に発根することを見出したという。挿し木の切り方は、水平切りと斜め切りに差はなく、種や株によって発根率が異なることもわかった。霧状の水を噴霧するミスト法では、鹿沼土細粒を用いた苗の生長が最も良好だったという。
2014年に、金沢市、加賀市、白山市の砂地、水田跡地、畑土、山間部などで試験栽培を実施した。異なる用土(①
プランターの土、②赤玉土、③川砂、④鹿沼土、⑤桐生土/桐生砂、⑥山砂)で栽培した麻黄のアルカロイド含量を比較する試験を実施したところ、プランターの土の含量が最も高かった。水田跡地での栽培は不適だったこともわかった。水はけがいいと低くなる傾向があることを実証したという。
御影氏は、「アルカロイド含量の観点からは、同じ土壌でもエクイセチナの方が明らかに含量が高い。栽培しにくくても方法を開発する研究をするべきかもしれない」とも語った。
(詳細は本紙547号に掲載)
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「薬用植物資源研究センター」が攻勢
薬用植物フォーラム2015
7月14日(火)につくぱ国際会議場(つくば市)において開催された「薬用植物フォーラム2015」(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所薬用植物資源研究センター主催)には、今年も180名を超える参加者が集まり盛会となった。昨年は、同センター北海道研究部(名寄市)開設50周年を記念し、同市との共催で開催。今年は本拠地に戻り、例年通りの開催となった。
厚生労働省、農林水産省、日本漢方生薬製剤協会(日漢協)が協力して薬用作物の国内栽培を推進している昨今、同会は情報交換の場として注目を集めている。同センターの川原信夫氏(センター長)は、閉会時の挨拶の中で、「今年も多くの参加者にご来場いただいた。一部来場をお断りした方もあり、来年7月12日(火)には、大ホールでの開催を予定している」と述べ、積極的な活動姿勢を示した。
今回は6人の演者が登壇し、薬用植物の周辺情報や栽培の実際、品質評価、病原微生物の病害などを紹介した。
演題と演者は次の通り。
①生薬関連分野における第17改正日本薬局方の改正内容及び最近の国際動向(袴塚高志・国立医薬品食品衛生研究所)②新技術による薬用植物の生産とその評価(吉松嘉代・同センター筑波研究部)③薬用植物の病害と病原微生物(佐藤豊三・農業生物資源研究所)④愛媛県における薬用植物栽培の現状(白石豊・愛媛県農林水産研究所)⑤薬用植物資源の抗C型肝炎ウイルス活性(堀田博・前神戸大学大学院医学研究科教授)⑥富山県における薬用植物の栽培振興(田村隆幸・富山県薬用植物指導センター)
(詳細は本紙547号に掲載)
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ISO/TC249のタイトルは 「Tradtional Chinese Medicine」に決定
第6回全体会議(北京)で決議
第66回日本東洋医学会学術総会で報告
富山市で開催された第66回日本東洋医学会学術総会の最終日、最終セッションのシンポジウム「漢方医学の標準化 : 国際化への対応と課題」は、伝統医学の国際化がもたらす影響をわかりやすく紹介するために企画され、7演者が登壇した。
シンポジストの東郷俊宏氏(東京有明医療大)は、今年6月1日〜4日に北京で開催されたISO(国際標準化機構)の専門委員会(Traditional Committee)「TC249」(21か国)の第6回全体会議(参加総数 : 約240名)の議決内容を報告する中で、第1回会議(2010年6月)からタイトルが「暫定」となっていた「Traditional Chinese
Medicine」が、今会議で正式に決定したことを発表した。
タイトルの決定までは紆余曲折があり2日間の審議でも決着がつかず、6月4日にプレゼンテーションを実施し、会議に出席していた12か国による投票で8案を2案(①Traditional Chinese Medicine ②Traditional Medicine : Chinese Medicine, Kampo and Korean Medicine)に絞り込んだ。日本は韓国と共同で②Traditional Medicineを提案したが、決選投票の結果、8対3で①Traditional Chinese Medicineに決着したという。
また、各ワーキングクループ(以下WG)が抱えている課題として、WG1とWG4に新作業項目(NP)の提案が集中しているほか、提案の質にも問題があるという。この件について日本は、①優先順位の決定に関する基準の作成、②新作業項目の提案にはあらかじめ作業原案を添付する、の2点を提案。また日本は、WG2で2件、WG3で2件、WG4で3件、WG5で2件の提案も行った。高品質な規格のみを検討対象にすることについて欧米を中心に賛同を得たほか、臨床に関する事項を規格化しないことが改めて確認されたという。
欧米諸国は日本に対し、「日本は漢方医学の標準化を進めることでTC249での議論をリードする権利を持っている」「審議が必要な重要案件については、日本漢方との比較も充実させながら議論の主導権をとるべき」とのメッセージがあったという。東郷氏は、「将来に向け、欧米と協調しながら高品質な標準化を目指すことが重要と考えている」と結んだ。
(詳細は本紙545号に掲載)
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第66回日本東洋医学会学術総会 閉幕
