編集/発行・漢方医薬新聞社 

472号(10年3月1日発行)〜475号(10年4月15日発行)

                                   

第61回日本東洋医学会学術総会
21世紀における漢方医学・医療 〜基礎と臨床〜
鍼灸実技セミナーの参加申し込みは5月14日(金)まで

 来る6月4日(金)から6日(日)の3日間、名古屋国際会議場(名古屋市熱田区)で開催される第61回国際東洋医学会学術総会は、「21世紀における漢方医学・医療〜基礎と臨床〜」をテーマに、教育講演、特別講演などのほか、シンポジウムや一般演題発表が行われる。参加登録は、4月28日(水)(消印有効)。
 今回は参加者の要望を受け、『実技・経穴の取り方』と銘打った「鍼灸モーニングセミナー」が企画されている。講師は6月5日(土)を山岡傅一郎氏、6日(日)を赤尾清剛氏がそれぞれつとめる。申込期間は5月6日(木)〜5月14日(金)(必着)。大会ホームページ(http://ccs-net.co.jp/toyo61/regist/index.html)から申込用紙をダウンロードして運営委員会宛てにFAX送信する(FAX番号は申込用紙に記載あり)。先着順、定員次第締め切りとなるので、希望者は早めの申し込みが必要だ。
 弊紙では、今大会の会頭をつとめる佐藤祐造氏(愛知学院大学教授)に、今大会の見どころについてインタビューを行った。5月15日号(477号/大会特集号)にて詳報する。

『東静漢方研究室』150号記念会

 かつての国立東静病院(現・国立行政法人病院機構静岡医療センター)に勤務していた人々が母体となっていた東静漢方研究会が刊行する漢方研究雑誌『東静漢方研究室』の150号記念会が4月18日(日)、東京のアルカディア市ケ谷で聞かれた。国立東静病院には、昭和40年代半ばから約10数年間、内科全体が漢方診療に取り組んでいた時代があった。同誌はその当時から継続され、医師・薬剤師を中心に現在でも定期的に刊行されている。会場でメンバーが顔を合わせる中、これまでの会誌の合本が展示され、記念式典のムードは盛り上がりを見せていた。(詳細は本紙475号に掲載)

日中韓合同シンポジウムも併催
第111回日本医史学会総会・学術大会(水戸)

 漢字文化圏の伝統文化越境、飛翔をテーマに来る6月11日(金)から3日間、茨城大学水戸キャンパス(水戸市文京)において、第111回日本医史学会総会・学術大会が開かれる。会長は真柳誠氏、実行委員長は瀧澤利行氏(いずれも茨城大学教授)がつとめる。
 今回は初日に第2回日中韓医史学会合同シンポジウムが併催される。今年は李氏朝鮮時代の医書『東医宝鑑』完成400年(刊行は3年後)にあたるほか、茨城空港が開港して水戸への交通の便がよくなったこともあり、活気ある会になりそうだ。
 日中韓3学会の合同シンポジウムのテーマは、「越境する伝統、飛翔する文化ーー漢字文化圏の医史」。"Mojibake"(文字化け)という単語がコンピューター界の通用語となるなど、ラテンアルファベットを使用する文化圏とは趣を異にする漢字文化圏だが、そこには共通項があるのと同時に、異なった認識の仕方や各国独自の個別的な概念も存在するという面白さがある。漢字文化圏における医学の伝播と発達の歴史や、流派の形成の仕方には、各々の文化を映し出す事象がさまざまに見られるだろう。 (詳細は本紙475号に掲載)

ただいま演題登録期間中
第27回和漢医薬学会学術大会 今年は京都で
高度な科学的内容と臨床応用の格調高い発表を企画

 第27回和漢医薬学会学術大会が8月28日(土)と29日(日)の2日間、京都薬科大学キャンパス(京都市山科区御陵中内町5)にて開催される。現在演題登録期間中。締め切りは5月11日(火)正午となっている。
 「和漢薬と生活習慣を科学する」をテーマに、特別講演3題、シンポジウム4題、ランチョンセミナーと一般講演(ポスター)を企画した今回の大会長をつとめる吉川雅之氏(京都薬科大学)は、「和漢生薬や漢方薬を含む天然医薬品領域の高度な科学的内容と臨床応用を含む格調高い発表を企画した。この分野の発展に大きく寄与できるものと期待している」とコメント。シンポジウムでは、メタボリックシンドロームなど生活習慣病に対する生薬や漢方薬の役割を基礎と臨床の両面から検討するほか、生薬資源の確保をエコロジーの視点から討議するという新企画もある。薬学教育6年制下での漢方医薬学の教育の課題も昨年に引き続き取り上げられた。
 今回は、会員以外でも参加できる「病院・開局薬剤師のための漢方講座」を併催するほか、和漢薬や漢方薬の研究者のみならず、民間薬、サプリメントの研究開発に携わる人々も参加可能な企画が盛り込まれるなど、参加者動員のための趣向を凝らし、1千人の参加を目指す。市民講座は、高齢社会を踏まえたアンチエイジングがテーマとなっている。
(詳細は本紙475号に掲載)

