さる10月11日(日)、大阪大学中之島センターにおいて、漢方治療研究会が開催され215名を集めた。関西での開催は京都に引き続いて2回目。大阪では初開催となった今回は、中田敬吾氏(聖光園細野診療所)が大会長をつとめた。 当日は2題の特別講演と漢方治療の臨床例24題が一般講演において発表されるとともに、第13回東亜医学協会賞ならびに学術奨励賞の表彰式が行われた。 特別講演では、米田該典氏(大阪大学大学院)が「漢方治療の薬物の需給」と題して講演。多くの生薬を海外の生産地に依存するいまの日本の薬物需給状況の課題や変化に対応していかざるを得ない臨床現場を鑑み、その対応策について歴史的視点からの示唆を試みた。 また同じく特別講演の演者の山崎正寿氏は「症例より見た癌治療における漢方治療法の役割」と題して、時々刻々と変化するがんの症状に対応させた漢方処方投薬例を3例紹介し、それぞれが高いQOL(生活の質)を維持しながら延命を果たしたことを報告。また、がんに応じて使用する方剤をいくつか紹介しながらも「がんの治療は、そんなに簡単でも単純なものでもない」と強調し、単に「がんに効く」と謳っている薬や健康食品、医療行為などに対して遺憾であるとするコメントも残した。
なお、表彰式では次の3氏が受賞した。 第13回東亜医学協会賞…杉山広重氏「『金匱要略』平成新解」(5年にわたる連載論文) 第13回東亜医学協会学術奨励賞…大友和夫氏「不問診」(平成20年11月)、「のどはなこ(喉鼻粉)」(平成21年3月) 同…熊切力氏「高齢者における抑肝散の効果」(平成20年9月)
(詳細は本紙464号に掲載)
来る11月20日(金)から4日間、東北大学百周年記念館において、第28回日本認知症学会学術集会が開催される。 大会長は荒井啓行氏(東北大学加齢医学研究所加齢脳・神経研究部門加齢老年医学研究分野)がつとめる。 荒井氏は「日本認知症学会学術集会は元来認知症の基礎研究で十分議論を尽くす場とされてきたが、東北・北海道地区で初めての開催となる今回は、昨年度からの専門医制度のスタートを記念してテーマを『専門医時代を迎えた認知症医療』とした」という。 今回企画されている4つのシンポジウムのうち、No2 "認知症治療の最前線を知る"(2日目)では、藤原博典氏(東北大学)が「漢方生薬からの創薬」と題して講演する。また鳥羽研二氏(杏林大学)がランチョンセミナー(1日目・(株)ツムラ)の講師をつとめるなど、認知症治療における漢方方剤の有用性への認識に広がりが見られそうだ。 (詳細は本紙464号に掲載)
10月3日(土)、4日(日)の2日間、京都薬科大学で開催された日本生薬学会(吉川雅之実委員長)は、700名あまりの参加者を集めて盛会となった。一般公演やポスター発表の会場では、研究デザインや実験による分析結果などに対する所感や質問が参加者から述べられ、研究者の発展向上の機会となったようだ。またシンポジウムでは、薬用植物資源の確保やそれに関わる人材の確保、薬学教育をいかに構築していくか、また薬学領域の中で活きる研究のあり方や研究者の育成と人材の確保、臨床現場における薬剤師が抱える問題点や今後のあり方など、山積する課題に対する率直な言及があり、終了後の会場においても随所で意見交換がなされていた。
会長講演では海老塚豊日本生薬学会会長(東京大学名誉教授)が、植物由来のトリテルペンサポニンの生合成酵素について、これまでの研究成果を発表した。また、東大薬学部の海老塚豊教授らのグループは、セイヨウタンポポほか複数の植物から種々のトリテルペン合成酵素のクローニングに成功。その酵素は、水を添加することでも反応の終了が生じ、それが酵素によって厳密に制御されていることを機能解析の中で見出した。 海老塚氏は「難治性疾患や新興感染症などの原因遺伝子や創薬標的タンパクが次々と発見され、同定されているが、実際に医薬品として開発するには、医薬品候補物質そのものの多様性をいかに創出するかが鍵となる。しかし期待された構造多様性は必ずしも十分に得られず、合成化合物を凌ぐ創薬資源ケミカルプールとして、天然物が再認識されてきている」として、生合成酵素とゲノムマイニングによる解析研究は、「選択的生産系」の薬の開発を可能にするものとして、大きな期待を集めるようになっていることを示した。 