【マスコミ報道】
佐賀純一氏がダブル出版
古事記を題材に『蛭子』『変容する神々』
【常陽新聞 2005年4月25日掲載】
土浦市の医師で作家の佐賀純一氏はこのほど、古事記を題材にした小説『蛭子』(ひるこ)と、古事記の思想の解明を試みた『変容する神々』をダブル出版した。佐賀氏の著作では『土浦の里』『霞ケ浦風土記』『浅草博徒一代』などが英訳され、『浅草博徒一代』の一部が米国の著名なフォーク・ロック歌手のボブ・ディランの作品に引用されたとして、海外からも大きな話題を集め、『ニューズウイーク日本版』の「世界が尊敬する日本人100人」にも選ばれただけに、『蛭子』は英訳の機会があれば、海外にも紹介したいと念願している。
佐賀氏は郷土をテーマにした『土浦の里』『霞ケ浦風土記』、聞き書きの『戦下の記憶』『浅草博徒一代』などで知られるが、『歓喜天の謎』のように、密教文化を丹念に掘り起こすなど、古典研究にも造詣が深い。本紙に連載中の『筑波山麓・愛ものがたり』は『歓喜天の謎』で着目した真壁町の八柱神社の壁面彫刻をテーマに創作したものだ。
『蛭子』は古事記の冒頭部に、イザナキとイザナミが結婚して、最初の子・蛭子を生んだが、障害児だったので、アシ舟に入れて流してしまったという短い記述があるだけ。
佐賀氏はそこから着想を得て、生きていた蛭子が美しくて豊かな国を作り上げるという波乱に満ちた物語を創造する。しかし、最後には戦いを放棄するなど、佐賀氏の「古事記は平和の思想の書」でもあるという考えが小説世界で見事に描かれている。
古事記は、イザナミは火の神に焼かれて死に、黄泉(よみ)の国の鬼となり、死神となる、イザナキは男神だったが、黄泉の国から生還した途端、さまざまな神を生み、最後にアマテラス・スサノオ・月読命(つきよみのみこと)を生む−−など、同一の神かと疑うほど変容するという。なぜ変容するのかについて読み解いたのが、もう一冊の「変容する神々」。
佐賀氏は「古事記の中巻と下巻は内乱や陰謀が描かれている。上巻は神話で最終的には大団円。独裁と戦争を免れるにはどうすればいいかということが書かれている。これは日本独特の思想で、大きな特徴」などと語った。
『蛭子』は1260円、『変容する神々』は1680円。出版は東洋医学舎。問い合わせは、同社(〒135-0047 東京都江東区富岡1-11-5-203、電話03・3630・6151、ファクス03・3643・3431)まで。
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