6月12日(金)から3日間、「伝統の継承と新たな展開——医療の幹線をめざして」をテーマに富山で聞かれた第66回日本東洋医学会学術総会には2548名(事前登録含む有料参加者数)が参集し、盛会となった。
一般講演と鍼灸関連のセッションは、立ち見が出る盛況ぶりだったほか、臨床医、鍼灸医、薬剤師向けの教育セミナーも開催された。
会頭をつとめた嶋田豊氏(富山大学大学院)は、閉会式で「天候に恵まれ、最後まで活発な討議が行われた」と語った。閉会式が行われた会場は直前までISO(国際標準化機構)、WHO(世界保健機関)関連のシンポジウムが行われており、最後まで多くの参加者が席を埋めていた。
メイン会場の最終セッションとなった市民公開講座(日本漢方生薬製剤協会共催)には一般市民が足を運んだ。病気と健康、養生と予防を漢方の視点でとらえ、「良い漢方医の選び方」も紹介された。
初日の「伝統医学臨床セミナー」は、「継承したい先達の教え」をテーマに、漢方界をリードする3医師が、師匠から学んだことやエピソードを紹介。北里、千葉、京都の漢方医学の源流が披露された。
(詳細は本紙545号に掲載)
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第32回和漢医薬学会学術大会
「和漢薬の作用機序・臨床効果」
漢方薬の普及と貢献に向けた議論に期待
8月22日(土)、23日(日)の2日間、富山国際会議場(富山市)において開催される第32回和漢医薬学会学術大会の大会長をつとめる白木公康氏(富山大学大学院医学薬学研究部ウイルス学教授)に、大会の見どころをお話しいただいた。今回は、テーマを「和漢薬の作用機序・臨床効果」として、これまでに明らかになっている漢力薬・生薬の薬理作用の情報を広く発信することをめざす。「漢方薬の作用機序の研究を、多くの研究者が引用するようになってほしい」と白木氏。漢方の普及と貢献に向けた議論が大いに期待されるところだ。(聞き手 : 編集部)
——今大会のテーマは、和漢薬の「作用機序」と「臨床効果」ということで、より具体的な内容が示されていますね。
白木 現在は、社会からの漢方薬への期待が大きく、どんなことが期待されているのかを考えなければならない時代になっています。すでに明らかになっている漢方薬の作用機序については、しっかりと情報発信し、知ってもらう必要があると思います。私は、葛根湯の作用機序を明らかにしましたが、内容については広く知られていません。私が取り組んだのは、インフルエンザや感冒に対する葛根湯の作用機序の解明です。肺炎を引き起こしているマウスの肺組織の炎症部位の切片の面積を合計したところ、葛根湯服用群は、肺炎を起こしにくいことがわかりました。リンパ球の反応を調べたところ、葛根湯服用群では、細胞性免疫を高めるサイトカインが強く出現していました。
葛根湯の感冒に対する作用は大きく2つあります。肺炎を軽症化する作用と解熱作用です。生体は、病原体(特にウイルス)などの異物が侵入すると、すぐに免疫システムの細胞がサイトカインを分泌して、IFN(インターフェロン)→IL-1α(インターロイキン1α)の代謝経路が活性化します。葛根湯は、この経路に作用して、感染防御の働きを強めていることがわかりました。感冒の初期に葛根湯を服用すると、極めて高い効果が得られるのです。
一方、葛根湯は、桂皮のシンナミル化合物がIL-1の過剰反応を抑えて解熱効果を示します。葛根湯の成分には、多種のシンナミル関連化合物が存在しており、それらは、サイトカイン産生を抑制するものもあれば、増強するものもありました。そこで、サイトカイン産生に関する作用機序を解析したところ、葛根湯中のシンナミル化合物が、転写因子であるNF-kBを調節していることがわかりました。サイト力イン産生が増強しているものは、逆に転写因子が発現している可能性があります。つまり葛根湯は、DNAに結合する転写因子を調節することで薬効を発揮するという、分子レベルでの作用機序を確認することができました。
最近は、神経内科や精神科の領域の医師が漢方薬を積極的に研究し使用しています。例えば認知症の診断はスコアで評価しているので、薬が効いているのかいないのかが、わかりやすくなりました。同様に、消化器や呼吸器の評価系を使った漢方薬の臨床評価も行われるようになっています。こうした背景から、今大会では、薬学の研究者に臨床情報を提供することと、作用機序の解明の手法を情報発信することをめざしました。演者の先生方には、新たな実験モデルやさまざまな臨床効果の例を紹介していただきたいと思っています。医師の臨床例から、新たな研究のヒントや切り口がみつかることを願っています。
——開催を楽しみにしています。貴重なお話をありがとうございました。
(詳細は本紙546号に掲載)
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地域医療、地域包括ケアと漢方
〜漢方薬の使用状況と今後〜
さる5月25日(月)に日本記者クラブ(千代田区)で開かれたメディア向け講演会「第133回漢方医学フォーラム」は、へきち・離島などの地域医療の振興につとめる自治医科大学地域医療学センターで東洋医学を実践する村松慎一氏(同センター東洋医学部門特命教授、同内科学講座神経内科学部門特命教授)が地域医療を担う総合医の育成と漢方薬の処方の実際を紹介。漢方医学の役割と意義を語った。