特別講演では村岡修氏(近畿大学薬学部教授)がサラシア(デチンムル科)、カンカ(ハマウツボ科ニクジュヨウ属)、ガランガルー(ショウガ科)などの機能性食品の植物素材の分析研究を発表。「薬学に携わっている以上、新しい医薬品の創生に何らかの形で係わることは最大の関心事」とする村岡氏だが、それらが合成面で実用化に至るまでには時間がかかることや、超高齢化社会における医療制度においては、健康食品がセルフメディケーションやセルフプリメンションの重要な手段となってきていることに言及。「食品成分中の有効成分を探索評価し、そこに医薬シーズを求めることは、その食品の効能に対する科学的評価にもつながり、研究成果の早い実用化にも通じる」として、食品の成分解析の意義を唱えた。解析した植物には、糖質分解抑制作用や免疫増強作用、脳内酵素の働きを高める作用など、生活習慣病の予防改善が期待できることが報告された。(詳細は本紙463号に掲載)
「日本生薬学会第56回年会 京都2009」のシンポジウムでは漢方薬学教育に関する講演が行われた。 近畿大学の松田秀秋氏は、「漢方医療薬学は、中国伝統医薬学をもとに、日本において幾多の変遷を経て今日まで独自の発展を遂げてきた日本固有の伝統医学」、また「薬剤師がこの分野で指導的役割を果たすことが求められており、知識や経験の重要性はこれまで以上に増大するものと思われる」として、これに対応する教育目標や手段、方策について自校の取り組みを紹介した。 漢方の臨床医の立場から講演した富山大学の柴原直利氏は、「たとえば加味逍遥散について、単に『更年期障害の処方』とのみ説明するとなると非常に限定的な方剤と勘違いされて、用い方や処方の仕方を狭めて考えるようになる。処方箋を持ってきた患者さんの齢が若かったり男性だったりすると、薬効とかけ離れていると感じることになってしまう」として、保険適用の効能効果と実際に投薬したい病症との間には乖離があることを述べ、漢方薬というものの性格を踏まえて現場に出る必要があることを語った。 横浜薬科大学の金成俊氏は、「医学部の教育目標『医学教育モデル・コアカリキュラム』は、全体の項目数から見ると「和漢薬を概説できる」の一項目が0.09%と非常に割合が低いにも関わらず、すべての医学部医科大学において漢方の講義が行われるようになった。それに比して、薬学部の「実務実習モデル・コアカリキュラム」の漢方関連到達目標は、合計125項目の到達目標中0.8%と医学部よりずっと高いのに、漢方の講義が充実していない。臨床に結び付けることが適うような内容にも至っていない」と報告。 参加者から、「薬剤師が今後責任を持って漢方薬を扱えるようになるのか」と、現況を憂慮する声が上がったが、金氏は、「現在の製薬販売制度に則った方向性で教育していくべき」と、薬学部教育と制度とが相互にリンクした教育が行われることの重要性を述べた。 漢方朝日薬局の西依健氏は、「薬局で処方できるのは192処方だが、たとえば越脾加朮湯(えっぴかじゅつとう)などは薬局では処方できないという不自由さがある」といった現状の課題があることを訴え、また「来店客の男女比は3対7で女性の方が多い。疾患別では整形外科領域、消化器、不定愁訴の順に多い」と、痛みなどによりQOL(生活の質)を低下させている人々に対する役割を担っている薬局の意義を語った。 西氏はまた、東洋医学の「『望問聞切』の四診のうち、薬剤師は切診のみ行うことができないので、舌を診たり、また机上の学問に偏りがちな大学教育の中で、問診をいかに情報として診断の中に取り入れていくのか、その指導が課題」と、福岡大学薬学部の非常勤講師として教鞭をとる自身の経験を踏まえた意見を述べ、薬剤師にとってNBM(ナラティブベースドメディシン/対話と物語に基づく医療)が重要であることを説いた。 (詳細は本紙463号に掲載)