「伝統薬物ベースド創薬」の醍醐味
神経回路再構築の新規分野で
和漢薬のシンポジウム満場ーー第83回日本薬理学会年会

 3月16日(火)から3日間、大阪国際会議場で行われた第83回日本薬理学会年会の2日目に、和漢薬に関する2つのシンポジウムが開かれ、立ち見が出る盛会となった。座長は、薬効解析のエビデンスをテーマに佐藤広康(奈良医大)、高橋京子(大阪大学)両氏、漢方薬による中枢神経神経疾患の分子病態解明と治療をテーマに小泉修一(山梨大院)、東田千尋(富山大)両氏がそれぞれつとめた。病態解明につながる新規分子成分の探索や、臨床に則した解析の意義が提唱され、活発な質疑応答がなされた。
 座長もつとめた東田千尋氏は、伝統薬物からの創薬をテーマに講演し、「伝統薬物ベースド創薬」を提唱。伝統薬物はすでに薬効を見出しているので、病態に関与する分子を発見して、生命科学全体に貢献する可能性が大きく、創薬までの時間を短縮できる可能性もあると語った。(詳細は本紙474号に掲載)

「生薬・若手シンポジウム」も活発
ーー日本薬学会第130年会

 3月28日(日)から3日間、岡山コンベンションセンターなど複数の会場で開催された日本薬学会第130年会の最終日、「若手シンポジウム・生薬学の伝統と革新ー教育・研究・臨床の立場からー」は満場で、日本薬理学会年会の和漢薬のセッション同様、こちらも立ち見が出る盛況となった。
 「生薬学の今後の方向性」と定義した講演後の質疑応答では、現状を取り巻く課題が噴出。薬用植物園の財政難や研究費削減などの状況に対応するための危機管理や大学間・研究者同志のネットワークづくりが呼びかけられた。
 3月30日(火)には「生薬学の伝統と革新ーー教育・研究・臨床の立場から」と題した4人の講演会が行われた。「臨床生薬学」「薬用植物における国際調和」「薬用植物園の取り組み」「薬剤師と生薬」など、4者4様の多角的なテーマで語られた講演を多数の参集者が熱心に聞き入った。 (詳細は本紙474号に掲載)

「課題を自分で出せたら面白い」
日本薬学会第130年会 高校生シンポジウム

 特別企画として今回が初めての試みとなった高校生シンポジウム。より多くの若い世代の人たちが薬学への道に一歩踏み出すことに期待を込めて開催した今回は、早津彦哉氏(岡山大院医歯薬)が講演するランチョンセミナーや、高等学校14校による薬関係・無機化学・物理化学・動物学・環境学・天然物関係など薬学分野に関連する14演題の研究が発表された。
 ランチョンセミナー『「研究」は本当に面白いのか?自分の生きる道を考えよう』で早津氏は、「疑問を抱くことが重要。自分で課題を考え出せたら研究は面白い。まずは知識を蓄えることから」と説いた。講演中は高校生に質問をしたり実験を行いながら会場をまわり、高校生の関心を引き出していた。

どうする国産生薬
「栽培可能な生薬は自国で」
「無門塾」今年度最終講義

 さる3月14日(日)に開催された「無門塾」(田畑隆一郎主宰)の最終講義では、講師の蓮村幸兌氏が「漢方応用の実際」を、田畑氏が「『金匱要略』にまつわる二味の薬徴」などの講義を行ったほか、腎臓結石などの症例発表も行われ、熱心な参加者が聴講する中で今年度の講義を終了した。
 その最後の講義で国産生薬の課題と可能性について教示した栃本天海堂の姜東孝氏は、日本国内において栽培可能な生薬が何種もあることを示し、品質の良い生薬の見分け方や加工の仕方、狭い日本において効率よく生薬を栽培し得る可能性を講義した。
(詳細は本紙473号に掲載)

細野、坂口両氏の今日的意義を講演
第15回国際東洋医学会学術大会 会頭講演 中田敬吾氏(聖光園細野診療所)