村松氏が、漢方薬を日常診療にどの程度取り入れているかを調査したアンケート(診療所または300床以下の病院に勤務する医師679名)では、97%の医師が漢方薬を使用していた。処方頻度の高い漢方薬は、芍薬薬甘草湯、大建中湯、葛根湯、六君子湯、補中益気湯、小青龍湯、麦門冬湯、牛車腎気丸、抑肝散、加味逍遥散、当帰芍薬散など。地域医療で漢方薬が役に立つ理由として、「日常病、不定愁訴や心身症、高齢者に使いやすい」「生活習慣病を含む慢性疾患に使用できる」「副作用が少ない」など。漢方薬を使いにくい理由としては、「使用法がわからない」「多種を揃えるのが困難」「エビデンスが十分でない」「使用機会がなかった」「西洋医学的治療で十分」「効果がなかった」などが挙げられた。
村松氏は一方で、漢方専門医の頻用処方の上位10方は、補中益気湯、八味地黄丸、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、六君子湯、真武湯、当帰芍薬散、半夏厚朴湯、加味逍遥散、五苓散、十全大補湯(『漢方の臨床』私の愛用処2010)であり、一般の地域医療の医師とは異なる側面があることを紹介。日本漢方を深く理解することで、さまざまな方剤の用い方ができるようになることを示した。
高齢者に向けた漢方治療の有効性については、3人に一人が軽度も含めた認知障害に罹患している状況に鑑み、認知症を例にあげ、西洋医学的病名にとらわれずに治療できることや、記銘力障害・認知機能障害などの中核症状に有効な方剤はないが、周辺症状(BPSD)の行動および心理症状(攻撃性、不穏、焦燥、暴言、幻覚、妄想など)に有効なことを紹介。認知症の予防には、低脂肪食や運動、ビタミンEや野菜の摂取、趣味を持つこと、血管障害のリスクファクター(喫煙やストレスなど)を低減することの重要性が欧米をはじめとする世界で広く知られており、「日常の小さな積み重ねが、認知症を予防する可能性がある」とも語った。
(詳細は本紙546号に掲載)
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第32回和漢医薬学会学術大会富山で
テーマ「和漢薬の作用機序・臨床効果」
来たる8月22日(土)、23日問の2日間、富山国際会議場において第32回和漢医薬学会学術大会が開催される。テーマは「和漢薬の作用機序・臨床効果」、大会長は白木公康氏(富山大学大学院医学薬学研究部ウイルス学教授)。今回は、白木氏らがウイルス学の視点から「証」の科学的根拠を解明した葛根湯ほか、抑肝散や六君子湯など、臨床で頻用される方剤の作用機序の研究が発表される。
シンポジウムは「和漢薬研究の新たな方向性」(薬理学的解析法・評価法)、「和漢薬の臨床——私の漢方治療の考え方」(臨床での有効性・有用性)、「神経精神疾患の緩和・治療に向けた漢方医学的アプローチ」(基礎研究)の3つが企画された。
白木氏は、「医学部・
薬学部の教育コアカリキュラムに漢方医学教育が取り込まれたが、限定的。一方で、疾患への有用性や作用機序が明らかになった漢方薬は、使用量の増加につながっている」と述べ、同会会員の研究成果が、さらなる漢方の普及に貢献するとして、大会中の議論に期待を寄せている。
今回も託児室を準備し、参加支援を行っている。(申込締切7月末日)
(本紙543号に掲載)
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中国との協力関係強化
情報の共有と相互理解で課題解決へ
日本漢方生薬製剤協会 第33回定期総会
日本漢方生薬製剤協会(加藤照和会長)の第33回定期総会が5月15日(金)、都内ホテルで開催され、昨年度事業報告と会計報告、今年度事業計画案予算案、今年度役員などの議事が承認された。当日は講演会も開催され、厚労省医薬食品局の上野清美氏(安全対策課安全使用推進室長)が「医薬品医療機器法施行後の安全対策の動向について」と題して講演。懇親会も執り行われた。
講演会後の懇親会で加藤会長は、今年度も喫緊の課題となっている生薬価格の高騰と品質の確保に取り組むことを「優先的に対処する」とした。また、中国との関係強化については、昨年「日漢協訪中団」を組織し中国行政機関など7団体を訪問したことに続き、今年9月には中国医薬保健品進出口商会(医保商会)を中心とした訪日団を迎える予定があると発表。原料生薬の約8割を調達している中国からの来訪に加藤氏は「有意義な交流を期待している」と語った。医療用漢方製剤については、原料生薬の高騰や薬価について多方面に議論すべく「保険薬価協議会」を設置。安定供給のための方策を検討し、OTC薬の環境整備にも取り組む構えだ。
講演会では、厚生労働省の上野清美氏が、改正薬事法(昨年11月25日施行)の要点を解説した。
改正法には、安全対策強化の一環として「最新の知見に基づき添付文書を作成し、厚生労働大臣に届け出る」と明記され、PMDA((独)医薬品医療機器総合機構)や、欧米の医薬品・類薬の情報を収集して迅速に改定することを規定。エビデンスの明記(薬剤ごとに臨床症状・措置方法、機序・危険因子などを表組み記載)については、今後の検討事項として審議されているという。医薬品リスク管理計画(RMP)では「定期的な評価とPMDAが公表することで充実強化を図る」とし、安全管理についてはノバルティス社の一連の問題に鑑み、自主点検の内容や報告すべき情報の範囲と手順を規定してMRの教育訓練に組み入れ、とくに市販直後の調査を厳格に規定」と解説した。副作用情報については「国から積極的に取りに行く」と語り、データベース構築のための機器借料と、データ(カルテ等)の信頼性の検証を目的として、今年度約2億円を計上しているという。上野氏はそのほか、「小児と薬」情報収集ネットワーク事業、「妊婦と薬情報センター」(国立成育医療センターが中核)、「PMDAメディアナビ」患者向け医薬品ガイドと副作用報告(PMDA Webサイト)なども紹介し、「利用と周知を」と呼びかけた。