「日本生薬学会第56回年会 京都2009」のシンポジウムで「『望問聞切』の四診のうち、薬剤師は切診のみ行うことができない」との漢方朝日薬局・西依健氏の発表に対して、会場から質問に立った城西国際大学の奥山恵美氏は、「日本病院薬剤師会の学術集会に出席した際に、同じように切診ができない旨の発表があったが、それに対して日本病院薬剤師会から、『触れてはいけないということは、どこにも記載がない。そういう教育をしてもらっては困る』と抗議を訴えるコメントがあった」と述べ、「『漢方の先生方にそうした誤った認識を抱いている人が多い。ぜひ伝えてほしい』と言われた」と、使命感を持って意見を述べたことを伝えた。 薬剤師は切診(患者に触れる診断)ができないということは、周知の事実としてとらえている漢方医療の関係者は多いが、「関係法規を早急に確認したうえで、現場での施術の在り方について広くコンセンサスをとるべき」とする意見が聞かれた。(詳細は本紙463号に掲載)
「日本生薬学会第56回年会 京都2009」若手企画シンポジウムのテーマは、『これからの生薬——6年制教育のもたらす変革を意識して』。6年制教育においては、漢方医療薬学を担う役割が期待されている。しかし同時にカリキュラムをどうするのか、また臨床現場で働く薬剤師の現状と教育内容との乖離、さらにはまたこれまで修士・博士課程に進学した研究者の卵の数はどうなっていくのかなど、種の課題に対する問題意識を高く持っている関係者が多い。 この企画は、こうした状況において意見を出し合い、コンセンサスを得ながら進むべき方向性を見出そうとする試みで、それを若手研究者が仕切った。会場には、第一線を退いた名誉教授クラスの年長者から薬学部の学生まで、さまざまな年代の参加者があった。4人の若手シンポジストによる講演後の総合討論では、活発に意見が交わされた。 若手企画シンポジウムで発表した4人のシンポジストと演題は次の通り ●沖縄亜熱帯植物天然物化学の立場から(松浪勝義・広島大薬) ●姫路獨協大学薬学部——漢方・生薬学研究室の2年間(中村隆典・姫路獨協大薬) ●薬用植物資源の高度利用をめざして(河野徳昭・医薬基盤研究所) ●生薬学ならびに関連領域が,薬学部6年制教育で果たすべき役割と期待されるもの(鳥居塚和生・昭和大薬)(詳細は本紙463号に掲載)
今年度の和漢医薬学会賞は、富山大学和漢医薬学総合研究所の横澤隆子准教授が受賞した。横澤氏は尿毒症毒素の新しい産生経路を発見し、そこにフリーラジカルが関与していることをつきとめて、腎疾患治療を発展させる足がかりを作った。糖尿病性腎症など高血糖や高脂血症、高血圧などの生活習慣病と相俟って発症する腎疾患は、これまで以上に患者数の増加が見込まれている。横澤氏は多くの漢方方剤や生薬から、フリーラジカルの消去作用を見出し、さらに腎不全に対する治療効果が認められたとする実験結果を発表している。治療と予防の双方の観点から注目すべきテーマだ。 横澤氏は、腎機能低下で増えた血中老廃物がフリーラジカルの酸化反応で毒素になることを初めて発見した。クレアチニンという筋肉エネルギー代謝産物が尿毒素に変化する経路を明らかにし、腎機能が低下してクレアチニンが尿中に排出されにくくなると酸化して、クレアトールという物質に変化し、最終的に毒性の強いメチルグアニジンに変化して尿毒症が発症するとしている。また、慢性腎不全モデルラットの作成に成功し、大黄、丹参、薬用人参、温脾湯が腎不全改善作用を持つことを見出している。(詳細は本紙462号に掲載)
第26回和漢医薬学会学術大会は、参加者が700名に迫り、盛会のうちに閉幕した。約200名が出席した会期中の懇親会で大会長の平井氏は「今大会はテーマを『明日の和漢医薬学を創る』として出会いの場となることを目指したが、今大会の1割に相当する参加者が大学院生や大学の学部生だった」と挨拶の中で報告し、若い参加者たちを歓迎した。 また、日本東洋医学学会会長の寺澤捷年氏は、「いま和漢薬を取り巻く国際環境は正念場。5年後にはICD(国際疾病分類)が"ICD-10"から"11"に改訂されるが、現状の中国医学が世界の標準になる動きもある。日本東洋医学サミット会議で協力して、日本の声を反映させる方向に持っていきたい」と挨拶し乾杯の音頭をとった。 今大会では、ポスター発表の中から優秀者を選出して口演発表を行う「プレナリーセッション」が企画され、計12題の口演が行われた。また、35歳未満の若手研究者を対象に「ベストポスター賞」の選定が行われた。懇親会では、「プレナリーセッション」に選ばれた12名に平井会長から表彰状と記念品が手渡され、「ベストポスター賞」に選ばれた9名の若手研究者の名前が発表された。
(詳細は本紙462号に掲載)