 2月26日から3日間、幕張メッセで開催された第15回国際東洋医学会学術大会の会頭をつとめた聖光園細野診療所の中田敬吾氏は、「聖光園における漢方エキス製剤の開発と漢方の近代化への歩み」と題して講演。漢方エキス製剤の開発に日本で初めて着手して成功を収めた同診療所創設者の細野史郎氏の業績を紹介した。その製法は今日も同診療所に受け継がれ、自主製造が行われている。同時に薬効解析や臨床研究を積極的に行った細野氏は、国際交流のために弟子の坂口弘氏を海外に派遣。坂口氏は国際東洋医学会の理事をつとめ、日本初開催の立役者となった。中田氏は、気概あふれる精神で道を切り開いた細野・坂口両氏の今日的意義を語り、その活動を紹介した。(詳細は本紙473号に掲載)

身体より心に重点ーー大統領の韓方
第15回国際東洋医学会学術大会 招待講演韓国

 2月26日面から3日間、幕張メッセ国際会議場において開催された第15回国際東洋医学会学術大会の招待講演3題のうち、韓国で盧泰愚元大統領の侍医をつとめたHyun Dae Shin氏は、体質を太陽・少陽・太陰・少陰の4つに分ける韓方の診断法を紹介した。
 4つの体質の特徴は、1. 太陽は肺が強く、肝が弱い、2. 少陽は肺が強く、胃が弱い、3. 太陰は肝が強く、肺が弱い、4. 少陰は腎が強く、肺が弱い、というもの。
 長寿の条件としては、1. 標準体重を維持する(標準体重のプラス・マイナス5%)、2. バイオリズムに適合した毎日の良好な習慣を維持する(陰陽の調和、自律神経系の調整)、3. 旬の食材を食べる(食材本来の味、色、香り、形を保つよう調理する)、4. 自然のもとで暮らす(環境に優しいエコ)、5. 自分を幸せにする(勉強、ボランティア活動など将来へ投資する。金銭的な関心よりも文化価値を重視する。多いより少ない方が良い)などを挙げた。 (詳細は本紙473号に掲載)

第15回国際東洋医学会学術大会
若い参加者、熱気ある大会に
『伝統医学と現代医学との調和』テーマに3日間

 2月26日(金)から3日間、幕張メッセ国際会議場において開催された第15回国際東洋医学会学術大会は、約700人が参集し盛会に終わった。会頭講演、招待講演、シンポジウムほかサテライトセッション、ポスターセッションを含め全32セッション、290演題の発表が行われた。
 今大会は、日本、韓国、台湾、中国、香港、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、スペインなどから参加者が集まり、にぎわいを見せた。開会式には、今大会を後援したWHOのベックダン氏も駆けつけ開催を祝した。
 各会場では、生薬製剤の湯液治療と鍼灸のセッションほか基礎研究などさまざまな発表が行われたが、鍼灸のセッションでは、施療の実際を公開し、テレビカメラでスクリーンに映し出すなど、それぞれに日常診療に直接結び付く内容のセッションが目立った。
 ポスターセッションは鍼灸、漢方の臨床および基礎研究など合わせて227演題の発表が行われ、閉会セレモニーにおいて優秀発表10題が主催者から表彰された。
 出展ブースにはアメリカ、韓国、日本の特別コーナーが設置され、積極的に交流する姿が見られた。韓国のコーナーでは 『東医宝鑑』刊行400年を記念し、同書のミニチュアがついたストラップや、経絡の解説が記され経穴を押すことのできる機能が付いたペンが配られるなど、楽しい催しも行われた。