(詳細は本紙543号に掲載)
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第66回日本東洋医学会学術総会
「伝統の継承と新たな展開」
医療の幹線をめざして
第66回日本東洋医学会学術総会が6月12日(金)から3日間、富山国際会議場(富山市)など3か所で開催される。今回のテーマは「伝統の継承と新たな展開——医療の幹線をめざして」だ。3月に開業した北陸新幹線にちなみ、医療の「幹線」としての漢方医学を探索する。会期中はシンポジウム11題ほか、さまざまなセッションが執り行われる。大会を目前に控え、会頭の嶋田豊氏(富山大学大学院医学薬学研究部和漢診療学講座教授)に今回の見どころについてお話いただいた。
「私の会頭講演では、当講座が手掛けてきた基礎および臨床研究の中から、とくに釣藤散と桂枝茯苓丸を取り上げます。先代教授の寺澤捷年先生のころからの研究成果です。寺澤先生は特別講演で登壇します。胸脇苦満と心下痞鞭に焦点を当てた研究を紹介します」
「教育講演では、生薬研究が専門の御影雅幸先生が麻黄の国内生産について、がんの基礎研究が専門の濟木育夫先生が漢方薬のがん転移抑制作用について講演します。学術賞受賞講演は、眼科漢方医の山本昇吾先生が、漢方治療の有効性の基準について講演します」
「毎年企画されている伝統医学臨床セミナーは、『継承したい先達の教え』をテーマに花輪壽彦先生、三瀦忠道先生、中田敬吾先生が登壇します。現代の漢方医療をリードされている3人の先生方に、往時のエピソードや口訣などを語っていただきます」
「恒例の日韓学術交流シンポジウムは『頻用処方からみる漢方・韓医学の特徴』をテーマに、日本から福澤素子先生、韓国からは慶煕大学のKyuseok Kim先生が登壇します」
「また、シンポジウムは、生薬関連1テーマ、鍼灸3テーマ、歯科口腔領域1テーマを含む11セッションを企画しました。ワークショップは、テーマにふさわしい症例報告の3セッション『好きな処方、得意な処方』『これぞ! 随証治療』『目からウロコの治験例』合わせて27題を企画しました。応募数が非常に多く、すべてを採用できなかったことが残念で申し訳なく思っています。漢方臭いワークショップになるのではないかと思います」
「伝統医学臨床セミナーとは別に、3つのセミナーも企画しました。医師向けの『実践漢方セミナー』と、『医師のための鍼灸セミナー』、薬剤師向けの『漢方薬剤師セミナー』です。『実践漢方セミナー』は、12の専門科のニーズに応えるべく、各領域で活躍している医師に講師をお願いしました。『医師のための鍼灸セミナー』は、入門編、現代医学的鍼灸、伝統医学的鍼灸、小児鍼の4つを企画し、実技も交えて講義します。『漢方薬剤師セミナー』は、調剤薬局の薬剤師や病院薬剤師などが漢方薬を取り扱うケースが増えており、薬剤管理業務や漢方エキス製剤併用のコツなどについて6人の医師、薬剤師、研究者らが講義します」
「学生からの応募による発表は、ポスター会場で行います。主に大学の漢方医学サークルのメンバーからの報告で、6題の発表があります。企業との共催シンポジウムは、これまで開会前のサテライトでしたが、今回から大会のプログラムに組み込まれ、『スポンサードセミナー』になりました。ランチョンセミナーは6つ、市民公開講座は、日本漢方生薬製剤協会との共催で、市民のみなさんの役に立つ漢方の情報を提供します」
「同じ伝統医学に携わっていても、先生方の興味はさまざまですから、どこかに『参加しよう』と思っていただけるプログラムになっていれば幸いです。ぜひご参加ください」
(本紙544増刊号に掲載)
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「冷え症の漢方治療」を解析
第51回日本東洋心身医学研究会
3月7日(日)に品川インターシティーホールにて開催された第51回日本東洋心身医学研究会(大会長:井出雅弘・札幌明和病院)では、同会EBM作業チームの木村容子氏(東京女子医大東洋医学研究所)が、冷え症の漢方治療に関するエビデンスを報告。座長を岡孝和氏(九州大学)がつとめた。
同チームでは、複数の冷え症例の治療検討がなされている文献を検索し、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、温経湯、当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝湯+麻黄附子細辛湯などのエビデンスを考察。心身症への応用を促した。
特別講演では本間行彦氏(北海道漢方医学センター北大前クリニック)が「漢方は科学であるということ」、会長講演は井出氏が「現代西洋医学と東洋医学の融合について、私なりの試み」と題して講演。第13回研究奨励賞は、中江啓晴氏(横浜市大神経内科)の「パーキンソン病患者の幻覚に対して柴胡加竜骨牡蛎湯が奏効した例」が受賞した。
一般演題(25題)では、中井吉英氏(洛西ニュータウン病院)が、心身症の定義に言及。「神経症やうつ病など、他の精神障害にともなう身体症状」は除外されていることに言及した。
(本紙542号に掲載)