日本生薬学会(海老塚豊会長)が主催する第56回年会は10月3日(土)、4日(日)の2日間、京都薬科大学愛学館(京都市山科区御陵中内町)において、実行委員長を吉川雅之・京都薬科大学教授がつとめ開催される。 今回のシンポジウムのテーマは、「生薬が取り組む漢方薬学教育」。座長を谿忠人(大阪大谷大・薬)、松田秀秋(近畿大・薬)両氏がつとめ、薬学部教育における漢方薬学教育を具体的にどのように推進していくのかが話し合われる。(詳細は本紙461号に掲載)
今回で3回目となる21世紀漢方フォーラムは、「漢方の国際医療情報を考える」をテーマに、慶応義塾大学医学部漢方医学センター、NPO健康医療開発機構、日中産官学交流機構、医療志民の会の4団体が共催。177名の参加者を集め、日本の漢方医学を含む東アジア伝統医学の国際動向と問題点について、情報交換と討論が行われた。 今回のテーマは、日本の漢方を含む伝統医学の国際標準化の議論が、近年急速に進展していることから採用された。病気治療の費用対効果の測定や国際比較を可能とする「国際疾病分類(ICD)」の抜本的な改訂作業をWHOが進める中で、漢方を含む伝統医学もここに盛り込んでいく基本方針が打ち出され、ICD上のコードと「証」コードとを組み合わせていくといった考えが具体化する方向にある。 こうした作業の一方で、自国産業にとって有利な標準化を推進すべく、モノの国際規格を策定するための組織「国際標準化機構(ISO)」を経由して、世界各国にコンセンサスを得ようとする動きがあることについても報告され、議論された。 (詳細は本紙461号に掲載) 第3回21世紀漢方フォーラムの内容および集計結果は、NPO健康医療開発機構のホームページで閲覧できますhttp://www.tr-networks.org/usr/NPO-usr-504-055.html
(独)医薬基盤研究所薬用植物資源開発センター(山西弘一理事長)が主催する薬用植物フォーラム2009が今年もつくば国際会議場で開催された。北海道・筑波・和歌山・種子島にそれぞれ研究部がある同研究センターは、薬用植物とそれに関する知識の積極的収集・保存・情報整備および行政的要請への正確な対応を行い、薬用植物等の保存、増殖、栽培、育種に必要な技術並びに化学的、生物学的評価に関する研究開発を行うことを目的としている機関。19回目を迎える今回のフォーラムでは、以下のように7人の演者の講演が行われた。 1. 伝統薬を取り巻く様々な問題(加藤浩・日本大学大学院法学研究科教授) 2. 薬用植物における農薬登録の現状(内藤久・(独)農林水産消費安全技術センター農薬検査部農薬残留検査課長) 3. 種子島・屋久島におけるガジュツ栽培について(名越哲朗・(株)老舗恵命堂屋久島製薬工場長) 4. 臨床で用いられる漢方・生薬について—漢方の臨床医の立場から(新井信・東海大学医学部東洋医学講座准教授) 5. 局方試験用生薬について(木内文之・慶応義塾大学薬学部天然医薬資源学講座教授) 6. 薬用成分の生合成研究(久城哲夫・東京大学大学院薬学系研究科助教) 7. ゲノム情報を利用した薬用植物種の識別(河野徳昭・薬用植物資源研究センター筑波研究部育種生理研究室研究員) (詳細は本紙461号に掲載)
7月19日(日)、20日(月)の2日間、日本漢方協会(飯島弘会長 )と東洋伝統医学天然資源研究会「順幸会」(世話人・加世田弘道氏)との共催、生薬原料問屋「高木商会」の岩間誠一氏と小太郎漢方製薬(株)、(株)栃本天海堂が協力して新潟県と長野県の県境にある黒姫高原において開催されたオウバク皮剥ぎ研修会は、約40名が参加した。 初日は黒姫山山麓の林間コースの植物を観察。2日目には黒姫山の山中のキハダの自生地に入り、樹木を伐採し、皮剥ぎを体験した。 今回栽培したキハダは、山中に自生しているもので、樹齢およそ60年。一般にオウバクの収穫は、樹齢15年から20年、直径30cmくらいに成長すれば収穫するというから、大きな木だ。「黄柏(オウバク)」は、樹皮から外側のコルク層を除いた柔らかく鮮やかな黄色の部分で、ベルベリンなどの薬用成分を含んでいる。これを乾燥したものが生薬となる。 研修会では、参加者の目の前で山林の間伐作業者の方がチェンソー(鎖鋸)を使ってキハダを伐採し、その後コルク層に切り込みを入れてそれぞれの手で剥ぎ取った。根に近い部分は外周が1m以上あり、厚みも1cm近くあった。参加者は、樹皮の苦味を確かめたりするなど、取りたてのオウバクを代わる代わる手にして観察した。 (詳細は本紙461号に掲載)