第15回国際東洋医学会学術大会
麻黄の研究を講演
招待講演 金沢大学・御影雅幸教授

「生薬学の過去、現在、未来」と題して麻黄を中心に講演した金沢大学の御影雅幸教授は、今日までにさまざまな薬用植物から薬効のある活性成分が単離されてきた歴史を紹介した。
 麻黄は、現在中国政府がそのままの形状で輸出することを禁じており、栽培化が早期に望まれる植物のひとつになっている。
 「日本薬局方」に収載される麻黄3種のうち E.equisetinaはアルカロイドは豊富だが岩の上にしか生えず、E.intermediaはE.sinicaよりエフェドリン含有が多いが、最も栽培に適しているのはE.sinicaだという。
 栽培については、柴胡(甘粛省)や当帰(青森県)、附子(四川省)の栽培地の様子を紹介し、「高品種の栽培には、野生に近い育て方を目指すべき」との考えを述べた。
 そして「同じE.sinicaでも、薬効成分の多い株が存在する。品種のクローン株を作成することで品質の安定栽培が可能になる」また「降雨量との関係を調査している」など、麻黄の栽培を本格化するための研究成果や手法を紹介した。
 麻黄の資源減少の問題について御影氏は「乱獲が一因となっているのは周知の通りだが、人口増加傾向にある中国では、麻黄の群生地で農地開墾が行われている。これが乱獲以上に大きな要因になっている」と報告。かつての群生地が田畑に変わり、畦道にかろうじて自生している麻黄など現況が写真で紹介された。
 また御影氏は、絶滅危惧種に由来する生薬への対応策として「方剤の構成生薬に代替品を使用することも、臨床家の協力を得ながら検討を進めるべき」との考えを示した。エフェドリンを含まないE.przewalskiiは、ウイグル薬物や、アーユルヴェーダの影響を受けるモンゴル医学では実際に利用されているという。
 清代『植物名実図考』の麻黄の図は、実は木賊(トクサ)が描かれているそうだ。御影氏は「李時珍は『本草綱目』の中でメ麻黄と木賊は形態も薬効も同じモと記している。日本でもかつて島津藩が木賊(トクサ)の類を麻黄の代わりに使用していた」と述べ、利用する側にも環境変化に柔軟に対応できる策があることを示した。
(詳細は本紙472号に掲載)

第15回国際東洋医学会学術大会
台湾の鍼麻酔研究を紹介
術後の痛みを軽減する鍼療術の根拠を実証
招待講演 林昭庚氏

 「台湾における鍼麻酔研究」と題して講演した林昭庚氏(台中/中国医薬大学教授、台湾大学、陽明大学兼任教授)は、「鍼療法は中国で何千年間も用いられており、隣国によって広く受け入れられた。鍼療法は色々な病気に利用される」という。今回はその中でも「世界中で最も注目されている」とする鎮痛作用について紹介した。
 過去数十年間において、鍼麻酔のメカニズムは鍼療法における研究の主要なテーマであり、鍼療法が痛みを軽減させる内因性オピオイドを誘発するさまざまなエビデンスが示されており、鍼療法がホルモンや神経を含むいくつかの経路を通って炎症状態を軽減することも明らかにされてきた。たとえば、鍼療法がセロトニン経路を通って実験的な痛みを無効にできることが明らかになっている。
 これまでの研究について林氏は「こうした基礎研究以外に、多くの研究者は臨床実験に焦点を置いてきたが、当初の研究では、鍼療法が痛みを和らげることが分かったとはいえ、研究デザインは多くの重大な欠点を含んでいる」と指摘。最近では、方法論の進化により研究が信頼性のあるものとなり、中でも、腰痛・慢性頭痛・術後疼痛は最も人気のあるテーマだという。
 林氏の研究グループは鍼療法が術後の痛みを軽減できることを実証することに成功。「過去の10年間で最も優れた研究のひとつとして、鍼治療の力を高めた」として発表した。「医学の基礎からエビデンスに基づいた医療まで、私たちは国際的な鍼療法の研究の先頭を目指す」と今後の抱負も語られた。(472号に掲載)

5つの提言提出
平成21年度厚生労働科学特別研究事業
漢方・鍼灸を活用した日本型医療の創生のための調査研究

 昨年、行政刷新会議による事業仕訳けにおいて医療用漢方製剤が健康保険適用から外れる騒動が巻き起こった最中の12月3日、「漢方・鍼灸を活用した日本型医療の創生のための調査研究」が平成21年度厚生労働科学特別研究事業として認定された。
 同月23日(水)に行われた第1回会合のテーマは『人材面からみた現状と課題』。漢方医学について三潴(みしま)忠道氏(麻生飯塚病院)が「医師国家試験に漢方を採り入れる」「研修拠点病院の充実、研修支援体制の確立」「価格が安定せず品質確保にコストのかかる生薬原料に対し医療経済の適切な手立てを講じる」などの必要性を、鍼灸について後藤修司氏(後藤学園)が「卒後2年の研修制度の義務化」「現代医療との併療を認める」「医療先行原則の廃止」「鍼灸研修センターの設置」を、薬剤師教育について富山大学の佐竹元吉氏が「漢方薬・生薬認定薬剤師制度」により専門性引き上げが進展している現況を、天野暁氏(東大・食の安全研究センター)が漢方医学による食育とそのための人材育成が必要なことをそれぞれ論じた。会合はこれまで5回行われ、先月25日、長妻昭厚生労働大臣宛てに提言を提出。同日同省内において記者会見を行い、提出した提言5項目(1.体質にあった「オーダーメイド医療」実現のための基盤整備 2.生薬資源の安定確保 3.国際ルール作りへの迅速・積極的な対応 4.国民への知識普及 5. 施策推進のための組織的整備)を発表した。
(会議内容詳細は本紙472号に掲載)


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