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「慢性痛に関する漢方治療」
テーマにシンポジウム
第44回日本慢性疼痛学会
さる2月27日(金)・28日(土)、横浜市で開催された第44回日本慢性疼痛学会(会長:別部智司・神奈川歯大麻酔科学客員教授、「患者の立場に立った慢性痛への取り組み」)では「慢性痛に関する漢方治療」と題したシンポジウムが企画された。座長は世良田和幸氏(昭和大横浜市北部病院長)と光畑裕正氏(順天堂大教授)がつとめた。一般演題セッション「東洋医学」には次の5演者が登壇した。
①慢性疼痛に対する漢方治療・・・世良田和幸氏(昭和大学横浜市北部病院)
②気剤による慢性痛の治療・・・光畑裕正氏(順天堂大学)
③口腔顔面領域の慢性痛に対する漢方治療・・・山口孝二郎氏(鹿児島大学病院口腔顎顔面センター)
④慢性痛に対する漢方治療の要点・・・平田道彦氏(平田ペインクリニック)
⑤当帰、乾姜を使った痛みの漢方治療・・・矢数芳英氏(東京医大病院麻酔科)
(詳細は本紙542号に掲載)
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「無門塾」 2015年度スタート
「漢方のスキルアップ」「傷寒論に基づく症候と治法の研鑽」を目的とする「無門塾」(田中まち子塾頭)の今年度の講義が4月12日(日)にスタートし、東京国際フォーラム(東京・有楽町)で特別講義などが執り行われた。今年度で20期を迎えた。
事務幹事代表の鈴木寛彦氏は、「脱汗に応じる二味の薬徴」として、「茯苓・甘草」「甘草・附子」「茯苓・附子」の方意を解説。小西正也氏と椎野信安氏は、「漢方とっておきの話」として自身の薬局での症例を詳述。薬局店頭でのやり取りや問診票なども紹介した。
特別講義は、蓮村幸兌氏が竜胆瀉肝湯の使い方を解説。同じく特別講義では、田畑隆一郎氏が15年来の三叉神経痛を治療した自験例を紹介した。
また、姜東孝氏(栃本天海堂)は、中国産生薬の現状(生薬輸出実績の数量・価格の推移)、国産生薬の現状(当帰、川芎、柴胡、黄連、芍薬、人参の国内生産と薬価の推移)、国内栽培拡大機運の高まり(生薬栽培の問題点)などを解説。生薬の国内栽培については、生薬の薬価が低く、保険調剤に不向きな状況にあることに言及した。
(詳細は本紙542号に掲載)
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「華岡青洲合水堂顕彰碑」が大阪に
華岡青洲の業績を顕彰する記念碑が、日本医史学会と、青洲の弟・華岡鹿城の末裔との共同で中之島公園中央公会堂前(大阪市)に建立され、4月25日(土)に除幕式が執り行わ れた。
同地は華岡流医塾として隆盛を極めた「合水堂」の跡地だ。今年は第29回日本医学会総会(4月11〜13日ほか)が関西で開催されたことも契機となり実現。日本医史学会も同日から2日間、第116回総会を開催した。
式典では、主催者の日本医史学会(小曽戸洋理事長)、日本麻酔科学会(外須美夫理事長)、第29回日本医学会総会2015関西(小泉昭夫展示副委員長)、華岡家春林会(五十嵐慶一代表)が挨拶したほか、来賓として大阪商工会議所(土屋裕弘ライフサイエンス振興委員会副委員長)、大阪市(橋爪伸也特別顧問)が挨拶。大阪・船場には緒方洪庵の「適々斎塾」(適塾)もあり、主催者らは「日本の医学の中心であった大阪を後世に伝えたい」と語った。
(本紙542号に掲載)
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桂枝茯苓丸(加薏苡仁)国際シンポジウム開催
日本、韓国、台湾、シンガポールの使用比較も
さる2月9日旧、国際東洋医学会日本支部(安井廣迪理事長)主催「桂枝茯苓丸(加薏苡仁)国際シンポジウム」が開かれ、約100名が参集し、同方剤を臨床応用したさまざまな症例が報告された。今回は慶應義塾大学医学部漢方医学センターとの共催で開かれ、同附属病院(新宿区信濃町)内の会議室が会場となった。
実行委員長をつとめた貝沼茂三郎氏(九州大学地域医療教育ユニット)は、「これまでの諸研究や症例報告を包括し、世界にも発信したい」と挨拶。今回は韓国、台湾、シンガポールから各1名の演者を招聘。日本からは臨床経験が豊富な17演者が講演した。
特別講演では末梢循環改善剤としての役割と、これまでの研究を総括する2演題が発表され、エビデンスデータの構築に向けたセッションでは、テニス肘、小児疾患、皮膚疾患、術後疼痛、子宮筋腫などの臨床研究が取り上げられた。
「ベストケーススタディー」のセッションでは、下肢筋損傷、糖尿病足病変、混合性結合組織病、アフタ性口内炎、乳房痛などで治療効果が顕著だった症例が報告された。中でも鶏眼(うおのめ)から細菌感染し、骨髄炎を併発して切断が危惧された糖尿病足病変を26週で完治させた症例では、患部の血流改善を最優先と考えて桂枝茯苓丸を処方。治療開始1〜2週間は鎮痛剤、抗生剤を併用し、他剤や生薬も適宜合方、加味して完治させた。
海外から招聘した3氏がパネラーとなった特別討論では、桂枝茯苓丸の単独使用は少なく、加味方が多いこと、韓国では瘀血の概念が日本と異なっていたが、日本の影響で桂枝茯苓丸の使用が普及したこと、桂皮と桂枝と肉桂、あるいは赤勺と白勺は、使用目的に応じて使い分けていることなどが紹介された。中国でもよく使用されるようになったのも近年のことで、『皇漢醫学』(湯本求眞)の影響があるという。
(本紙541号に掲載)
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「国際情勢への対応を」