来る8月29日(土)、30日(日)の2日間、幕張メッセ・国際会議場(千葉市美浜区・JR海浜幕張駅5分)において第26回和漢医薬学会学術大会が開催される。テーマを「明日の和漢医薬学を創る(人材育成)」とした今大会について、平井愛山大 会長にお話をうかがった。 (以下、平井大会長インタビューの抜粋) 「今回は、本学会創設後四半世紀から、新しい一歩を踏み出す大会です。医療は、社会的システムを支えている基幹の分野であり、単に自分たちの学問的興味だけで研究を進めることはできません。次の25年を担うために何をしたらいいのか、さまざまな時間軸がある中で、今の医療において和漢医薬学会が果たすべき役割は何なのか。時代背景や状況などを総合して眺め、行動をとるべき時が来ています。」(詳細は本紙460号に掲載)
第105回漢方医学フォーラムは6月22日に日本記者クラブ(千代田区)で開催された。今回の講師は群馬大学医学部保健学科基礎理学療法法学講座教授の山口晴保氏。『認知症の包括的医療〜予防、治療、家族の対応——鍵を握る脳活性化リハビリテーション——』と題して、認知症の医療現場の状況が具体的に語られた。 認知症中核症状の治療について山口氏は、「アリセプトを処方して効きすぎると、暴言・暴行、常時徘徊などの症状がおきるが、その際に抑肝散を併用することでコントロールできる」と語った。「徘徊などには、これまで抗精神薬が投与されてきたが、投薬し続けると転倒や誤嚥などの弊害があることが問題になっていた。抑肝散は、こういった生活動作能力を低下させないで、認知症の周辺症状を緩和させることができる」と語った。 また山口氏は、「最近は脳の画像データーにより海馬の萎縮の程度を判定できるため、医師が安易にアリセプトを処方したりアルツハイマー病と診断を下したりするが、これには問題がある。個々の患者の症状をよく把握することが大事」と、研究現場と治療現場との間にギャップがあることにも言及した。(詳細は本紙460号に掲載)
ケンコーコム(株)(東京都港区)の後藤玄利社長に今回の裁判についてお話をうかがった。後藤氏は2000年ごろから健康分野のeコマース(電子商取引)に取り組んだ。品揃えのよさと商品数の多さに注力し、顧客に必要な情報を迅速かつ低コストで配信できるインターネットを通じて、顧客の健康づくりに貢献することを経営の理念としている。薬事法改正省令の問題点を検討する「検討会」の委員でもある後藤氏は、一般医薬品の郵送販売の継続を求めたが聞き入れられず、「通信販売への規制は違憲」として提訴に踏み切った。 (以下、インタビューの抜粋) 「今回、何を違憲として提訴したかというと、2つのことがあります。『事故が起こりそうだから、通販・ネット販売は規制しなければならない』というのは、営業の自由を侵害しています。そもそも安全面において本当に問題があったのでしょうか。郵便等による販売方法に起因し、業務を停止させるほどの危険性があることを検証したのでしょうか。もし通販・ネット販売を禁止するのであれば、最初から薬事法に盛り込むべきでした。薬事法に盛り込むためには、国会で審議しなければなりません。そうした手順を踏まずに業務停止にあたる内容の省令を公布したこと自体、越権行為です。」(詳細は本紙460号に掲載)
持ち前の企画力と行動力で日本漢方協会を牽引してきた加世田弘道専務理事(かせだ漢方薬局)が7月19日13時40分に逝去した。68歳だった。28日に府中の森市民聖苑(府中市)にて執り行われた告別式では、喪主の義之氏(長男)が、「3年前に大腸がんの緊急手術をしたが、日ごろからの漢方薬服用のおかげか経過は良好で、2年前には中国四川省に旅行し海抜4千mを体験するほど回復した。しかし昨年再発し、抗がん剤治療を開始、入退院を繰り返していた。その間も旅行、ゴルフなど病人とは思えないスケジュールの中、薬局と日本漢方協会の仕事を楽しみにしていた」と、会葬謝辞の中で語った。(加世田氏と生前関係の深かった3人の追悼文を本紙460号に掲載)