2014年度シンポジウム「日本の伝統医学を取り巻く最新の国際状況」
平成26年厚生労働科学研究委託費(地域医療基盤開発推進事業)「ISO/TC249における国際規格策定に資する科学的研究と調査および統合医療の一翼としての漢方・鍼灸の基礎研究」分担研究(分担研究者:小野直哉氏)が主催した「2014年度シンポジウム——日本の伝統医学を取り巻く最新の国際状況」が1月31日(土)、飯田橋レインボービル会議室(東京都千代田区)において開催され、4人のシンポジストが講演した。日本東洋医学サミット会議(JLOM:石川友章議長)が後援した。
シンポジストの小野直哉氏(未来工学研究所)は、日本の伝統医学を取り巻く国際情勢を概説。産業分野では、漢方医薬(生薬等の漢方薬材料)、医薬品(創薬での微生物や天然動植物の探索)、食品(農産物や健康食品の材料)、化粧品(天然動植物の抽出物)、種苗(野生植物の園芸・鑑賞)、鍼灸機器具(鍼用具や艾材料)などが、関連する各種条約、協定の影響を受ける。個別かつ専門的だった各国際機関の議論は、今後、相互に影響を与えることが予想され、有機的な把握が必要。バイオ・工業製品や知的財産、法律、政策など多分野の専門家や産学官との交流と連携、支援が重要となると語った。
炭田精造氏(バイオインダストリー協会)は、生物多様性条約の目的の一つである「遺伝資源の取得と利益配分」(ABS)を押し進めた「名古屋議定書」に昨年批准したEUの実施状況を概説した。EUは公的なスタンダードではなく、市場を掌握する事実上(デファクト)のグローバルスタンダードを作りたいという強い潜在意識があるという。また、ABSにはCOP10で合意を取り付けるために暫定的に策定した経緯があり、用語(遺伝資源、伝統的知識、遺伝資源の利用など)の範囲が不明確だったり、多様な解釈ができるなど、さまざまな課題があると指摘した。
田上麻衣子氏(東海大法学部)は、「遺伝資源に関する伝統的知識」の動向を紹介した。「遺伝資源に関連する伝統的知識」は、資源の利用状況や履歴を公開して情報を共有するための「ABSクリアリングハウス」設置が盛り込まれ、提供国側に通報の義務を課している。田上氏によると、通報の義務規定は「遺伝資源」にとどまっており、伝統的知識には規定がないという。伝統的知識自体の定義があいまいなことから、契約自体があいまいなものになる可能性があると危惧している。
盛岡一氏(国立遺伝学研究所)は、伝統医学のデータベースが生物多様性条約に与える影響について解説した。伝統的知識(TK)の知的財産化や法規制による利益確保を目的としたデータベースの構築が、世界各所で戦略的に行われているという。
(本紙541号に掲載)
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卒前から卒後までの一貫性のある漢方医学教育をめざしして
KAMPO MEDICAL SYMPOSIUM 2015
2月8日(土)に開催された「KAMPO MEDICAL SYMPOSIUM 2015」(ツムラ/日経メディカル開発共催)は、900人を超える医師が参集し、盛会となった。15回目を迎える今回は、はじめての試みとして卒後研修中の6人の研修医が自らの体験を語るシンポジウムが企画されたほか、卒前教育と卒後教育に携わる教授ら各1名が現状と今後について紹介。教育講演では、文部科学省と厚生労働省から各1題の講演が行われた。
開会挨拶に立った加藤照和氏(ツムラ社長)は、2001年の医学教育モデル・コア・カリキュラムに『和漢薬を概説できる』の項目が組み入れられたのを契機に、漢方医学教育を推進・支援してきたことに触れ、「現在はほとんどの大学で8コマ以上の必修講義が行われ、漢方外来が設置されるようになった。講義の標準化や臨床実習のあり方、指導者の養成など取り組むべき課題も多く、今シンポジウムが課題解決のきっかけになることを願っている」と述べるとともに、5名以上の研修医が在籍する臨床研修指定648病院(2014年12月時点)中379病院(58.5%)で初期研修医向け漢方勉強会が実施されていることを紹介した。
同社の漢方薬の育薬に向けた取り組みについて加藤氏は、「エビデンスにもとづいた有効性の証明と安全性(副作用情報など)の明確化、高品質・高均質の製剤に向けた進化が、医療用医薬品としての喫緊の課題」と述べ、安全性担保のための添付文書の改訂作業が行われていることも紹介(大建中湯、抑肝散、芍薬甘草湯など)。
同社の調査によると、52の疾患治療ガイドラインに漢方薬の有効性が記載され、うち17のガイドラインで使用が推奨されているという。
シンポジウムでは、司会をつとめた佐藤達夫氏(有明医療大学学長)が、卒前・卒後教育の現場を担う2人の演者を紹介した。
(本紙541号に掲載)
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医師、鍼灸師、薬剤師の連携医療めざす
「地域包括ケアシステム」スタートに連動
第10回練馬病鍼連携会議
1月19日(月)に練馬総合病院(東京都練馬区)で開催された第10回練馬病鍼連携会議は、同院の近隣で鍼灸院を開業する藤井伸康氏(江古田パレス鍼灸治療院、東京都鍼灸師会理事)が腰椎すべり症の連携治療の症例を紹介。同じく越石まつ江氏(越石鍼灸院)は、紫雲膏を灸に利用する「紫雲膏灸」の効果の検証結果を紹介し、実演も行った。
練馬病鍼連携会議は練馬周辺地域の医師、鍼灸師、薬剤師の連携医療を目的とした会議だ。第1回会議は213年7月に練馬区鍼灸師会・板橋区鍼灸師会・練馬総合病院が合同で開催した。今年4月から本格的にスタートする地域包括ケアシステムの構図の中に「はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師」が明記されたことから、活動が活発化している。
同会を運営する中田英之氏(練馬総合病院漢方医学センター長)によると、医療従事者らのこうした連携の動きは、他の地域でも具体化しつつあるという。中田氏は、「さまざまな治療技術が連携することで、できることを増やし、地域の人々の健康に貢献したい」と語った。
(本紙540号に掲載)
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テーマは「薬用作物」と「レンコン」
平成26年度地域特産物の持つ機能性等に関する研究会(特産農産物セミナー)
1月19日(月)に東京・港区の石垣記念ホールで開催された平成26年度「地域特産物の特つ機能性等に関する研究会」(特産農産物セミナー)は約130名が出席し、過去最高の出席者数となった。今回はレンコンと薬用作物の2つをテーマに取り上げた。農林水産省生産局の白井正人氏(地域作物課地域対策官)が「地域特産作物の生産・流通の現状と課題」と題して講演したほか、薬用作物については、医薬基盤研究所の川原信夫氏(薬用植物資源研究センター長)と地域特産物マイスターの古木益夫氏(北海道)、レンコンについては、佐賀県工業技術センターの鶴田裕美氏(食品工業部特別研究員)と地域特産物マイスターの上田稔氏(茨城)がそれぞれ講演。活発な質疑応答も行われた。
(本紙540号に掲載)
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「課題を解決、結果を出す」」
日本漢方生薬製剤協会 新年祝賀会
1月20日(火)に都内ホテルで聞かれた日本漢方生薬製剤協会(以下「日漢協」)の新年会祝賀会では、昨年会長に就任した加藤照和氏(ツムラ社長)が挨拶に立ち、6年ぶりに訪中団を組織したことや、一昨年に続いて「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」(農水省、厚労省、日漢協共催)を聞催したなど、昨年の活動内容に触れ、「会員各社、関連団体と情報を共有し、課題解決に役立てたい」と述べた。生薬の国内栽培については「1次産業の振興に貢献すべく6次産業化を推進し、安定した生薬栽培事業を確立したい」とした。
伝統医学の国際標準化会議(ISO/TC249)や医薬品査定協定・医薬品査察協同スキーム(PICS)など国際環境に対応する必要性にも触れ、「日本東洋医学サミット会議(JLOM)や行政機関と協力し、担当ワーキンググループで積極的に意見を発信する」「生産管理や加工調製などのレベルアップにつなげる」と意欲を示した。
日漢協は昨年10月、「日漢協コード・オブ・プラクティス」(日漢協コード)を策定した。プロモーション活動などを含む企業活動全般にわたる自主基準で、国際製薬団体連合会(IFPMA)、日本製薬工業協会(製薬協)策定のコードに準拠している。加盟各社は、より具体的な項目を加えた「自社コード」を策定しており、加藤氏は「業界全体として高い倫理性、透明性を確保していく」と述べた。
今年は2012年に掲げた「中長期事業5か年計画」の4年目にあたり、加藤会長は「成果に結び付けていく」と述べ、支援と協力を呼びかけた。
祝賀会には鴨下一郎衆議院議員、石川友章日本東洋医学会会長、山本信夫日本薬剤師会会長、木村政之日本製薬団体連合会理事長が来賓挨拶に立ち、エールを送った。
講演会では、農林水産省生産局の岸本英之氏(農産部地域作物課課長補佐)が「薬用作物等をめぐる事情」と題して講演。岸本氏は「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を担当し、同会議にも出席している。この日はマッチンクの推進に関する政府の取り組み方針などを解説した。
(本紙540号に掲載)
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夕張ツムラ、農業法人ヘ
道内の栽培強化、面積拡大
(株)ツムラ(東京都、加藤照和社長)は1月30日(金)、子会社の(株)夕張ツムラ(北海道夕張市)が農業法人に移行したことを発表した。現在、今年7月竣工予定で生薬倉庫を増設中。保管能力を現在の2倍に拡大する。これまでの道内の生産品目は川芎、蘇葉、当帰、附子など。2013年の調達実績は約250ha、約600tだった。
同社では、農業生産法人化により、自社農場運営を本格化し、生薬の栽培から調製加工・保管までの一貫した生産拠点としての機能強化を進めるとしており、同社滝川農場(旧道立畜産試験場跡)を、現在の60 haから約150
hrへ拡大するほか、遊休地を対象とした道内広域への拡大を検討。道内契約栽培団体や農家との連携も強化する。
(本紙540号に掲載)
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「JAPAN漢方」を世界に
北里WHO・COIシンポジウムで
「少子高齢化の課題、未病の概念で解決したい」
さる12月6日(土)、パシフィコ横浜にて北里WHO・COIシンポジウム(兼漢方診療標準化プロジェクト第2回シンポジウム)が開催され、昨年4月に行われた第1回目のシンポジウム後の取り組みを発表した。
プロジェクトリーダーをつとめる杉本敏之氏(森下仁丹)は、「日本漢方のアイデンティティを確立する試みでもある」と挨拶。研究リーダーの花輪壽彦氏(北里大学東洋医学総合研究所)は、文部科学省主導COISTREAM(シーオーアイストリーム)が掲げる「10年後の社会像を見据えたビジョン主導型の研究開発」を実現すべく、漢方診断と生薬の品質評価の標準化をめざしていることを紹介した。
来賓挨拶では、松田譲氏(「COISTREAMビジョン1「少子高齢化先進国としての持続性確保」リーダー、加藤記念バイオサイエンス振興財団)が、高いQOLの維持につながる研究と、「JAPAN漢方」の礎となる生薬の国産化に期待した。
武見敬三氏(参議院議員)は「健康長寿」と「Human well-being (よりよく生きる)」の双方を実現する重要性を説いた。町田宗仁氏(厚生労働省医政局総務課)は科研費による統合医療への支援を行っていることを紹介。嶋田豊氏(富山大学大学院和漢診療学講座)は、WHO伝統医学協力センター設置校である北里大と富山大の協力関係を紹介した。
シンポジウムは、漢方診断システム(標準化プロジェクト)と、生薬評価システム(新しい品質評価法)に関するセッションで8人の演者が講演。海外研究者による2題の招待講演も行われた。
小田口浩氏(北里大学東洋医学総合研究所)は、今プロジェクトの構想をビジョンマップで紹介。漢方未病システム(漢方ドック、家庭での健康チェックシステムなど)の構築と、生薬の品質評価を含めた「漢方医学情報プラットホーム」づくりに取り組んでいる。小田口氏は「少子高齢化の課題を未病の概念で解決したい」と抱負を述べた。
(本紙539号に掲載)
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「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」
今年度も全国で
厚生労働省、農林水産省、日本漢方生薬製剤協会(日漢協、加藤照和会長)は、今年度も全国8ブロックで「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を開催した。
11月19日(水)にさいたま市合同庁舎多目的室で聞かれた関東ブロックの会議には80名あまりが参加。挨拶に立った高橋貴與嗣・関東農政局生産部園芸特産課長は、「薬用作物は、耕作放棄地や中山間地域の活性化にもつながるなど、関心が高まっている。野菜や果樹を主力としている産地も、いまの技術力を生かして品質の安定した薬用作物が生産できれば、新たな産地としての可能性が大きい」「現行主力作物との競合を勘案しながら多角化につなげてほしい」と検討を促すとともに、今年度から施行された「薬用作物等地域特産作物産地確立支援事業」にも言及し、「疑問点は今会議で解消してほしい」と述べた。
日漢協の佐々木博氏(原薬エキス委員会、生薬国内生産検討班)は、同会長の加藤照和氏の挨拶文を代読した中で、昨年度は137件の要望があり、うち18件でマッチンクが成立したことを紹介。生産者との協力体制で産地化に取り組む考えを示し、生薬原料の安定供給に対する理解と協力を求めた。
日漢協生薬委員会栽培部会では、薬用植物の栽培と採取、加工に関する指針「日漢協版GACP」(Good Agricultural and Collection Practices)を日中英3か国語で作成しており、今年度中の公開を目指しているという。
(本紙539号に掲載)
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「病気を治すのは自分自身」
日本漢方生薬製剤協会
第17回市民公開漢方セミナー
日本漢方生薬製剤協会(日漢協)主催「第17回市民公開漢方セミナー」が11月20日(木)、大阪国際会議場(グランキューブ大阪)で、約300人の市民参加のもとに開催された。
講演に先駆けて、渡邊喜代彦氏(日漢協常務理事)が日漢協の概略や漢方の歴史を紹介。「漢方医学は日本育ちの日本医学」と強調した。
講師の萩原圭祐氏(大阪大学大学院医学系研究科漢方医学寄附講座准教授)は冒頭、「漢方への関心が高まり、マスコミがしばしば取り上げるようになった。86.3%の医師が漢方を処方している」と昨今の概況を説明。漢方と伝承薬の違い、適塾の緒方洪庵や華岡青洲など、漢方や薬と大阪との深いつながりにも触れた。
講演では漢方診断法である脈診、舌診、日本で独自に発展した腹診ほか、漢方の基本概念「気血水」の代表的処方として補中益気湯(気)、桂枝茯苓丸(血)、五苓散(水)による改善例を紹介。「もし補中益気湯で治ったら、"自分は気虚になりやすい体質"と認識して生活習慣を改善して欲しい。病気を治すのは自分自身」とアドバイスした。
貝原益軒の養生訓として、「健康を維持するには養生を心がけること。針・灸や薬の力に頼りすぎないように」「気は身体に行きわたらなければならない。過度の怒りや悲しみ、悩みすぎ、考えすぎは気を滞らせ、病気のもととなる」などを紹介した。
萩原氏はとくに腎の働きを取り上げ、8の倍数とされる男のライフサイクルを人気漫画のサザエさんのキャラクターで図示したり、ドラえもんやドラゴンボールなども織り交ぜて講演。「漢方に教えられたこと、気づかされたこと」として「物事を全体でみることの大切さ」「こころとからだは関連している」「対話が大切」などを提示して結んだ。
(本紙539号に掲載)
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